日本人は味覚 の説明ができない!?

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日本は相変わらず食べログ系のテレビ番組や雑誌で溢れているが、嬉しいことに最近はこれにワインが加わって、ペアリングの静かなブームが起こっているようだ。ところが困ったことに、日本人に料理やワインの感想を聞いても、相変わらず ワンパターン返答だ。曰く。「美味しい〜!プリップリだわ」「飲みやすいワインですね」。数え上げたらキリがないが、味に関わりのない意味不明の表現が、当たり前にようにレポートされる。いうまでもないことだが、『プリップリ』は食感を表す擬声語で味とは関係がないし、『飲みやすい』に至っては、あまりに主観的で、意味が伝わらない。

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ワインの味をきちんと伝えるならば、5つの基本的な味覚、「甘味」、「酸味」、「苦味」、「塩味」、「旨味」、をまず認識して欲しい。甘さの源は、ワインに残っている残糖分が主だが、果実の凝縮度やアルコール度数の高さも、甘さを感じさせる要因となる。「酸味」は酸っぱいと感じる種類のりんご酸が多いか、まろやかさな乳酸が多いかによって、味わいだけでなく、ボリューム感(いわゆるボディ)の印象も変わってくる。「苦味」は基本的にはタンニンに起因するが、渋味は、未熟なぶどうや醸造過程から発生する。苦いというのは味覚だが、渋いというのは舌触りだ。ワインに「塩味?」と思うかもしれないが、pHの低いワインや、古代の海洋性土壌(シャブリなど)で育ったぶどう、あるいは強い潮風を受けて育つぶどうから作ったワインに仄かな塩味を感じることがある。 最後の「旨味」は、長期熟成したワイン独特の香りと味わいだ。醤油のような、あるいはキノコのような匂いと言ったら分かっていただけるだろうか?

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ワインの理論をきちんと学んだ人は、この味覚の認識を徹底的に鍛えられる。故に、ワインの品評会でも「シャブリ=超辛口、酸味が高く、時として塩気を感じ、年を経て蜂蜜やトラッフルのような旨味成分が増す」とか、「ナパのカべルネ=果実の凝縮度が高いため(やや)辛口、酸味は低いが滑らかなタンニンが特徴で、高アルコールと相まって、どっしりとフルボディ」という常識がまかり通る。

 

高度なテイスティングを重ねると、味覚に加えてワインの品質評価が可能になる。要はワインのバランス、余韻、凝縮度、複雑味を、理解し評価するようになるわけだ。更には進化し、専門理論(醸造学やぶどう栽培など)を習得すると、味覚や品質が、どんな化学物質や変化によってもたらされたのかを知るようになる。最終的にはブラインド(目隠し)試飲の状態で、そのワインがどこの地域の何の品種から作られ、どのように醸造されたかを類推できるようになる。これは、理論と正当な試飲を重ねた結果、得るものであって、 決して「神業」でも「天才技」でもなく、誰もが到達できる領域だということを、知っていただきたい。

 

ちなみに普段、気軽にできる味覚のトレーニングがある。食べ物や飲み物の匂いをしっかりと嗅いで、自分の記憶にある何かと結びつけることだ。実は味覚の大部分は、鼻(匂い)から感知する。風邪をひいているときに、味がわからないのは、鼻が利かないせいだ。そして、もし初めての風味を見つけたら、その時一緒にいた人や、印象に残った風景と、その味わいをしっかり結びつけておくと、記憶の中にしっかり残るはずだ。例えば、 焦げたトーストに塗ったバターの香りは、フレンチオークの新樽で寝かせた高級シャルドネの匂いを呼び起こす。私たちはこういう日々の「動機付け」を重ねて、自分の中で「ワインの味の図書館」を作り続けている。

 

Yuki Saito

斉藤ゆき

Diploma WSET, Certified Sommelier, Master of Wine Program
ワイン・コンサルタント 品評会審査員 ワイン・ライター

ニューヨークで金融キャリアを構築後、 生涯のパッションであるワインを、欧米のトップスクールで学び、日本人として希有な資格を数多く有するトッププロ。

ワイン教育の最高学府、Wine and Spirits Education Trust (WSET)の学位(レベル4最上位)をカリフォルニアで、上級資格(レベル3)をトップで本校(ロンドン)にて取得。更に、ソムリエ機関の世界的権威であるCourt of Master Sommeliers(ロンドン)の認定ソムリエ資格も有する。フランス留学は頻繁で、ボルドー、ブルゴーニュを始め、各地のワインスクールでフランス人と共に学ぶ。

現在は、サンフランシスコをベースに、ワインの顧問業務(日米)、連載記事の執筆と講演(日米)、品評会審査と視察(日欧米)を3本柱に活躍する傍ら、ワイン業界最高峰といわれるマスター・オブ・ワインのプログラムに所属し、MWを目指して切磋琢磨中。
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