つい最近、ナパを襲ったマグニチュード6の地震については、発生直後に自分のフェースブック(https://www.facebook.com/yukisaitosf)でアップデートしました。世界中の方々から「ナパは大丈夫?」と問い合わせを頂きましたが、読者の皆さんも既にご存知の通り、人的被害もワイン業界が「実質的」に被った被害も、最小限で済んだのは、幸いでした。

今では世界を代表するワイン地域として、質、値段ともにボルドー、ブルゴーニュと肩を並べるナパ・バレーですが、生産量はカリフォルニア州の4%、世界の中ではほんの0.4%に過ぎません。

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ちなみに、行政地区のナパ郡ではなく、「ナパ・バレー」というアメリカブドウ生産地域(American Viticultural Area略して AVA)に認定されているのは、今回震源地となったアメリカン・キャニオンを最南東とし、ソノマとナパにまたがるロス・カーネロスを最南西とすれば、北の境界はカリストガで、この南北約50キロにまたがる細長い地域に、16のAVAが存在します。(郡として数えると17)。大きさも形状も、フランス、ブルゴーニュの最高畑が並ぶコートドールを彷彿させます。

 

東西の境界線は、西のマヤカマス・マウンテンズと東のヴァカ・レンジという、丘と言った方がしっくりする低い二つの山脈で、距離にしてせいぜい平均5キロ幅。この山に挟まれた盆地(バレー)の真ん中にハイウェイ29号線が走り、両側に林立するワイナリーは古くからナパを代表するものばかりで、モンダビ、オーパス・ワン、ガーギッチ、イングルヌックなど、数え上げたら切りがありません。29号線の南から北に上がると、ヨントヴィル、オークヴィル、ラザフォード、セントヘレナという代々のカベルネの名勝地が見えます。

 

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一昔前までナパの中心地であった、セント・ヘレナの可愛らしい目抜き通りを抜け、温泉とスパで有名なカリストガまで北上する地域は、ナパ・バレーでもっとも暑い場所。逆にカーネロスに向かって南下するほど、涼しくなるのがナパの特徴です。それは、すぐ南のサンフランシスコ湾から這い出して来る、朝夕の涼しい霧と風のせい。

 

湾に一番近くて涼しいカーネロスでは、昔からブルゴーニュ品種(つまりはシャンパーニュ品種と同じ)のシャルドネとピノノワールが、暑い盆地でありながら、朝夕の涼しい空気がながれこんでくる地域(ハイウェイ29号線と、平行して走る美しいシルバラド・トレール沿い)にはボルドー品種のカベルネとメルローが栽培されてきました。

 

近年、とみに注目される5つの山AVAは、西のマヤカマス山脈の南から数えてマウント・ヴィーダー(カーネロスに続く冷厳な気候で、抑えたトーンのワインを生産)、スプリング・マウンテンとダイアモンド・マウンテン(双方とも力強いカベルネ、メルロー、ジンファンデルを生産)、東のヴァガ山脈も南から追ってアトラス・ピーク(生産者が希少で入手が難しい)とハウウェル・マウンテン(パワフルなカベルネと、高級ワインの生産地)。山で栽培されるカベルネを総称して「山カベ」と言いますが、いまでは平地の老舗に負けず相当の値段をつけています。

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Yuki Saito

斉藤ゆき

Diploma WSET, Certified Sommelier, Master of Wine Program
ワイン・コンサルタント 品評会審査員 ワイン・ライター

ニューヨークで金融キャリアを構築後、 生涯のパッションであるワインを、欧米のトップスクールで学び、日本人として希有な資格を数多く有するトッププロ。

ワイン教育の最高学府、Wine and Spirits Education Trust (WSET)の学位(レベル4最上位)をカリフォルニアで、上級資格(レベル3)をトップで本校(ロンドン)にて取得。更に、ソムリエ機関の世界的権威であるCourt of Master Sommeliers(ロンドン)の認定ソムリエ資格も有する。フランス留学は頻繁で、ボルドー、ブルゴーニュを始め、各地のワインスクールでフランス人と共に学ぶ。

現在は、サンフランシスコをベースに、ワインの顧問業務(日米)、連載記事の執筆と講演(日米)、品評会審査と視察(日欧米)を3本柱に活躍する傍ら、ワイン業界最高峰といわれるマスター・オブ・ワインのプログラムに所属し、MWを目指して切磋琢磨中。

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