サンタ・クルーズ・マウンテンズ・ブドウ栽培地域(Santa Cruz Mountains AVA)は、太平洋に面した山々の畑で、その冷厳な気候と水はけの良い土壌を生かして、きりっとエレガントなピノ・ノワール、シャルドネそしてシラーを主に栽培しています。

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サンノゼの西27kmに位置する 広大なサンタ・クルーズ 山脈ですが、 険しい山間部の土地を開墾して畑を耕すため、ブドウの植樹面積比率は余り大きくありませんし、現時点のワイナリー数は76と少なく(ナパ、ソノマはそれぞれ400近く)、こじんまりとした感があります。それはとりもなおさず、それぞれの畑のテロワール(地味、気候など)の特色が出易いということで、単一畑のブドウだけで作る贅沢なワインが多く作られています。近年、こういう『テロワール・ワイン』が、カリフォルニアの才能に溢れたワインメーカー達の指針となっており、それを実現し易い土地と言えます。

 今回紹介するビッグ・ベイスン・ヴィンヤーズは、避暑地としても有名なサラトガの町から太平洋に向かって山道を車で登ること50分。平坦な道なら15分程で着く距離ですが、うねうねと勾配の激しい山道を、とろとろと登って行きます。地図で見るとサラトガと太平洋のちょうど真ん中に位置するワイナリー。ワイナリーに到着して、畑を見上げた瞬間に、最初にガイドに漏らした感想は「まるで北ローヌみたい!」それを聞いたガイドが嬉しそうに、「その通り。オーナーはコートロティ(Cote Rotie = 北ローヌの高名なシラー品種育成地)をイメージしてこの畑を作ったんだ」とのこと。なるほど。

 

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急勾配の畑は、地味(土)の違いによって区域を分け、名前をつけて管理。角度(太陽に向かっての角度と、斜面の角度)が全て異なる畑は、 海からの強風と濃霧、山の下から這い上がって来る霧、そして山の隙間から吹き付ける風などの自然条件をフルに享受するアングルに立地。朝の優しい陽光を受ける東向きの畑と、沈む太陽の燃えるような熱を受ける西向きの畑で育ったブドウでは、味わいが違い、霧が届かない山頂に植えたブドウと、畑の中腹、また下部では水分、養分の違いが現れます。

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オーナー(Bradley Brown)自らがブドウ栽培と醸造を指揮するこのビッグ・ベイスンでは、同氏の情熱ともいえる北ローヌ品種のシラーを中心に、ブルガンディーを意識したピノノワールを植樹。畑はオーガニック証書が証明する通り、クリーンでナチュラルな無農薬栽培を心がけています。ワイン作りも同氏の「ワインは自然が作り出す」という哲学を踏襲し、過度な介入を避け、いわゆるオールドスクール(フランスの良き時代のワイン作り)の手法で製造。その結果、ブラッドリーの作るワインは、恵まれた自然が作るカリフォルニアのブドウを、そのまま瓶に閉じ込めたよう。ピノノワールは、エレガントですが、女性的ではなく、ある種の力強さを感じさせます。恐らく、これは同氏の性格が反映しているのでは?と言うと、嬉しそうに「だといいね」と。

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シラーは仏ローヌのシビアな辛口ではなく、やはりカリフォルニアらしいまろやかな味わい。とはいえ、いわゆるシラーズ(オーストラリアが有名にしたフルーティーでパンチの効いたシラー)とは一線を画しています。そう感想を述べると、ブラッドリーはにっこりと笑い、「よかった」とウインク。やはりフランスファンのブラッドリーのインスピレーションは、ローヌのワインから来ているようです。

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尚、ワイナリーまで行かなくとも、Big Basin のテイスティングルームは、可愛らしいサラトガの町中にありますし、そちらの方が試飲出来るワインの種類が多いので、一度ぶらっと立ち寄ってみて下さい。

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今回試飲したワインは以下の通り。(参考価格)

 

2009 Coastalview Vineyards Syrah $45

2009 Old Coral Syrah $54

2010 Coastalview Vineyards Pinot Noir $45

2011 Alfaro Family Vineyard Pinot Noir $41

 

サンタクルーズマウンテンズAVAのピノノワールについての記事、「サンタクルーズマウンテンズ栽培のピノノワール」(13年3月24日付け)も合わせてを参照下さい。

Yuki Saito

斉藤ゆき

Diploma WSET, Certified Sommelier, Master of Wine Program
ワイン・コンサルタント 品評会審査員 ワイン・ライター

ニューヨークで金融キャリアを構築後、 生涯のパッションであるワインを、欧米のトップスクールで学び、日本人として希有な資格を数多く有するトッププロ。

ワイン教育の最高学府、Wine and Spirits Education Trust (WSET)の学位(レベル4最上位)をカリフォルニアで、上級資格(レベル3)をトップで本校(ロンドン)にて取得。更に、ソムリエ機関の世界的権威であるCourt of Master Sommeliers(ロンドン)の認定ソムリエ資格も有する。フランス留学は頻繁で、ボルドー、ブルゴーニュを始め、各地のワインスクールでフランス人と共に学ぶ。

現在は、サンフランシスコをベースに、ワインの顧問業務(日米)、連載記事の執筆と講演(日米)、品評会審査と視察(日欧米)を3本柱に活躍する傍ら、ワイン業界最高峰といわれるマスター・オブ・ワインのプログラムに所属し、MWを目指して切磋琢磨中。

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