えっ、これが同じワイン?

同じ親から生まれた兄弟でも、個性に差がある様に、同じクローンで同じ畑、同じ作り手の樽、同じ年に、同じワインメーカーに作られたワインでも、それぞれの瓶の中にあるワインは二つとして同じ物(味わい)はありません。

 同じ畑でもブドウの木の位置が1m違えば、当たる日差しも違って来るので、収穫時の熟成が違います。樽に入れて寝かしている間にも、樽の位置が倉の奥と入り口付近では、また積み上げた樽が、一番下か一番上かでは、空気の流れ、湿度などで、熟成の進行が異なります。従ってワインメーカーは、単一ブドウ種(例えばピノノワール)のワインでも、違う畑、違う樽の物をブレンドし、瓶に詰めます。それでも、当然全く同じ味の瓶という物は、存在しません。

 出荷した後にも、ワインの質を変える環境が待っています。例えば、すぐ隣街で売るワインと、5千キロ離れた外国に 輸出したものは、当然新鮮さが違いますし、ワインショップの保存方法(日が燦々と射している棚に、縦において売る店は当然パス)も、購入者の扱い も、ワインの風味に多大な影響を及ぼします。

 こうして私たちの口に入るワインは、生まれ、育った環境と、社会に出て一人前になるまでの歴史を体現し、味わう私たちの味覚を刺激し、認識にチャレンジします。

 言い換えれば、人間(ワイン)を見る目が有る人には、「このワインはこういう物に有らず。」という認識のもと、有るべき姿のオリジナルを探すか、何がそのワインを亜流に換えてしまったのか(その年の気候、ワインメーカーの交代など)を分析し、決して「このワイン(瓶=外見、ではなく ワイン=内面)は駄目!」という判断は下さないものです。

 

目隠し試飲会にて

よく耳にするのは、「あれっ、このワイン、この前飲んだ時には美味しいと思わなかったのに、全然違う〜」という声。ワインも人と同じく、見識とセコンドチャンスが必要なのですね。

Yuki Saito

斉藤ゆき

Diploma WSET, Certified Sommelier, Master of Wine Program
ワイン・コンサルタント 品評会審査員 ワイン・ライター

ニューヨークで金融キャリアを構築後、 生涯のパッションであるワインを、欧米のトップスクールで学び、日本人として希有な資格を数多く有するトッププロ。

ワイン教育の最高学府、Wine and Spirits Education Trust (WSET)の学位(レベル4最上位)をカリフォルニアで、上級資格(レベル3)をトップで本校(ロンドン)にて取得。更に、ソムリエ機関の世界的権威であるCourt of Master Sommeliers(ロンドン)の認定ソムリエ資格も有する。フランス留学は頻繁で、ボルドー、ブルゴーニュを始め、各地のワインスクールでフランス人と共に学ぶ。

現在は、サンフランシスコをベースに、ワインの顧問業務(日米)、連載記事の執筆と講演(日米)、品評会審査と視察(日欧米)を3本柱に活躍する傍ら、ワイン業界最高峰といわれるマスター・オブ・ワインのプログラムに所属し、MWを目指して切磋琢磨中。
0 返信

返信を残す

Want to join the discussion?
Feel free to contribute!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です