今年は一月に、東京各地でワインの講演会を開いて参りました。企業に招聘されたもので、未だに日本で苦戦を強いられているカリフォルニアワインの素晴らしさを、日本の消費者に教えて欲しいという主旨。

 こちらも久しぶりの日本なので、早めに到着し、色々な地域の酒屋、スーパー、ワイン専門店などを廻ってまずはマーケット調査。そこで感じたのは、今でも日本はちょっと歪んだくらいフランスワイン寄りだということ。とはいえ、アメリカ、オーストラリア、チリなどの新世界のワインが、以前よりかなり出回っており、 価格が国際水準により近くなっていること。また、長年のデフレ効果と不況のせいか、日本人がよく飲むワインは、千円前後が一般的とのこと。

 問題は、一般の酒屋やスーパーでアメリカワイン(ほとんどがカリフォルニアワイン)が占める割合は、1%にも満たないこと。ローカルな酒屋さんは全くアメリカワインを売っていないところも多々あり、酒と焼酎の合間に、フランス、イタリア、チリに、すこしの国産ワインという印象が強く残りました。

 アメリカワインが唯一充実している店は、麻布や六本木といった外国人地域、或は富裕層が多い住宅地の「ハイエンドスーパー」のみ。それでも全体の2割といったところでしょうか。以前のように当たり前のモンダビ、コッポラ、カレラなどの有名どころの他に、ぼちぼちと優良ワインも進出し始めてはおりますが、まだまだの感があります。

 こんな状況を予想して、講演会のため日本に送ったワインは、どれも印象的なワインばかりを選びました。手作り感があり、地元以外であまり知られてない少量生産のワインで、カリフォルニアらしい特質を感じるもの。この記事の性格上、ブランドは言えませんが、品種はフィルターをかけていないシャルドネにピノノワール、価格高騰のナパではなく、他の優良地域の有機栽培のブドウからつくったカベルネやボルドーブレンドなど。また、どっしりと重いジンファンデルの代わりに、エレガントで食事にあうジンファンデルなどなど。勿論シャンパーニュにひけをとらないアメリカのスパークリングワインも入っています。

 講演会では、スライドを使って分かり易く丁寧にそれぞれのワインの出身地や生産法などを説明し、一番おいしく飲めるワインの保存や温度も伝授。出席者(100人 )には普通のワイングラスと、大振りのブルゴーニュグラスを持ってもらい、実際にシャルドネやピノを両方のグラスから飲んでもらって、グラスの形と大きさがどれだけワインの味に影響を及ぼすかなどをデモンストレーション。これには、出席者からかなりの反響があり、講演終了後に色々な方から「明日早速グラスを買いに行きます!」というコメントを頂きました。

 IMG_5401プロのカメラマンが撮った、講座中の出席者の写真を見ると、9割が40台以上の男性でしたが、目を輝かしながら講義を聴いて下さっている様子や、しっかりとグラスに向き合い、試飲をしている感じが伝わって来て、感動しました。かなり多くの方から「今日飲んだカリフォルニアワインは全て、本当においしかったです!」「こんなおいしいワインは始めてです」というコメントを頂き、日本でのアメリカワインの潜在能力に改めて、自信を持って帰国しました。

Yuki Saito

斉藤ゆき

Diploma WSET, Certified Sommelier, Master of Wine Program
ワイン・コンサルタント 品評会審査員 ワイン・ライター

ニューヨークで金融キャリアを構築後、 生涯のパッションであるワインを、欧米のトップスクールで学び、日本人として希有な資格を数多く有するトッププロ。

ワイン教育の最高学府、Wine and Spirits Education Trust (WSET)の学位(レベル4最上位)をカリフォルニアで、上級資格(レベル3)をトップで本校(ロンドン)にて取得。更に、ソムリエ機関の世界的権威であるCourt of Master Sommeliers(ロンドン)の認定ソムリエ資格も有する。フランス留学は頻繁で、ボルドー、ブルゴーニュを始め、各地のワインスクールでフランス人と共に学ぶ。

現在は、サンフランシスコをベースに、ワインの顧問業務(日米)、連載記事の執筆と講演(日米)、品評会審査と視察(日欧米)を3本柱に活躍する傍ら、ワイン業界最高峰といわれるマスター・オブ・ワインのプログラムに所属し、MWを目指して切磋琢磨中。

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