シャトー  コス デストウネル(Chateau Cos d’Estournel) のワインに、余り馴染みの無い方のために、ざっとおさらいしましょう。このシャトーがあるサン テステフ (St-Estephe)という村は、ボルドーを代表する第一級シャトー、第二級シャトーが林立するポイヤックのすぐ北境にあり、シャトー  コスのまどなりは、ラフィットといえば、どれだけ素晴らしい地味、テロワールに恵まれているか、ご想像がつくと思います。

とはいえ、重厚で肉厚のカベルネ主体のポイヤックの赤ワインに比べ、コスはメルローのブレンド比率が高く(ヴィンテージに依りますが、40%前後)、それ故オーメドックのワインとしては、柔らかさとまろやかさを感じさせます。

さて、今回試飲したのは、1981, 1982, 1983, 1985, 1986, 1988, 1989, 1990, 1995, 1996, 2002, 2003, 2004, 2005, 2008という27年に渡る、15種類のヴィンテージ。

これを、出席者各自がブラインドで採点し、発表します。オーナーのプラット氏が持参して下さったこれらのワインは、通の方ならお気づきでしょうが、悪いヴィンテージが含まれていません。素晴らしい心配りです!

ちなみに、良く読者の方から「有名シャトーのワインは古ければ古いほど、美味しいのでしょうね!」と聞かれますが、そんなことは有りません。まず、長期熟成に適したヴィンテージ、及び飛び抜けた作り手という大前提がありますし、古酒独特の味わいがお好みでない方もいらっしゃいますから。

今回の試飲で 、私が最高得点を上げたのは、なんと一番最近のヴィンテージ、2008年のものであったこと、そして古酒の中で一番優良と感じたワインは1982年 でしたが、それ以外の80年物のヴィンテージには、あまり感動せず、高得点は1989年以降90年代に集中していたことでした。

82年のヴィンテージは、30年経った今でも、まだ果実の味わいが残り、十分な酸味もあることから、 まだ数年は向上する余地があるかもしれないとは思いましたが、今が飲み頃かな?とも感じました。

その他の80年代の出品されたワインは、フルーツやタニンが抜け落ちていて「既に老けてしまっている」という感想を持ちました。しかしながら89年以降のものは、しっかりとしたタニンとボヂィー、そして果実が生き生きとしていて、まだまだ良い年の取り方をするであろうと、期待できました。

採点を終え、出席者の前で、ブラッツ氏に向けて感想を述べた後、「何故、2008年のヴィンテージはこんなにも、過去のワインと味わいが違うのでしょう?まるで、違う作り手に依るワインの様です」と、質問をしたところ、同氏曰く。「実は、その年はメルローの収穫が思わしくなく、当シャトーとしては例外的に、カベルネ主体のワインとなったのです」との説明でした。

さて、最近この素敵なイヴェントのお礼状を、フランスに帰国されたブラッツ氏に送り、秋には又、フランスの収穫風景を取材に行きますと付け加えたところ、是非シャトーに足をお運び下さいという優しいお返事を頂きました。実現した際には、また続編をお届けできることでしょう。

Yuki Saito

斉藤ゆき

Diploma WSET, Certified Sommelier, Master of Wine Program
ワイン・コンサルタント 品評会審査員 ワイン・ライター

ニューヨークで金融キャリアを構築後、 生涯のパッションであるワインを、欧米のトップスクールで学び、日本人として希有な資格を数多く有するトッププロ。

ワイン教育の最高学府、Wine and Spirits Education Trust (WSET)の学位(レベル4最上位)をカリフォルニアで、上級資格(レベル3)をトップで本校(ロンドン)にて取得。更に、ソムリエ機関の世界的権威であるCourt of Master Sommeliers(ロンドン)の認定ソムリエ資格も有する。フランス留学は頻繁で、ボルドー、ブルゴーニュを始め、各地のワインスクールでフランス人と共に学ぶ。

現在は、サンフランシスコをベースに、ワインの顧問業務(日米)、連載記事の執筆と講演(日米)、品評会審査と視察(日欧米)を3本柱に活躍する傍ら、ワイン業界最高峰といわれるマスター・オブ・ワインのプログラムに所属し、MWを目指して切磋琢磨中。

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