良質でリーズナブルなカリフォルニアワインを探す

カリフォルニアワインの質と評価が、世界的に認知されたのは喜ばしい。しかしながら、高騰し続けるワインの値段が悩ましい。 そんな中で、高品質を保ちつつ、値段をリーズナブルに抑えたワイナリーを探し、日本に紹介する仕事をしている。こちらのメガネにかなったワインを見つけると、オーナーやワインメーカーを訪問し、ヒアリングをする。その上で、彼らに相応しい日本でのパートナーを確保し、輸出する道筋をつけてあげるのだ。

選ぶ基準は、 単一品種(シャルドネ、ピノノワールなど)であれば、ブドウの個性とテロワールがしっかり表現されたもの、ブレンドワインなら、作り手の個性とバランスが良いものを探している。大手有名メーカーや、カルトワインという法外に高いワインは敬遠し、ワインの好きな人が、気軽にそして頻繁に楽しめるワインが私のテーマだ。結局、小規模及び家族経営の、手作り感のある作り手が多くなる。個人的には、エレガントでヨーロッパ的な「カリフォルニアワイン」を好むが、フルーティーでどっしりとしたワインのニーズも根強いため、幅広いスタイルを紹介している。 そんなワインを、少しずつ紹介していこうと思う。

初回は、<strong>Von Holt Wines (ヴォンホールト)</strong>という サンフランシスコ市内にある小さなワイナリー。夫婦がリタイアした後、立ち上げた。クリス(Chris)は元シークレットサービス、パム(Pam)は元ダンサーという変わった経歴の持ち主だが、ワインにかける情熱は本物だ。そのワインを手掛けるのは、John Fonesという元弁護士の醸造責任者だ。3人に共通するのは、ブルガンディー(ピノノワール、シャルドネ)とローヌ(ヴィオニエ、シラー)品種を愛し、適度に高い酸味と果実味のバランスの良い、デリケートなワインを好むこと。ブドウはソノマバレーの中でも、冷厳な一等畑から 買い付けている。 彼らのワインに出会ったのは、数年前に出席した Family Winemakers of Californiaの試飲イヴェント。当時、某企業の顧問として、日本でのワインクラブの立ち上げに関与しており、質の高いシャルドネを探していた。数百の零細(家族経営)ワイナリーが出店している中で、ヴォンホールトのワインは別格だった。値段を聞くと、小売価格で$38という。高名な$65以上の ワインと比べても、全く引けを取らない質だ。しかも、大手企業やスーパーマーケットブランドの濾過ワイン(磨きすぎて、色ばかりキラキラしている大味ワイン)と違い、フィルターをかけない正真正銘の手作りワインだ。

数日後、SFで彼らのワイナリーを訪問し、改めて味と質を確認した。ワインメーカーのジョンとも会い、ワイン造りの手法と考え方を聞いた。以来頻繁に蔵に通い、彼らのワイン造りを見守るとともに、新しいヴィンテージを試飲してきた。ぶれない味というのは、大切な要素だからだ。ソノマから収穫したブドウが到着する日には、ワイナリーに足を運び、運搬されたブドウの質を確認。彼らの丁寧な選別作業にも立ち会った。こういう時間を共有しながら3人の人となりと、日本に進出する夢が本物か、自分なりに観察してきた。そして、彼らの作るワインを順次日本に紹介している。今回紹介するワインは、アメリカでは直接Vonholtwines.com のウェブサイトで購入できる。ちなみにピノノワール、シャルドネはWine Enthusiastの90点台の高得点の他に、日本の国際ワイン品評会(<a href=”http://www.sakuraaward.com/jp/result/2017.html”>Sakura Japan Women’s Wine Awards 2017</a>)ではそれぞれダブルゴールド、シルバーに輝いた。ワインメーカーのJohn Fonesの個別銘柄のホワイトブレンド(Cellars 33 The Betty 2015)も同品評会でゴールドを受賞し、その質の高さが認められた。尚、<strong>Cellars33 (セラーズ33)</strong>のワイン(https://www.cellars33.com)も日本市場に紹介を始めた。

Von Holt Winesの推奨ワインとアメリカでの価格は以下のとおり。Suacchi Piot Noir $44 (ダブルゴールド), Sonoma Coast Piot Noir $35, Heintz Family Chardonnay $35(シルバー。白ワインだが、無濾過ワインなのでデカンタを勧める)Viognier Tera Alta Vineyard $25(日本食と寿司の相性が抜群)Syrah Halcon Vineyard $30(来月公開)各種の辛口ロゼ$20

また、Cellars 33お勧めワインはローヌ品種のブレンドも美味しいThe Betty White Wine$26 (ゴールド) ロゼ$20、及び各種ピノノワール$33~$42

(これらのワインの日本でのご購入は <a href=”mailto:info@fcellars.com”>info@fcellars.com</a> へコンタクト下さい。)

ロゼワインの快進撃が止まらない!

昨年「ワイン業界の、次のホームランは何か?」という題名で記事を書いたが、その時に人気のロゼワインを失念していた。というか、ロゼが世界の注目を集めだしてから既に10年近くが経っており、話題性が見出せなかったからだろうか。不徳の至りである。同じロゼでも、いわゆるホワイトジンファンデルやら、ブラッシュワインと呼ばれる甘口のロゼではない。正真正銘のプロヴァンスのロゼである。

 

ロゼの世界的ブームに火をつけたのは、本国フランスとアメリカだ。ロゼといえば美しいサーモン色をした、辛口の南仏プロヴァンスがご本家。フランス人のワイン離れが加速して久しいが、ロゼの売り上げは、白赤ワインの低迷 をよそに上昇する一方で、今ではワインの3割を占めるまでになった。その火付け役は、ミレニアルと呼ばれる1980-1996年生まれの(これは統計者によって多少の差があるが)若者たちで、ビールやカクテルを好むいわゆる「ワイン離れ世代」だ。その彼らが何故ピンクワインに飛びついたのだろうか?

 

幾つかの要因が考えられるが、まずロゼの身軽さだろう 。超辛口から甘口まで何でもあるし、飲みやすいフレッシュさが売りだが、白ワインほど軽くもないし、赤ワインほどシリアスではない。価格帯も3ユーロから15ユーロと手ごろで、夏の暑い盛りにキンと冷えたグラスで飲むとたまらない。それとカクテルのベースとしても面白い。フランスでは特に若い女性に人気が出たようで、南仏の住人や旅行者、そして全仏で売っている手ごろなスーパーマーケットロゼも含めて、大ヒットと成った。フランスは世界で一番ロゼを生産する(7.6 ヘクトリトル)国だが、昨年は需要が上回り(8.1ヘクトリットル)ロゼを外から輸入したほどだ。お陰で、フランスは世界最大のロゼ生産、消費、輸入国となった。ちなみに輸出はスペイン、イタリアに次いで3番目。スペインとイタリアとの大きな違いは、フランスは国内で大量のロゼを消費する国だということ。

 

驚くことに、ロゼ第2の消費国はアメリカで、フランスとアメリカの2国で世界の半分のロゼを飲んでいる。というと、『だってブラッシュワインを沢山飲むからでしょう?!』と言われそうだが、それは過去の話。ワイン文化が定着してきたアメリカでは、ボージョレヌーボーやブラッシュを飲む階層(?)は減ってきている。フランスのロゼの発祥地もリゾート地だが、アメリカでのロゼワイン流行の火付け役は、ニューヨークの避暑地、ハンプトンであった。筆者も現役の金融マンの時に、夏になるとハンプトンに週末別荘を借りて、通ったものだ。経験者ならよく分かると思うが、マンハッタン族が多く滞在するハンプトンでは、ショッピングやレストランに行くとご近所さんや同僚にばったり出くわすことがよくある。要は、同じ人口が週末はビーチハウスに住んでいて、平日は市内に帰って、仕事をしているというわけだ。

 

暑いニューヨークの夏を、ハンプトンで過ごした人たちの間で愛飲されたのが主にフランスのロゼワインというわけ。これだけの話であれば、どこの国でもあることだが、そこはわがニューヨーカー達。夏が終わって自宅に帰っても、ペアリングによく合い、守備範囲の広いロゼを日常的に飲み始めたのだ。更に革新的だったのは、若い男性達がロゼを支持して、わざわざメディアに「男だってロゼを飲む!いや、男らしい男はロゼを飲もう!」と呼びかける始末。まあ、頼もしい。お陰で、全米に広がったロゼブームであるが、今ではアメリカ人のロゼ人口比率は、男女半々近くになってきているとか。

ロゼが流行るには、消費者の支持だけで無理で、生産者及び流通業者のサポート体制が不可欠だ。その点、アメリカはフランスと違い、どんなブドウも育つし、どんな品種を使っても法的に許されるので、すぐにフランスの品質にマッチするロゼを生産するようになった。お陰で今ではどこのスーパーに行っても、プロヴァンスは勿論、国産、輸入ロゼが一年中並んでいる。そうだ、今夜は久しぶりにロゼを飲もう!

 

どうしてコルギンやピーターマイケルのアルコール度数は特に高いのか?

ワインのアルコールってどのくらい高い?と聞かれて、答えられる人は少ないかもしれない。スタイルによるが、5度程度から16度くらいまで様々だ。かつて20世紀に作られたワインなら、涼しいヨーロッパで12-12.5%程度、暖かいカリフォルニアでも13-13.5%と、今に比べてかなり低かった。ところが 今世紀に入ってからというもの、世界的にアルコール度数が上昇し続け 、今では新世界(加州、豪州など)のカベルネやシラーズなら14.5-15.5%なんて当たり前、あのボルドーワインでさえ14-14.5%という時代になった。理屈はこうだ。

 

果実酒(ワイン)のアルコール度数は、材料(ブドウ)の糖分の高低と比例する。要は甘い(糖分の高い)ブドウならアルコール発酵が活発で、高いアルコールを醸造できるわけだ。寒い地域の未成熟のブドウを使えば、その逆になる。だから、フランスやドイツのような寒い国では、ブドウに砂糖を加えて、アルコール発酵を促してきた。 ところがここ数十年、地球温暖化に加速がかかり、ヨーロッパの気温が上昇し続けた結果、ブドウが完熟するようになり、 まるで新世界のようなフルーティーなワインが蔓延するようになった。当然、アルコール度も上昇している。

 

もう一つ の理由に、ブドウ栽培技術の飛躍的な発展がある。 ブドウの樹や土中の、水分や栄養素をモニターし、タイミングを合わせてビタミン入りの灌漑用水を撒いたり、光合成が十分行き届く植樹管理を行うことで、まんべんのないブドウの完熟を確保できるようになった。更に拍車をかけたのが 「ビッグワイン」の流行だ。90年代からアメリカで始まった「どっしりとフルーティーで、アルコールが高い」ビッグワインは、影響力の強い評論家の押しもあり、世界中で流行してしまった。その結果、 十分甘いブドウができる温暖な地域でも、更に糖分を凝縮しようと収穫を遅らせた。こうしてできたブドウは、水分が飛んでレーズン状態になっており、もったりと味が濃く、そのまま醸造すると15.5-16.5%の高アルコールワインになってしまう。

 

さて困った。どこの国税庁でも、アルコール度数と税率の比例メトリックスは一緒で、米国の場合、アルコール度が14%を超えると、生産者に課される税金はワイン一本につきプラス50セント加算される。1万本しか作らない少数生産者でも、ましてや大企業ならその痛手は十分理解できる。そこでワイナリーでは、アルコール度数を飛ばす様々な装置や手段の登場となった。しかも糖分が高いブドウは、当然酸が落ちすぎているので、今度は酸を追加する羽目になる。醸造の理論を知らない素人が、「砂糖を足すフランス、酸を足すアメリカ」などと揶揄するが、砂糖を足すのはアルコール度数の調整のため、酸を足すのは黴菌管理で、甘くするためでも、酸っぱくするためでもない。(最も、味を変えるために加糖、加酸をする醸造家も多々存在するが、これは別の機会に。)

 

こういう「人工的な」醸造エンジニアリングに対する批判は、年々上がっている。本家本元と言われるカリフォルニアやオーストラリアでは、この反動もあって、近年はかつてのヨーロッパのような「エレガントでフレッシュ」、アルコール度が低いワインが台頭してきている。作り手はかつてヨーロッパで醸造を学んだベテランや若手が中心だ。プロの間での評判は高く、かくいう筆者もこういう作り手のワインを好む。とはいえ、どっしり系のいわゆるカルトワイン(ナパの最高級カベルネを少数生産する最高級ワイン)でも、美しいワインはある。(が、値段が高すぎる)。ワインのラベルにはアルコール%の表示が義務付けられているが上記のような理由もあり、あまり信用していない。信用できるのは自分の味覚だ。

 

話の最後に、最近訪れたナパ最高級の(品質と値段)ワイナリーでのお話。3件とも世界的に有名なワイナリーだが、ラベルを見ると15.5%-16%というアルコール度数。思わずニヤッとすると、案内役が「うちは正直にアルコール度を書いているんですよ」とのこと。その心は?「一本450ドルのワインなら、50セントのペナルティーを払うなんて、なんともない!」

 

 

全米のブドウ業者とワインナリーが集結!

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現在 Unified Wine & Grape Symposiumという、米国最大のワイン業界シンポジュウムに来ている。出席者は業界全てのセグメントを網羅する。ブドウ栽培、ブドウ売買、ワイン醸造、ワイン輸出入、販売業者は勿論、農園、醸造で使う全ての機材、機器の生産者、それらを作るためのリサーチ会社や科学者、学者、またワイン業界に特化している銀行や保険会社など、まさにワインの世界が一堂に会する最大の機会だ。3日に渡り、カリフォルニア州都サクラメントで1月下旬に開催される。毎年ジャーナリストとして招待され、最も新しい情報とテクノロジーを取材するという名目で、しっかり勉強させてもらっている。

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広大な会場には、数千のブースが並び、見本を見ながら使い勝手や値段などの質問ができる。例えば、新しいブドウ農園の立ち上げを考えている顧客のために、農地管理会社のブースに立ち寄り、その足で新しい苗を扱うナーサリーや、最新のトラクターなどの展示ブースを見て回る。オーガニック栽培に興味を示す顧客には、天敵を退治する鷹を貸し出す業者のブースに足を向け、話を聞く。また、日本向け輸出を企画する顧客のために、魅力的なパッケージングを探し、輸出入保険の業者からパンフレットを貰う。勿論、最新のトラクター、収穫機、ブドウ圧搾機なども見て回り、いま流行りの味わいを作り出すというイースト菌の見本や、フランス製の樽の価格の変遷、大手化学企業の商品の案内をゲットしたりする。

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こうした展示会の他に、専門家のセミナーが目白押しで、シンポジュウムの目玉である『アメリカと世界の動向』というアップデートを、毎年楽しみにしている。ワインメーカーとブドウ栽培者のためのレクチャーもぎっしりと詰まっており、タイムリーなトピックが多く、はずせない。悩みは同時に開催されるので、全てに出席できないこと。そこで人海戦術となる。要は知り合いと手分けをして、違うセミナーに出席し、後で情報(録音など)を交換するというわけだ。今年の注目は、農園における作業のオートメ化だ。間違って大統領になってしまったトランプ氏の、メキシコ人労働者に対する厳しい姿勢は、メキシコ人頼りのカリフォルニアのワイナリーを脅かす。どのような移民政策を取るかは不鮮明だが、いずれにせよアメリカ労働者の農業離れは加速し続けており、メキシコ人の労働者が確保できなくなるという前提で、農園作業のオートメ化は必須だ。上記のレクチャーと連動して、会場内のツアーも企画されている。例えば、オートメ化された機械の製造会社のブースを回ったり、醸造に使う(ワインを寝かせる)容器ばかりを見て回るツアーもある。

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その合間に、アメリカ各地で作るワインの試飲会場に足を運び、きき酒をしたり、同業者と意見の交換を行う。コーヒーブレーク中に小耳に挟んだ会話に、各地から集まったワインメーカー達が、最も効率の良いアルコール発酵について情報を交換したり、ヨーロッパから参加した出席者が、アメリカの業界についての感想を述べあったりしているのがあった。最も興味深かったのは、アメリカを始めとする、世界のワイン生産地の動向で、トランプ大統領、ブレクシットという不透明要因も相まって、なかなか興味の深い内容であった。今回も会場を歩きながら、膨大な量のパンフレットや雑誌を貰い、帰宅することになる。集めた情報は、向こう1年間の資料として、活躍してくれるに違いな

 カリフォルニアの『レアもの」ワインを味わう Tasting event for non-ABC California wines

「レアものワイン」というと、素晴らしい年(ヴィンテージ)の古酒を思い浮かべるだろうか?或は、滅多に入手できない少量生産の最高級品(スクリーミングイーグルなど)のイメージか?答えは否。『カリフォルニアの』珍しいワインというところがみそである。であれば、カベルネ、メルロー、ジンファンデルや、ピノ、シャルドネ、ソーヴィニョンなど、「当たり前の」カリフォルニアワインは該当しない。そう、この場合のレアものとは、滅多にお目にかかれないブドウ品種で作ったカリフォルニアワインのことである。

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こういう珍しいワインを生産する「つわもの」ばかりを集めた試飲会が、先月開催された。名付けてSeven % Solution。そのこころは、上記の当たり前品種が加州のワイン生産中占める割合93%に対して、「その他の品種」は、ほんの 7%という意味合いである。また、生産者を「つわもの」と評価したのは、土地(畑)代が高い加州で、無名品種を栽培してワインを作るには、多大な勇気と自信がいる。下手な土地でもカベルネやシャルドネを作っていれば、大した質でなくとも、売れるのだ。実際、ナパバレーではあまりカベルネに適さない土地でも、最も高く売れるから、カベルネに植え替えるのが常識だ。嘆かわしいことである。IMG_3033

 

プロのワインバイヤーや、ソムリエ、ワインライターが招かれたこの会の生産者リストを見て、わくわくした。私が最も敬愛するワインメーカー達が目白押しだからだ。あのアーノロバーツ(天才栽培者と天才ワインメーカー、Duncan Arnot Meyers とNathan Robertsのコンビ)を始め、加州を代表するこだわりのヴィニョロン(フランス語で、自分が栽培したブドウでワインを作る人を指す)として名高いMatthiasonご夫妻、マイナーなブドウ品種や面白い手法でワインの実験室的なワイナリーを経営するScholium Project の主催者のAbe Schoener氏など26のワイナリーが勢揃いした。ちなみに、これらの生産者に共通するのは、良心的な作り手であること、ソムリエを始めプロのファンがしっかりとついていること、そしてロバートパーカーなどアメリカの批評家に支持されて来た「ビッグワイン」、糖度とアルコール度が高い「どっしり系のワイン」の対極にある「エレガント系」で、「ヨーロッパの流れを汲む」ワインスタイルといえようか。IMG_3037

 

どんなワインを作っているかというと、例えば、近年ワイン通の間で静かなブームを呼んでいるイタリア品種のリボラジェラ(Ribolla Gialla)、アーネイス(Arneis)、フリウラーノ(Friulano)などの白を始め、ドルチェット(Dolcetto)モンテプルチアーノ(Monteulciano)バルベラ(Barbera)などの赤ワイン、そしてフランスやスペインの品種をつかった美しいワインが光る。個人的 には、仏ローヌ品種のサンソー(Cinsault)100%で作った珍しい赤ワインが好きだ。 本場フランスではブレンドに使われる品種で、ブレンドされたロゼや赤ワインが有名だが、マイナーな品種とされている。ところが、ローダイにはサンソーなどの古木が存在するので、凝縮感の高い単一品種のワインが作れるという訳だ。IMG_3031

 

他にも面白いメーカーが多々おり、全てのワインを紹介できないのが残念だ。サンタバーバラのグラハムタトマー(Tatomer)はちょっと変わり種で、オーストリアで地場のグリューナフェルトリナー(Gruner Veltliner)と人気品種のリーズリング 製造を学び、南カリフォルニアでこれらの白ワインを作っている。こういう品種が美しく育つカリフォルニアで、こだわりの若いワインメーカーが多く輩出するのは、本当に喜ばしいことだ。

こんな仕事を手がけています

ワイン・コンサルタントという名刺を差し出すと、「どんなお仕事ですか?」と聞かれることがままあります。通常はワイナリーに依頼されてワイン作りを指導するコンサルティング・ワインメーカーを指しますが、彼らは、複数のワイナリーと契約を結んで醸造の指導をし、売れっ子になると、世界各地のワイナリーを飛び廻って活躍していることから、フライング・ワインメーカー(Flying winemakers)と呼ばれています。

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私の場合は、ワインメーキングではなく、ワインビジネスの顧問業といえば、分かり易いでしょうか?顧客は日系大手企業が主で、ワイン事業の立ち上げをアドヴァイスしたり、米国の企業とマッチングをしたり、市場調査や説明会を行ったり、現地視察を代行したりします。近年は酒造業種(サントリー、キリンといった)以外の一般法人が、ワインビジネスに関心を寄せているようで、様々な引き合いや依頼を受けます。

 

例えば、隠れた名カリフォルニア・ワインを日本に輸入し、自社のネットワークでネット販売するというプロジェクトを受注。ゼロから立ち上げまでのハードウェアーとソフト双方から支援を行いましたが、販売する ワインは全て「当方のお墨付きのみ」という契約なので、質が高く値段もリーズナブルで、まだ日本で知られていないワインばかりをピックし、同社が立ち上げたネットで自ら紹介し、日本で講演会も開くという契約でした。

 

複雑なプロジェクトといえば、米国でブドウ栽培からワイナリーまでの一環業務を開始したいという企業からのリサーチ依頼。まず日本本社を訪ねて、米国ワイン業界の展望や構造を説明し、先方のバジェットやリターンが現実的に実現可能かなどを擦り合わせ、骨子を立案するに必要な情報収集を行います。その上で候補ワイン地域や畑を視察し、農園建設を専門に取り扱う建設業者や農園管理会社、また地元の農協と面談し、ワイナリー建設に必要な種々のラインセンスや規定の調査、そしてワインメーカーや農園のスタッフの目処をつけるまで、親密に関わって行きます。こういう業務は、聴取だけが目的ではなく、相手のパートナーとしての資質を見極める為に、自身の知識と経験を総動員して当たります。

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以上は典型的な日本からの依頼案件ですが、米国内での依頼は個人事業主が主。大抵はワイナリーから直接の依頼で、日本にワインを輸出する道筋を作って欲しいというもの。また、数十社のワイナリーが日本やヨーロッパでロードショーを行う場合、ワインの批評家として同行取材を依頼されたり、米国に視察にこられた政府や企業人向けのセミナーを米企業から頼まれたり。

 

最近、ちょっと面白かったプロジェクトは、ナパのシャンドン(Moet et Chandonの米国子会社)から受けた仕事。フランス国営放送が作っているドキュメンタリーに、ゲスト出演して欲しいという以来。なんでも、ジャーナリストとワインメーカーのインタビューシーンを撮りたいからと。蓋を開けたら、仏ワインメーカーに対して、インタビューするのは仏男性ジャーナリストと私の二人だけ。お陰で、30分のシーンを撮るのに、丸一日がかりでした。やれやれ。2月の下旬にフランスで放送されましたという報告とともに、ビデオを頂いたけれども、自分のフランス語を聞く勇気がなくて、まだ目を通しておりません。

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さて、最近注力しているのは加州内のブドウ畑の視察。北はソノマから南はサンタバーバラまで足を伸ばして、良い物件を物色中。とはいえ、この記事はヨーロッパに向かう機中で書いており、3月いっぱいはまた欧州各地をどさ回りです。私もフライング・コンサルタントと名乗って良いでしょうか?

 

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マスターオブワインが好んだカリフォルニアワイン Which California wine did MWs pick? (2)

This is follow-up on my previous report on August 16 “Great California Wine….”8月16日にリポートした「日本で手に入らない上質なワイン」の続編をお送りします。

I brought the following 4 wines to Japan because they are not available in Japan market.  The purpose was to share with Mr. Kenichi Ohashi MW, who was just announced yesterday to win the MW designate.  He is in a true sense, the very first true Japanese MW ( born, working and living in Japan).  日本に持参したカリフォルニアワインは以下の4本でしたが、実は8月にワインをシェアーした相手は大橋健一さん。そう、今回(9月7日)日本在住の日本人として初めてマスターオブワインの称号を授与された歴史的な人物です。

 

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2011 Robert Biale Black Chicken Vineyard Zinfandel Napa Valley ロバートビエリ氏は、ナパでジンファンデルの古木畑から美しいワインを作るこだわりの三代目。

2008 Arkenstone Sauvignon Blanc Howell Mountain Napa Valley アーカンストンは、ナパの山AVAのひとつ、ハウエルマウンテンでボルドー品種を耕し、丁寧なワインを作る比較的新しいブティクワイナリー。

2011 Arnot Roberts Bugay Vineyard Cabernet Sauvignon Sonoma Valley アーノ ロバーツは、ワインカントリーの名門ワインメーカーとクーパーの家系に育った二人が、カリフォルニア各地のテロワールを表現するワインを手作りで生み出す新カリフォルニアのホープ。

2012 Stephen Vivier Gap Crown Pinot Noir Sonoma Mountain フランス人のステファンは、カリフォルニアでロマネコンティのオベール ド ヴィレーヌがアメリカ人と共同経営するワイナリーでワインメーカーとして修行(本年から他社に移動)。カリフォルニアの葡萄でフランス風に作るワイン。

 

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Kenichi was not alone as I had a great fortune to share the wines with David Wrigley MW from United Kingdom as he was attending the Japan Wine Challenge as chief Judge.  It turned out that they were good friends. Sitting together was my MW classmate, Mari Yasuda who lives in Japan.

大橋さんと一緒に、当方が持参したカリフォルニアワインを試飲されたのはイギリスのマスターオブワインで、私が参加したジャパンワインチャレンジのチーフ審査員でもあるデビッド リグリーMW。お二人はとても親しい間柄のようで、もう一人の私の友人でMWに向けて一緒に勉強している安田まりさんと4人で味わいました。

The winner of the night went to Arnot-Robert’s cabernet sauvignon as two of the MWs really enjoyed the elegance and restraint which differs from the big Napa Cab.  They pick grapes earlier when it is still fresh with good acidity and vinify it without over-powering with oak.  この夜二人のMWが「とてもおいしい」と共感されたのが、アーノロバーツがソノマの葡萄でつくるエレガントなカベルネ。ナパのどっしりとした「アメリカスタイル」とは一線を画し、フレッシュな酸味とカベルネ品種の性格が尊重されたワインです。

I was impressed with the choice by Kenichi and David as this is the wine most Masters of Wines, Master Sommeliers and wine lovers with international taste cherish though other three wines are equally reputed but with slightly more American flavors.このチョイスには、私も同感すると同時に、彼らの「舌」(味覚)は、クラシック(ヨーロッパ基調)なのだと納得。このワインは、アメリカではやはり業界のトップ(MW、MSなど)に愛されているワインです。他の3本もエレガントで秀逸ですが、カリフォルニアの凝縮感を感じるワインです。

There are so many styles of wines in California, unknown to outside (Japan/UK included) since great wines with small productions do not leave California.  It is my mission to bring such wines to your table, to share what California is capable of.  カリフォルニアでは様々な美しいスタイルのワインが作られていますが、少量生産のものが多く、なかなか加州から外に出ることは少ないのですが、こういうワインを紹介することも、私の仕事だと思っています。

It was such a pleasure to introduce these wines to our new MW in Japan.  Congratulations, Ohashi-san!

今回、こういうワインをご紹介できて、とても嬉しく思います。そして、改めて。「大橋MW、おめでとうございました!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日本で手に入らない上質なカリフォルニアワイン!?”Great California wine” unknown in the Japan Market (bilingual article)

What would you bring to Japan when you are asked to introduce ONE high quality California wine that is not seen in the Japan market?  先月日本に品評会の審査などで、出張した時のこと。日本在住のあるトッププロに、こんな依頼を受けた。「サンフランシスコにお住まいの斎藤さんがお勧めする高品質で、日本で入手できないカリフォルニアワインを一本ご持参頂けますか?」さあ、困った。

The initial thought would be to define” high quality” wine.  My reasoning was following.  “High quality “for him” would be the same common denominators among MW/MW students which are the BLIC:”balance, length, intensity, complexity” while the wine must express the sense of place (terroir).  That definition forced me to exclude by default,”high Parker Point wines (which tend to have the SAME traits of over-ripeness though good quality) and ” CULT wine” (for the same reason and it typically does not represent terroir but winemaker’s style).

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そこで、『高品質』と『日本で入手出来ない』という部分を自分なりに定義づけた。MWの候補者で、ヨーロッパを中心にMW達と世界中の品評会などで活躍する同氏にとって、品質の定義は私と同じく、『「ワインの持つバランス、余韻の深み、凝縮度合い、複雑味」に加えて、テロワールを表現しているもの』であろう。これは同じプログラム(WSET, MW program)で勉強して来た世界のワインのプロ達の共通言語である。この伝で行くと、当然PP(パーカーポイント)の高いワインや、カルトワインは除外せざるを得ない。何故なら、そういうワインは質こそ高いが、高得点を得る為にブドウを凝縮して作る為、似たり寄ったりの味に落ち着いており、テロワールの表現からはほど遠い、「ワインメーカーの手腕の結果ワイン」ばかりだ。

My dilemma was to choose just one wine among SO many such high quality California wines.  Napa alone has over 600 wineries, so does Sonoma.  Including other high quality regions of Santa Cruz, Santa Barbara, Paso Robles, etc, how can I choose ONLY ONE wine to take?

問題は「一本」ご持参下さいという点。ナパやソノマだけでもそれぞれワイナリーは600以上在り、同じくハイクオリティを生産するサンタクルーズ、サンタバーバラ、パソロブレスを考慮するときりがない。

OK.  He said in his request, ‘because it would be difficult to bring wine being so heavy through the flight, would you please bring ONE bottle?”  That means I CAN bring several if I don’t mind it.

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ちょっと、待てよ。同氏は依頼書で「重いワインをご持参されるのは大変でしょう。一本だけ、、云々」とおっしゃっていられた。ということは、私が気にならなければ、一本以上持って行っても良いのだ!と、気がついた。は〜。

The yardstick I really wanted to stick to (no pun, intended) was the wines produced by American vigneron, not just winemaker in the cellar.  Obvious ones such as Ted Lemon’s Littorai Pinot Noir would be no brainer as any professional wine critic should certainly know and enjoy his wines.  So here is my line-up of wines that I chose.  Can you tell me which wine(s) were the hit with him and an English Master of Wine who also shared the tasting my wines together?  (to be continued)

私が固執した『ものさし』は、ブドウ栽培とワインメーキングの両方を司る”ヴィニョロン”(仏語で、英語に訳すと”winegrower”となる)。人の作ったブドウを買って、自分の蔵でワインをつくるいわゆる「ワインメーカー」を選外とした。最初に浮かぶのが、リトライのオーナーのテッドレモン。バイオダイナミック製法で畑を耕したブドウでピノを作る職人だが、有名過ぎる。ということで、以下が私が選んだワイン。このうちのどのワインが最高の評価を得たと思われますか?ちなみに味わったのは同氏の他に、日本来訪中のイギリス人のマスターオブワインも一緒でした。(ワインの説明と答えは次回)

2011 Robert Biale Black Chicken Vineyard Zinfandel Napa Valley

2008 Arkenstone Sauvignon Blanc Howell Mountain Napa Valley

2011 Arnot Roberts Bugay Vineyard Cabernet Sauvignon Sonoma Valley

2012 Stephen Vivier Gap Crown Pinot Noir Sonoma Mountain

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「斉藤ゆき」の名を冠したブドウの木が誕生しました

ワインを紹介する仕事をしているので、毎年(毎月?)世界中のワイン地域を訪問しています。仕事と勉強のためには、単に数多くのワイン畑やお蔵を廻るだけでは不備で、いくつか決まった畑とワイナリーを選んで定期的に訪問し、何年、何十年と追跡調査をして、自分なりの「指標」というか、小宇宙を築いています。

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地元カリフォルニアのなかでも、ナパバレーは80年代から(つまりはNYで金融マンだった頃から)一番足繁く通ってきた場所。なかでも、わたくしのお気に入りは、当たり前のキャッシュクロップであるカベルネ一辺倒ばかりを生産するの大手ワイナリーではなく、昔から何世代にもわたって自社農園を耕し、家族で一生懸命にブドウを育てて、ワインを作り続けている家族経営ワイナリー。こういうブドウ園はとても古いブドウの木が多く、ブドウ品種もさまざまでなかなかおいしいワインを作っています。

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ある日、そういった畑をワインメーカーと視察していたところ、どっしりとした立派な古株ばかりのブロックに遭遇し、その内の一株(ブドウの木)がとても気に入って、「これを私のブドウの木として、今後の成長(というか老後?)の変化を、取材したい」と申し入れたところ、快諾して下さいました。

 

(チャイルズヴァレーAVAにあるニックリーニファミリーの畑)

 

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その後は、こちらも欧州や豪州などの取材で地元を留守にすることが多く、過日やっと再訪し、そのブドウの木と再会。2月に出会った時は、いかにも老木らしくどっしりとした太い幹が印象的でしたが、7月の今では葉が生い茂り、更に威風堂々たる恰幅。この畑を所有するワイナリーはニックリーニ(Nickeline)ファミリーというナパでも最も古いファミリーワイナリーのひとつで、現ワインメーカーのエイミーさんは、7代目ニックリーニ。

ファミリーの7代目に当たる現ワインメーカー、エイミー氏IMG_4486

 

7月15日の訪問時には、私の名前を冠した札(写真)を用意して待っていてくれ、正式な「戴冠の儀?」を行って下さいました。畑はナパバレーAVA(ブドウ栽培地域の略称)の中のひとつ、チャイルズバレーAVA内の標高300メートル程の中腹にあります。この木はボルドーの白ブドウ品種、ミュスカデルで、何と70年前に植樹したもの。昔のナパでは、このようにいわゆる「ブッシュバイン」といわれる棚の支えがない「独り立ちのブドウの木」が普通でした。ただ、古木なので太い棒を横に一本打ち、支えています。

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この畑のミュスカデルの古木から作る白ワインは、ふくよかなフルーティーさと、心地よい酸味が同時に存在する一品で、良く冷やして飲むととても味わい深い夏にふさわしいワインです。いずれ皆さんに、ご紹介する心づもりでおります。お問い合わせあ、当方 yuki@wisteriawine.comまで。

 

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