By / 27th 6月, 2016 / ワインの知識 / No Comments

よくこんな質問を受けます。実際、畑に出て木からブドウをもいで食べてみても、「これはカベルネ、こちらはメルロー」と明快に識別できることは稀です。勿論、熟練のブドウ農家であれば、葉や房の形状、色味などで区別できることはありますが、他人の畑に連れて行って、これはどの品種だ?と聞いても、躊躇することのほうが多いくらいです。自分の畑であれば、どこに列にどの品種を植えているのかは、配列ごとにきちんと管理されていますから。 やっかいなのは、同じ品種(ピノノワール)の中でも、何十とあるクローン(666、777などと呼ばれる)は、それぞれ性格や味わいが異なること。みかけも違えば、性質も違ってきます。例えて言えば、同じ日本人でも、北海道と沖縄の違いかな?IMG_5255

とは言え、ワイン用のマスカットは明らかにワインに近い、分かりやすい品種です。香水のような甘い花の香りと、ブドウジュースのような口あたりの良さが特徴の、『モスカト(マスカットのイタリア読み)』が代表的なワインですが、この本来のブドウに近い味わいに仕立てるためには、低温を保ちつつ、空気に触れさせずに、ステンレススチールタンクでワイン造りをします。つまりはピュアーな果実味を保存する製造法です。これに対して、ブドウを潰した後、皮と一緒に長期漬け込み、木樽で寝かせるという製法は、本来のブドウの性質を変化させる手法で、皮から抽出されるアントシアニンの影響を受け、心地よい苦味が加わり、色合いも濃くなります。また、樽内でゆっくりとワインが酸化していくことで、ナッツの風味が加わったり、超辛口なワインに仕上がっていきます。この手法は本来赤ワイン作りに用いる方法ですが、特徴のない白ブドウ品種(甲州やミュスカデ)に複雑味を加えるために用いたり、この手法に耐えうる凝縮度の高いブドウ(シャルドネ)に使います。IMG_4428

本来ワインとは、ブドウが内包する化学物質が、醸造中に発生する成分と化学反応を引き起こすことで、出来上がっていく飲み物です。つまりは、どんなワイン造りをするかによって、味も色も変わっていきます。日本酒もそうですが、アルコール発酵を促すイースト(酵母)の種類で、ワインの風味をコントロールできますし、一事が万事で、醸造の温度、長さ、入れ物(樽、タンク)の素材、形、大きさの違いで、別物のワインに変化するわけです。

それでも、品種独特の特徴はあります。例えば、ボルドー品種(カベルネ、メルロー、ソービニョンブランなど)の青臭さや、シラーの黒胡椒風味は、そのブドウの持つ味わいですが、これに対してある種のシャルドネのバター臭や、リオハやシラーズの甘いスパイスは、醸造手法から発生したものです。もっとも、ナパのカベルネに青臭さがないのは、アメリカ人がこのピーマンのような匂いを嫌うので、ブドウをうんと熟してから収穫することで、品種独特の性質を消してしまいます。これはフランスの硬派で超辛口のシラーに対して、オーストラリアが作った甘口でどっしりした「シラーズ(同じ品種)」と、同じのりと言えるでしょうか。

そもそも、ブドウがおもいっきり熟してしまったら、どんな品種だって一様に、レーズンになるわけで、どこぞの国の整形美女のようなものかもしれません。つまりは、みーんな同じように、きれいだけれども、特徴のないワインが勢ぞろいするという訳です。あーあ。

Yuki Saito

斉藤ゆき

Diploma WSET, Certified Sommelier, Master of Wine Program
ワイン・コンサルタント 品評会審査員 ワイン・ライター

ニューヨークで金融キャリアを構築後、 生涯のパッションであるワインを、欧米のトップスクールで学び、日本人として希有な資格を数多く有するトッププロ。

ワイン教育の最高学府、Wine and Spirits Education Trust (WSET)の学位(レベル4最上位)をカリフォルニアで、上級資格(レベル3)をトップで本校(ロンドン)にて取得。更に、ソムリエ機関の世界的権威であるCourt of Master Sommeliers(ロンドン)の認定ソムリエ資格も有する。フランス留学は頻繁で、ボルドー、ブルゴーニュを始め、各地のワインスクールでフランス人と共に学ぶ。

現在は、サンフランシスコをベースに、ワインの顧問業務(日米)、連載記事の執筆と講演(日米)、品評会審査と視察(日欧米)を3本柱に活躍する傍ら、ワイン業界最高峰といわれるマスター・オブ・ワインのプログラムに所属し、MWを目指して切磋琢磨中。

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