Court of MSのソムリエバッジ

前回のコラムでは、レストランでソムリエを使おうと推奨しました。とはいえ、一概にソムリエといっても、有資格者であるのか、叩き上げで自己流に勉強した人なのか、ワイン好きのコレクターが店を経営しているのかなどで、アドヴァイスが微妙に変わってくることも確か。

 

そこで今回はソムリエの資質と資格について、お話ししたいと思います。ソムリエとはワインを専門に扱う給仕であり、スピリッツのプロ(で有るべき)バーテンダーと良く似ています。 但し、有資格のソムリエと名乗るには相応の理論と試飲の勉強を重ね、資格試験に合格する必要があります。

 

アメリカでソムリエを認知、管理する最高権威は、Court of Master Sommeliersという国際機関。ロンドンに本部が有り、最大の規模を誇るアメリカのソムリエギルドを始め、世界各国の組織でソムリエの育成講座や資格試験を行っています。(日本には、英語圏の組織の為か支部はなく、日本ソムリエ協会という社団法人が、日本専門の資格試験を実施、管理しています。)

 

正式に、「ソムリエ」と名乗るには、「ソムリエ証書(レヴェル2)Certified Sommelier」という資格が望まれ、 レヴェル1(ソムリエ予備証書)の合格者が受験対象となります。この試験は理論、試飲、実技が要求されますが、受験者が特に緊張するのは、客に扮したマスターソムリエ(MS=レヴェル4の最高位)達の前で行う実技試験。古酒やシャンパーニュなどを手際よく、美しく開けようと奮闘している間にも、MS達は容赦なくワインやペアリングに関する質問を連発します。

 

「今日の魚と肉料理は、どんな調理法で、どのワインとのペアリングを勧めるか?」「自分はイタリア北部の白ワインしか飲まない。」「僕は60ドル以内のフランス産の赤ワインが良い」「私はヨーロッパ意外のワイン 」などなど。世界中の主な生産者や値段を思い起こし、料理にぴったり合う、客好みのワインを瞬間的にセールスするテストです。

 

私自身も持っているこの資格の応募者は、長い間レストランで働き、ソムリエの下で実技を積み、理論も長い間かけて勉強して来た人達でした。但し、私のように、店でワインサービスをすることのないワイン業界の人間も、ソムリエ資格をとるようになりました。

 

このソムリエ証書とソムリエバッジ(写真参照)があれば、どんなレストランでも優遇してくれると言われています。更にワインの給仕を経てレストラン企業の管理職、ワインの顧問業などを指向する人には 、「上級ソムリエ(レヴェル3)」から「マスターソムリエ」の狭き門に挑戦するチョイスもあります。

 

質の高いレストランでは、プロのソムリエ(外注も含む)がワインリストを作成し、シェフと相談しながら、食事との相乗効果を狙ったペアリングを作ります。ワインリストを見ると、プロが手がけたものか、素人が作った物かが一目瞭然となります。

 

どんなにワインに精通していても、素人の作ったワインリストは、自分の嗜好と守備範囲に偏る傾向にあり、店の食事との相性を優先せず、独りよがりのきらいが残ります。

 

ソムリエの資質は、まだ知られていない、コストパフォーマンスの高い、客の喜ぶ素敵なワインを探し出し、割当を確保する力量にかかってきます。 勿論、「店にふさわしい」ワインを一通り揃えた上での話です。

 

ソムリエを呼んで貰ったときは、まずバッジの有無を確認します。未資格者が「ソムリエ」として客に接する店は黄信号。「うちにはソムリエはおりませんが、自分が説明出来ます」というのが、正しいアプローチです。給仕に店の料理を試食させない店は、赤信号。料理もワインも味見させずに、暗記したセリフをしゃべらせる店を、あなたは信用できますか?

Yuki Saito

斉藤ゆき

Diploma WSET, Certified Sommelier, Master of Wine Program
ワイン・コンサルタント 品評会審査員 ワイン・ライター

ニューヨークで金融キャリアを構築後、 生涯のパッションであるワインを、欧米のトップスクールで学び、日本人として希有な資格を数多く有するトッププロ。

ワイン教育の最高学府、Wine and Spirits Education Trust (WSET)の学位(レベル4最上位)をカリフォルニアで、上級資格(レベル3)をトップで本校(ロンドン)にて取得。更に、ソムリエ機関の世界的権威であるCourt of Master Sommeliers(ロンドン)の認定ソムリエ資格も有する。フランス留学は頻繁で、ボルドー、ブルゴーニュを始め、各地のワインスクールでフランス人と共に学ぶ。

現在は、サンフランシスコをベースに、ワインの顧問業務(日米)、連載記事の執筆と講演(日米)、品評会審査と視察(日欧米)を3本柱に活躍する傍ら、ワイン業界最高峰といわれるマスター・オブ・ワインのプログラムに所属し、MWを目指して切磋琢磨中。

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