By / 10th 11月, 2012 / ワインの知識 / No Comments

今年もじきに、11月。一年が経つのは早いもの。尤も私のカレンダーはワインを軸に廻っています。ので、今月のトピックスは「ボージョレ ヌーヴォー」。

 

そう、毎年11月の第三木曜日にフランスから世界中に出荷されるワインの出来損ない、じゃなかった、あのフルーティーでアルコール度の低い飲み物です。

 

まずは、クイズから。あれは何のブドウを使っているかご存知ですか?

 

ヌーヴォーに使うブドウは、ガメイ(gamay) というブルゴーニュの南、ボージョレ地区で大量に生産されている品種です。基本的には軽口で、赤いベリー(ラズエリー、ストロベリー)の風味のワインが出来ますが、ヌーヴォーというジュースの様なワインだけではなく、本格的なボージョレ ヴィラージュというワインも醸造されています。(こちらは後ほどご紹介します)

 

では、ヌーヴォーは何故、『旬もの、新もの』のとして扱われているのでしょうか?

 

ヌーヴォー (新酒) が「旬もの」という特別なポジションを獲得した背景には、大変スマートなマーケッティングがあるのですね。

 

それは地元で大量生産されるガメイ品種を、超高速でワインに仕立て、すぐに売りさばいて現金に換える、という夢のようなシナリオを描いたプロジューサーがいたのですね。

 

そもそもワインという商品は、換金率が悪いのです。1年の長きに渡って天候と戦いながら、やっとこさ収穫出来たブドウをワインに仕立てても、 何ヶ月も何年もお蔵で寝かさなければならない。生産と収納には大変な元手がかかっているにも拘らず、ワインが売れるまでは、 現金収入が入ってこないという訳なのですね。

 

そこで、手間暇をかけずに、しかも大衆受けするワインを作り、しかも期間限定で売り出し、旬を狙うという、大変賢いスキームが生まれた訳です。

 

では、ヌーヴォーと通常のワインは、どう違うのでしょうか?

 

通常、ワインを作るにはブドウの房や葉を除去した後、 圧搾して果汁を絞り、そこに酵母菌をいれて発酵させます。しかもその後は何カ月も、何年もお倉で寝かして、成長を待ちます。正にじっと我慢の子です。その間は、作り手には一銭の収入も入ってきません。

 

ところが、ヌーヴォーの場合、ブドウは房のまま丸ごと大きなタンクにいれ、そこに二酸化炭素ガスをシュバーっと注入して、蓋をするだけ。そうすると、閉じ込められたガスの作用で、ブドウが皮ごとバンバンと爆発し、果汁が流れ出して、そのままタンク内で醗酵していき、ほんの数週間で若いワインが出来上がります。

 

こうして収穫からわずか2ヶ月後の11月の第3木曜日には、世界に向けて、一斉に出荷されます。正にキャッシュマシーンです。でも、速効で出来たワインですから、飲み頃にも旬があります。 

つまり、ボージョレ ヌーヴォーは、酵母菌に依る発酵も、樽醸造も経ず、短期間で仕上げた生酒。ですから、飲み頃はクリスマスまでだと思って下さい。

 知り合いに、<赤ワインは何でも長く持っていればおいしくなるっ!>とばかりに何年も保有していたツワモノがいましたが、ご愁傷様です。出来ればお正月まで持ち越すことは、しないで下さいね。尤も、きちんと保存しておせち料理と合わせて飲むという方もいらっしゃるかもしれませんね。

また、

フランスはボージョレ地区にて

ヌーヴォーは軽く冷やして飲むと、おいしく頂けます。ロゼやフルーティーな白ワインの感覚で楽しんで下さい。

 

ちなみに、こちら米国では、ヌーヴォーの入荷がちょうど感謝祭(11月第三木曜日)からクリスマスにかけての最大のホリデイ シーズンと重なる事もあって、七面鳥の晩餐とヌーヴォーのマリアージュは定番というご家庭も多いようです。

Yuki Saito

斉藤ゆき

Diploma WSET, Certified Sommelier, Master of Wine Program
ワイン・コンサルタント 品評会審査員 ワイン・ライター

ニューヨークで金融キャリアを構築後、 生涯のパッションであるワインを、欧米のトップスクールで学び、日本人として希有な資格を数多く有するトッププロ。

ワイン教育の最高学府、Wine and Spirits Education Trust (WSET)の学位(レベル4最上位)をカリフォルニアで、上級資格(レベル3)をトップで本校(ロンドン)にて取得。更に、ソムリエ機関の世界的権威であるCourt of Master Sommeliers(ロンドン)の認定ソムリエ資格も有する。フランス留学は頻繁で、ボルドー、ブルゴーニュを始め、各地のワインスクールでフランス人と共に学ぶ。

現在は、サンフランシスコをベースに、ワインの顧問業務(日米)、連載記事の執筆と講演(日米)、品評会審査と視察(日欧米)を3本柱に活躍する傍ら、ワイン業界最高峰といわれるマスター・オブ・ワインのプログラムに所属し、MWを目指して切磋琢磨中。

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