9月の第一週は、ロンドン近郊で毎年3月から9月にかけて開催される「国際ワイン品評会」(International Wine and Spirits Competition = IWSC) に審査員として出席しました。3月にフランス ワインの審査が始まり、9月のオーストラリア、ニュージーランドまで、毎年7ヶ月かけて金賞、銀賞、銅賞などの業界の栄誉を決定しています。

私の今年の担当は「オーストラリア」。南半球のワインの締めくくりです。IWSCの審査会場は、いくつかの「審査室」に分かれており、一部屋に5人の審査員が詰めます。審査委員長は通常マスター オヴ ワイン(MW)が務め、審査員は業界の様々な分野から選ばれます。また、このグループは毎日入れ替わります。

私の組の審査員は、連日南半球ワイン専門のジャーナリストや、ワインコンサルタントが主でした。そして女性の比率が男性に比べて、高かった事が印象的でした。男性主導であったアルコール飲料業界も、女性の進出が目覚ましいようです。

試飲(審査)をするワインの数は、日に依りますがざっと70〜80種類。朝の10時過ぎから始まり、午後の1時半過ぎまでびっしり3時間、休み無しで、そしてかなりの速度で進みます。

審査は各自の持ち点が100点。色合い(目)、アロマ(鼻)そして 味わい(舌)の3つの要素を分析し、各フライト(並べられるワインの数 =これは地域、ブドウの種類、或は年度などによって分けられ、数も一度に3種類から20種類と様々です)毎に、審査員全員の点数を加算して決めます。同じワインを審査している審査員がかけ離れた点数を付ける事は稀ですが、時々おこります。面白いのは、以前に別に記事に書いた様に、その原因が「グラス」に有ることが殆どです。

例えば、全ての審査員が80〜84点と発表し、一人だけ65点と審査した場合には、まず最初に何らかのグラスの不具合を疑います。審査会場には何千という完璧に洗浄されたグラスが用意されていますが、一見完璧に見えるグラスも、この場合は疑われます。

そして95%位の確立で、グラスを換えて試飲した場合、点数が平均値と近くなります。グラスがどれだけ大切かという良い例です。

それでも、審査員の意見が分かれた場合は、再度同じワインの違うボトルを開けてもらい、新しいグラスで試飲をし直し、再評価し、お互いの分析を検討する場がもたれます。又、限りなく銀に近い金賞、或は特別栄誉に0.1点で上がったり下がったりする微妙な集計点が出た場合も、改めて討論の場が持たれます。こうして公正に評価されたワインの集計点がコンピューターにインプットされ、賞を勝ち取ったワインには審査員の評価(メモ)を基にしたコメントが付与されます。

こうしてワインのレベルに「XXX会で金賞を受賞」というレッテルが貼られ、そのワインには付加価値が付きます。もっとも近所のワインクラブや、地元振興に為のお祭りでも、こうした「賞」は出していますから、よ〜くレッテルを見て、権威のある協会に依る賞であるかをチェックする事をお忘れなく

Yuki Saito

斉藤ゆき

Diploma WSET, Certified Sommelier, Master of Wine Program
ワイン・コンサルタント 品評会審査員 ワイン・ライター

ニューヨークで金融キャリアを構築後、 生涯のパッションであるワインを、欧米のトップスクールで学び、日本人として希有な資格を数多く有するトッププロ。

ワイン教育の最高学府、Wine and Spirits Education Trust (WSET)の学位(レベル4最上位)をカリフォルニアで、上級資格(レベル3)をトップで本校(ロンドン)にて取得。更に、ソムリエ機関の世界的権威であるCourt of Master Sommeliers(ロンドン)の認定ソムリエ資格も有する。フランス留学は頻繁で、ボルドー、ブルゴーニュを始め、各地のワインスクールでフランス人と共に学ぶ。

現在は、サンフランシスコをベースに、ワインの顧問業務(日米)、連載記事の執筆と講演(日米)、品評会審査と視察(日欧米)を3本柱に活躍する傍ら、ワイン業界最高峰といわれるマスター・オブ・ワインのプログラムに所属し、MWを目指して切磋琢磨中。

1 Comment

  • Samurai 9月 15, 2012 at 2:24 pm

    ワインの品評会がかなり真剣なものだということが分かりました。品評ということを通じ、作り手は商業的な目的からも一生懸命品質を向上させようとするし、飲み手は良いワインを簡単に選んで楽しむことができるわけですね。それにしても3時間半で70-80種のワインを試飲するなんて大変ですね。あまり沢山あって、”目が回る”というより”舌が回る”、”鼻が回る”感じですか?

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