チリのワインといえば、美味しい割には安いというコストパフォーマンス(コスパ)ばかりが評判になっており、現在の実力が余り評価されていないのだと感じます。実際90年にピノシェ独裁政権が崩壊して以降、チリのワインの近代化は素晴らしい速度で進んでおり、その質の向上には目覚ましいのもがあります。

 

今回チリの多様なワイン地域とメーカーを訪れるに当たっては、かなりの期待を持って来たのですが、実際訪れてみると その質の高さと将来性に感動しています。これは、後述するアルゼンチンにも同じ感想を持つのですが。

 

チリという国は、すごく細長い国で、全土が海と山に挟まれ、地理的にも閉塞的で、貿易などでせっせと魚介、農作物を輸出して生計を立てている風情を見るにつれ、極東のある小さな島国を思い起こします。国民性もシャイでノーといえないお国柄が、更に類似性を感じさせます。

 

チリの人情に触れる機会は幾度となくあったのですが、例えば外国人でスペイン語を解さない私が道に迷って(これは良く有る話なのですが)ハイウェイの料金所で「XXに行きたいのだけれど…」と地図を見せると、スペイン語で「あなたは逆方向に走っているからUターンして下さい(この位のスペイン語は理解出来ます)」と言うやいなや、後続の車が何台あっても(実際すごい渋滞を起こしていても)料金所から出て来てくれ、私の後続の車一台一台にバックする様に話してくれ、実際そういう車も文句も言わずに、トロイ私の為に隙間を作ってくれて、有り難いことに料金を払わずに、ハイウェイでUターンをするという経験は何度となく有りました。アメリカであれば当然のことながら、料金を支払って先に進んでUターンが常識です。

 

チリは貿易を糧に生きている国なので、ワインも80〜90%が輸出に当てられます。実際チリで実感したのは、チリ人はワインを余り飲まないという事実です。逆に言うと、輸出用にワインを作るので、どうしてもアメリカ人好みのワインになり易いのでしょうか?

 

これだけ素晴らしい独特の土壌、気候がありながらも、海外で割安感を売らざるを得ないのは、政府或はワイン業界が一枚岩となった確固とした「ワイン政策」が、未だ存在しないからなのでしょう。残念なことです。

 

それでも、今回の訪問ではチリ独特のテロワールを活かして最高品質のワインを作るメーカーに巡り会え、一日を一緒に過ごしました。このcasa marin (カサマリーン)の創立者にしてワインメーカーのメリールー女史は、ご家族全てを巻き込んでのワイン作りに励んでいますが、赤白全ての試飲をさせて頂いて、そのエレガントさ、質の高さにショックを受けました。

 

また、サンフランシスコで開催された「チリのワイン」というエヴェントで知り合ったRavanal Wineryの若く美しい二台目オーナーのピア ラヴァナル女史は、わたくしのチリ到着の翌日にわざわざ車でホテルまで迎えにきて下さり、2時間南に下った彼女のワイナリーで一日を過ごすという素晴らしいプレゼントを下さいました。彼女のワイナリーは赤ワインで有名なカルチャグアというワイン地域にあります。

 

いずれ、カサ マリン 及び ラヴァナル ワインをご紹介する機会があると思います。

ピア ラヴァナル女史と、ワインメーカー

Yuki Saito

斉藤ゆき

Diploma WSET, Certified Sommelier, Master of Wine Program
ワイン・コンサルタント 品評会審査員 ワイン・ライター

ニューヨークで金融キャリアを構築後、 生涯のパッションであるワインを、欧米のトップスクールで学び、日本人として希有な資格を数多く有するトッププロ。

ワイン教育の最高学府、Wine and Spirits Education Trust (WSET)の学位(レベル4最上位)をカリフォルニアで、上級資格(レベル3)をトップで本校(ロンドン)にて取得。更に、ソムリエ機関の世界的権威であるCourt of Master Sommeliers(ロンドン)の認定ソムリエ資格も有する。フランス留学は頻繁で、ボルドー、ブルゴーニュを始め、各地のワインスクールでフランス人と共に学ぶ。

現在は、サンフランシスコをベースに、ワインの顧問業務(日米)、連載記事の執筆と講演(日米)、品評会審査と視察(日欧米)を3本柱に活躍する傍ら、ワイン業界最高峰といわれるマスター・オブ・ワインのプログラムに所属し、MWを目指して切磋琢磨中。

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