ワインの味が分からないっ!

とうとう職業病にかかってしまったようで、、、。昨年の11月に マスター オブ ワイン(MW)のプログラムに入ってからこのかた、朝の5時から夜の7時まで理論の勉強、目隠し試飲、リサーチ、そしてまた勉強という座りっぱなしの毎日。まあ、この生活が向こう数年は続くわけで、気分転換も兼ねて、いつもの美容院に行きました。すると、「あらっ、ゆきさん、またストレスの高い生活をしている?」と聞かれて、「えっ、いつも通りだけど、、」と言うと、「今回は頭のてっぺんだけ、白髪で真っ白になってる!」とのこと。

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自分ではプレシャーに強く、チャレンジを楽しんでいると思いこんでいても、体は正直なようで、以前も彼女は「10円ハゲ」「異常な頭皮からの発汗」「高熱」など、私の体の悲鳴を発見してくれました。とはいえ、健康を損ねても、なお夢中になれる天職があるというのは、なんと幸せなことでしょう。

 

ところが、、、。今回はそんな悠長な病気ではなく、「ワインの味が分からない!」という深刻な症状。それは数年後の厳しいMW受験に向けて、何百、何千という目隠し試飲を重ねているうちに、ワインを楽しむ余裕を失くしてしまったことが、原因でしょうか。実際同じプログラムに所属する友人も、「最近、ちょっとワインが嫌いになりそう、、、」とこぼしていたことを思い出します。

 

一番好きなワインだからこそ、大切な家族や友人を放ったらかし、寝食を忘れて 、勉強に励んでいます。ところが、レヴェルが高度になればなるほど、マイナーで滅多に飲まない国のワインを熟知せねばなりません。また、当たり前のボルドーやリオハであれば、どこの畑のブドウを使った、何年のヴィンテージなのかという「常識」も要求されます。世界は広く、ワインは深いのですね。

 

という訳で、毎日12種類のワインを誰かに注いでもらい、自分の目と鼻、舌だけを頼りに、「どのブドウ品種を使って、誰が(或はどんな手法で)作った、どこの地方の何年もののワインなのか。そしてこの品質とスタイルは、業界でどのような評価を得ることができるか」などというテーマ別に、時間を計り、タイムリミット内で論理的な文章に落として行かねばなりません。

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これを繰り返していくと、ワインを楽しむ余裕がなくなり、学問の分析対象になっていきます。しかも急速に膨らんで行く知識が邪魔をし、当たり前のワインを目の前にして、「もしかしたら、フランスではなく、近年フランス並みの質を作るようになった、ニュージーランドのセントラルオタゴ辺りの、ピノノワールではないか?」「いや、超冷厳で風の強いサンタクルスの畑でつくった、寒い年の11年のピノではないか?」などと、自分自身の味覚を通り越して、頭がワインの味を決めかねません。以前なら、これはシャブリ、これはキャンティと一発でわかったワインが、疑心暗鬼でどんどん分からなくなり始めた時に、これはまずい!と初心に帰ることにしました。

 

つまりは目隠しをやめて、ペンを置き、ノートをとらずに、目の前のワインを「ひたすら楽しむ」ことに。こうして心と感性を解放して、大好きなワインと向かい合ってみれば、彼らの方から勝手に語りかけてくるではありませんか。今朝起きた時に、一番最初に思ったこと。「あっ!舌が昨日レストランで飲んだワインの味をしっかり覚えているっ!」そして机に突進し、テイスティングノートを一気に書き上げたのでした。まずは、めでたしめでたし。

 

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Yuki Saito

斉藤ゆき

Diploma WSET, Certified Sommelier, Master of Wine Program
ワイン・コンサルタント 品評会審査員 ワイン・ライター

ニューヨークで金融キャリアを構築後、 生涯のパッションであるワインを、欧米のトップスクールで学び、日本人として希有な資格を数多く有するトッププロ。

ワイン教育の最高学府、Wine and Spirits Education Trust (WSET)の学位(レベル4最上位)をカリフォルニアで、上級資格(レベル3)をトップで本校(ロンドン)にて取得。更に、ソムリエ機関の世界的権威であるCourt of Master Sommeliers(ロンドン)の認定ソムリエ資格も有する。フランス留学は頻繁で、ボルドー、ブルゴーニュを始め、各地のワインスクールでフランス人と共に学ぶ。

現在は、サンフランシスコをベースに、ワインの顧問業務(日米)、連載記事の執筆と講演(日米)、品評会審査と視察(日欧米)を3本柱に活躍する傍ら、ワイン業界最高峰といわれるマスター・オブ・ワインのプログラムに所属し、MWを目指して切磋琢磨中。
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