コルクでなければ、ワインにあらず!?

近年、ヨーロッパ圏外の「新世界」で作るワインの質が急上昇し、フランスが製造法を逆輸入するという現象が起きています。

 

中でも、彗星のごとく市場に現れ、ロワール産の秀逸なサンセール(Sancerre) と並ぶ上質なソーヴィニョン ・ブランを作ったニュージーランド、長期熟成が前提のフランス・ローヌ地方のシラーに対し、格安で、しかもすぐに飲めるおいしいシラーズを世界中に輸出するオーストラリア。

 

この2国に共通するのは、ワインの最新技術を駆使して 、良質でリーズナブルなワインを生産していること。その証拠に、ワインの栓にスクリュー・キャップを使っています。

 

「スクリュー・キャップ(SC)を使ったワインは安物」という イメージがあるようですが、それこそプロから見れば「非常識」というもの。SCとコルクの功罪を比べれば、勝敗は明らか。

 

まず、育つまで150年かかるといわれるポルトガルやスペインのコルクの木を伐採して作るコルク栓は、すでに供給が追つかず、現在ではひとつ1ドルといわれる高級品。当然、ワイン代金に上乗せされます。

 

これに比べて、ビールやコーラを大量生産してきた新世界では、SCの設備投資も整っており、原材料も大量生産も低いコストで行えます。

 

コルクの最大の問題は、何といってもブショネ(仏語のコルク= Bouchonからの派生語。英語ではCorked、専門用語で  TCA)と呼ばれる「汚染」リスクがあること。困ったことに、瓶を開けてみないと分からないこの異臭は、ワインの3〜7%を犯し、生産者、購入者を悩ませます。このリスクを完璧に排したのがSCです!

 

コークスクリューにも様々な種類がありますが、腐ったコルクや、きついコルクを抜く途中で折れてしまい、イラついた経験は誰にでもあるもの。飲み残しのワインにコルクをはめるのにも、またひと苦労します。

 

この点、 道具無しで簡単に開けられ、残ったワインもキャップをきっちりしめ直せば、密封状態で保存ができるSCは優れもの。将来的にSCが広がっていくのは明らかでしょう。

 

現在コルクに固執するのは、長期熟成(10年〜数十年)を前提にして作る最高級ワインです。タニンや酸味の高い「渋い」 ワインは、コルクを通して瓶に入ってくる超微量な空気によって、何年、何十年とかけてまろやかに成熟していきますが、こういうワインは、全世界のワインの生産量のうちほんの数%に過ぎません。

 

ちなみに、実用化されて歴史の浅いSC栓が、ワインの長期熟成にどのような影響を及ぼすのを研究する為に、フランスを代表するシャトー・マルゴーが、7種類のSC栓を使い、実験を始めたというのは、心強い限りです。

 

早飲み用ワインが圧倒的多数をしめる昨今、「コルクでなければ、ワインにあらず」は過去の認識。1〜3年の賞味期限のワインであれば、「ワインの栓はスクリュー・キャップ」が正解です。そして、(レアものの長期熟成用以外の)「ワインは、持っていればいるほど、おいしくなる」というのは、非常識だとガッテンしていただけましたでしょうか?

Yuki Saito

斉藤ゆき

Diploma WSET, Certified Sommelier, Master of Wine Program
ワイン・コンサルタント 品評会審査員 ワイン・ライター

ニューヨークで金融キャリアを構築後、 生涯のパッションであるワインを、欧米のトップスクールで学び、日本人として希有な資格を数多く有するトッププロ。

ワイン教育の最高学府、Wine and Spirits Education Trust (WSET)の学位(レベル4最上位)をカリフォルニアで、上級資格(レベル3)をトップで本校(ロンドン)にて取得。更に、ソムリエ機関の世界的権威であるCourt of Master Sommeliers(ロンドン)の認定ソムリエ資格も有する。フランス留学は頻繁で、ボルドー、ブルゴーニュを始め、各地のワインスクールでフランス人と共に学ぶ。

現在は、サンフランシスコをベースに、ワインの顧問業務(日米)、連載記事の執筆と講演(日米)、品評会審査と視察(日欧米)を3本柱に活躍する傍ら、ワイン業界最高峰といわれるマスター・オブ・ワインのプログラムに所属し、MWを目指して切磋琢磨中。
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