アメリカのワイン、その中でも特に秀逸な土壌と天候に恵まれた西海岸(カリフォルニア、オレゴン、ワシントン州に集約)で作られるワインが、世界のワイン業界の注目を集めています。

 カリフォルニアのナパバレーは、今では伝説となった70年代のパリのワイン品評会で、フランスを代表するシャトーを凌駕し、華々しく世界の舞台にデビューして以来、世界的な名声が確立されました。その他にも、ソノマ バレー、モンテレー、サンタ バーバラ近郊のAVA(アメリカ政府認定済みのワイン生産地域)など、カリフォルニアには世界のワイン地図に表記されている地域が目白押しです。

 カリフォルニアワインの魅力は、何と言っても誰にでも分かる「美味しさ」にあります。今回は、ワイン通やコレクターがこぞって買い求める高級ワインではなく、誰でも普通のお店で買える手頃なお値段のワインのお話をしましょう。

 例えば日本で歴史的にも人気のあるフランスワインと、比べてみます。とりあえず1,500 円から 3,000円台のワインを想定しましょう。

 典型的なフランスワインであれば、このお値段の味はフランスワインを飲みなれていない方には「渋い、酸っぱい、固い」という印象を残すようです。勿論良い作り手のものは、このお値段でも、中期の熟成が期待され、何年か自宅で寝かしておくと、飲み頃を迎える物もあります。しかしながら、ワイン通でない限り、作り手及び製造年度をリサーチ、理解して、こういったワインを買い求めるという習慣は、あまりありませんよね。

こういう「典型的な」フランスワインの他に、最近フランスなどから「アメリカ ワインっぽい」ワインが、輸出されています。これは、フランスや、ヨーロッパのワイン製造者が、アメリカやオーストラリアの世界的な人気にあやかろうと、意識して「新世界のワインのような」ワインを輸出用に作っているからです。が、残念な事に、ヨーロッパ通に取っては、こういうワインは邪道でしょうし、新世界のワイン通にとっては、味も少し中途半端かもしれません。

 翻って、アメリカのワインであればこのお値段で、とても美味しいワインが、よりどりみどりとなります。それはアメリカの文化、或はアメリカ人の商品に対する考え方の反映といえるでしょう。

アメリカ人は、購入したい物が「簡単に」手に入り、そして品質が「均一」、つまり当たり外れがないことを要求します。マクドナルトやコカコーラなどが良い例でしょう。 故にアメリカ人は、どんな世界の果てにいても、安心してマクドナルドのハンバーガーを頬張り、コカコーラを飲む事が出来ます。

ワインも「小難しい理屈」を知るより、要は「いつもおいしいか?」このラベルのワインならこういう味という、飲む手の期待が、実現出来るかということです。

ですから、長期醸造用の高価なワインも並外れて素晴らしいアメリカですが、毎日飲むワインは、とてもジューシーで、デキャンタなどの手間をかけずに、おいしく飲める!という訳です。

まずお試し頂きたいのは、白であればシャルドネ、赤であればカベルネ ソーヴィニョンや ジンファンデルでしょう。シャルドネは、お日様を十分浴びた柑橘類やエキゾチックで完熟したフルーツの味わい、更にはバニラの香りが混ざってとてもジューシーです。カベルネやジンファンデルであれば、口当たりが良く、ブラックベリーやラズベリーなど黒や赤のドライフルーツのまったりさと、ココアやコーヒーの風味に混ざって、ほんのりと甘みさえ感じる仕上がりになっているはずです。

 試しに、同じお値段のフランスワインと一緒に飲み比べると、その違いがよく分かるはずです。ご感想をお待ちしております。

Yuki Saito

斉藤ゆき

Diploma WSET, Certified Sommelier, Master of Wine Program
ワイン・コンサルタント 品評会審査員 ワイン・ライター

ニューヨークで金融キャリアを構築後、 生涯のパッションであるワインを、欧米のトップスクールで学び、日本人として希有な資格を数多く有するトッププロ。

ワイン教育の最高学府、Wine and Spirits Education Trust (WSET)の学位(レベル4最上位)をカリフォルニアで、上級資格(レベル3)をトップで本校(ロンドン)にて取得。更に、ソムリエ機関の世界的権威であるCourt of Master Sommeliers(ロンドン)の認定ソムリエ資格も有する。フランス留学は頻繁で、ボルドー、ブルゴーニュを始め、各地のワインスクールでフランス人と共に学ぶ。

現在は、サンフランシスコをベースに、ワインの顧問業務(日米)、連載記事の執筆と講演(日米)、品評会審査と視察(日欧米)を3本柱に活躍する傍ら、ワイン業界最高峰といわれるマスター・オブ・ワインのプログラムに所属し、MWを目指して切磋琢磨中。

Leave a Comment