By / 20th 6月, 2012 / ワインの知識 / 1 Comment

ここで第一話の良人君が登場します。良い具合に暖まったピンク色の甘いお風呂に誘われ、長湯すること1〜2週間。その間じっくりと果汁の甘い汁を吸い、アルコールと二酸化炭素の息を吐き続けます。お陰で、風呂場の空気はどんどん悪くなるばかりだし〜。

 これを訳すと、色がついたブドウジュース(マスト)にイースト菌を投入し、温度を25度から30度位に暖め、発酵を促します。これで、果汁に含まれる糖分が、アルコールと炭酸ガスに分解され、時間をかけてワインへと変身していきます。その際、空気中に二酸化炭素が充満し始めるので、ワイナリーではこの時期に事故が起こり易いのです。何故って?二酸化炭素は無色無臭なので、その辺りを知らずにうろつくと、意識を失い、死に至るという事故が、時々報告されるそうです。

 ちょっと、話が物騒になりましたが、この秋のブドウ醸造時期に、ワイナリーを訪れると、まず製造所の中には入れて貰え無いのは、こういう事情があったのですね。ガッテンして頂けましたか?

 ちなみに赤ワインには甘口のデザートワインから、かなり辛口のものまで、多々有りますが、基本的には、良人君のお風呂につかっている時間が関係して来ます。つまり超長湯をして、ブドウジュースの糖分をぜ〜んぶ飲んでしまったら辛口。からすの行水で、ちらっと糖分を飲んだだけなら、甘口。

 もっとも、本来レイジーな良人君は、本当は長湯が大好き!でも、「それ以上甘い汁を吸っちゃあ駄目!」という場合には、お風呂の温度を急に冷やすと、良人君は凍死しちゃうし、しかもだめ押しに毒(亜硫酸)を盛ったりします。でも、この毒は、良人君をショック死させるための、本当に微量なものなので、体の大きい人間 はへっちゃらだから、心配しないで。

 要は、果汁内の糖分を全てアルコール発酵させれば、残糖が無い分(つまり糖分が残らないから)辛口になります。逆に、デザートワインを作る場合には、早いうちにイースト菌の発酵を止め、残糖を高くして、甘口に仕立てます。

 ちなみに、良人君の長風呂には他に大切な効用があります。それは、ブドウの皮に凝縮されているうまみ成分や、長期熟成に不可欠なタンニンが、ワインに溶け出して行くのですね。でも気をつけなくては行けないのは、ブドウの種に含まれる苦みや渋みを引き出さない事。それには、圧搾の際に潰しすぎないという気配りが必要です。

 さてさて、無事アルコール飲料となった赤ワインは、これから樽に詰められて、いよいよ美容のための、眠りにつきます。

Yuki Saito

斉藤ゆき

Diploma WSET, Certified Sommelier, Master of Wine Program
ワイン・コンサルタント 品評会審査員 ワイン・ライター

ニューヨークで金融キャリアを構築後、 生涯のパッションであるワインを、欧米のトップスクールで学び、日本人として希有な資格を数多く有するトッププロ。

ワイン教育の最高学府、Wine and Spirits Education Trust (WSET)の学位(レベル4最上位)をカリフォルニアで、上級資格(レベル3)をトップで本校(ロンドン)にて取得。更に、ソムリエ機関の世界的権威であるCourt of Master Sommeliers(ロンドン)の認定ソムリエ資格も有する。フランス留学は頻繁で、ボルドー、ブルゴーニュを始め、各地のワインスクールでフランス人と共に学ぶ。

現在は、サンフランシスコをベースに、ワインの顧問業務(日米)、連載記事の執筆と講演(日米)、品評会審査と視察(日欧米)を3本柱に活躍する傍ら、ワイン業界最高峰といわれるマスター・オブ・ワインのプログラムに所属し、MWを目指して切磋琢磨中。

1 Comment

  • Samurai 6月 20, 2012 at 1:42 pm

    ガッテン、ガッテン!ゆきさんの説明は良く分かるからためになります。甘口や辛口で期間が違うとのことですが、だいたい何日ぐらいの長風呂ですか?白ワインと赤ワインではこの期間が違うのでしょうか?楽しいワイン口座ありがとうございます。

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