ソノマが誇るチャルドネの古木

ヨーロピアン・ユニオンが確立される以前は、本家本元ワインの名前を勝手に拝借して、安かろうまずかろうワインを売る業者が、 世界中に蔓延していました。「シャブリ」「シャンペーン」なんて言う名前で、本場フランスの本物とは、似ても似つかないワインを安く売り、買う方も深く考えず、泡がたっているワインはシャンペーンと呼ぶのだと、思い込んでいたようです。(尤も、この手の非常識は今でも正されていないようです)

 しかしEUが一枚岩になって、この手の「濫用」を取り締まり、「本物」と「にせもの」を規制するようになりました。とはいえ、未だに「シャブリ」はアメリカ(チリや日本)でも、生産される口当たりのよい白ワインだと、大きな誤解をしている人もいるようで、ワインの常識を正す必要がありそうです。

 「シャブリ」というのは、フランス北部シャブリ地方の、限定された畑で栽培されたシャルドネ種100%の白ワインのこと。「シャンパーニュ」は、これもフランス北部の限定地域で栽培されたシャルドネ、ピノ・ノワール 、ピノ・ムニエのぶどう種をベースに、「シャンパーニュ製法」によって醸造された発泡酒のこと。双方とも、仏ワイン法によって植樹密度から収穫日、収穫法までびっしりと規定、管理されています。

 だからこそ、目隠し試飲でもそれと分かる本家本元の「典型風味」があります。例えば、シャブリであれば「 非常に高い酸味でキレがあり、 旨味成分を感じる高いミネラル分を含んだアルコール分11度から13度程度の、硬質なシャルドネ」で「長年寝かしたヴィンテージものは、レモンやライムといった柑橘類の香りより、マッシュルームや土の匂いが深くなる」といった具合に。

 こういう「常識」をベースに、例えばスーパーで売っている米国産「シャブリ」を飲んでみると、「甘い(酸味が低い)、 ミネラル分不在でアルコール分が高い(あり得ない)そして安い(例えば大瓶で5ドルとか!)」という別物であることが、分かります。

 ところが、近年ワインの世界でも「超国際化」が進み、新世界でもシャブリに近いシャルドネや、本家本元の典型に近いワインを作るまでになりました。毎週定例の目隠し試飲会でも、 「新世界」と「旧世界」のワインを取り違えるプロが続出します。それでも結論として出席者が納得するのは、「典型」を理解しているからこそ、「ああ、ソノマのシャルドネもここまで進化したか!」と「評価」できる訳です。

 もっとも、既に世界的なレベルに達している秀逸なナパのカベルネ、品の良いソノマのシャルドネ、ミネラル分の高いサンタクルーズのピノ・ノワールなど、よりどりみどりの「アメリカ産グランクリュ」を楽しめる世代は、既に本物からスタートしているのかもしれません。

実際、近年のアメリカワインの質の向上には目覚ましい物があります。上記の世界的レヴェルに達しているワインの他にも、ニューヨーク州のリースリング、ワシントン州のボルドー、ブルガンディー品種(カベルネ、ピノノワール、シャルドネなど)に加えアスザス品種(ゲバルツトラミナール、ピノグリなど)の質の向上も目覚ましく、更にオレゴン州のピノは勿論ボルドー品種、そしてカルフォルニアでは全州各地でテロワールにマッチした様々な品種を育て始めています。

カリフォルニアのブドウの木は、植樹から既に数十年経っている物が増えて、成熟期に入っており、今後の更なるワインの質の向上が見込まれ、本当に目が離せない地域です。

 と偉そうに講釈しているわたくしの場合、かれこれ数十年も前に、 ニューヨークで学生時代を送っていた当時は、スーパーマーケットにいそいそと通い、2ドルの大瓶ワインを買い込んでは、おいしく頂いていました。その名もポール・メゾン「シャブリ」!

Yuki Saito

斉藤ゆき

Diploma WSET, Certified Sommelier, Master of Wine Program
ワイン・コンサルタント 品評会審査員 ワイン・ライター

ニューヨークで金融キャリアを構築後、 生涯のパッションであるワインを、欧米のトップスクールで学び、日本人として希有な資格を数多く有するトッププロ。

ワイン教育の最高学府、Wine and Spirits Education Trust (WSET)の学位(レベル4最上位)をカリフォルニアで、上級資格(レベル3)をトップで本校(ロンドン)にて取得。更に、ソムリエ機関の世界的権威であるCourt of Master Sommeliers(ロンドン)の認定ソムリエ資格も有する。フランス留学は頻繁で、ボルドー、ブルゴーニュを始め、各地のワインスクールでフランス人と共に学ぶ。

現在は、サンフランシスコをベースに、ワインの顧問業務(日米)、連載記事の執筆と講演(日米)、品評会審査と視察(日欧米)を3本柱に活躍する傍ら、ワイン業界最高峰といわれるマスター・オブ・ワインのプログラムに所属し、MWを目指して切磋琢磨中。

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