ナパ=ブドウ栽培地域とカベルネ目隠し試飲会(2)

目隠試飲が始まり、最初に口に含んで、最初に不思議に思ったのは「何故、典型的などっしりとしてフルーティーなナパのカベルネが少ないのだろう?」ということ。当たり前のラザフォード、オークヴィルのキャブ(カベルネ)は標高ゼロ地域で、パワフル、フルーティーでまろやか。今回のフライトに、これらが混ざっていてもせいぜい1本だと想定されるのですが、それにしても10本のうちの4本までが通常より自然の酸味が高く(ナパではオーストラリア同様、ブドウをかなり熟してから収穫するので、糖分が上がる分、反比例して自然の酸が低くなるため、ワイン醸造時に加酸する)、全般的に果実味が抑えられていて、まるで昔(80年代まで)のナパのカベルネのように、筋肉質。いまでも、こういうワインを多く輩出するAVAはマウント・ヴィーダー(Mount Veeder)なので、ちょっと悩みました。

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試飲の途中で、ヒントとして、ワインのヴィンテージは10年から12年にまたがっていること、全てのワインが違う栽培地域のもので、カベルネ・ベースのワイン(つまり100%から最低66%まで)の差があると教えられて、納得しました。というのは、寒い年で収穫時に大量の雨が降った11年のナパのカベルネは、線が細く(ブドウが何時ものように、フルに完熟せず、酸味が高めだったり、凝縮度が低かったり)通常年よりワインの出来映えが軽めで、ボルドーを彷彿させる青臭さ(といっても微量)が存在します。

 

また、10種類のワインのうち、明らかにメルローが混ざっているものや、カベルネ・フラン、或はプチ・ベルドーがブレンドされている物の味と色の違いが歴然としています。自分なりに結論づけた一覧表を作成し、皆で票を投じます。

 

まず、標高が高いブドウで作ったワインから並べて行きますが、ワインの色が濃い。タンニンが相当高い、果実の凝縮度が高いなどと、その理由をあげて行きます。

 

一番色が深いワイン(#10)を指してデイヴィッドが、「何故このワインだけがこんなに深い紫なのだ?」という問いがあり、まずは挙手をして意見を述べました。曰く、「これはプチ・ヴェルドーがかなりブレンドされている。色と同じく、味わいもはっきりPVの性格が強い」。勿論、生産年の違い、標高の高さなども鑑みましたが、このワインだけは特出した深い紫で、どう考えてもカベルネの色でも、味わいでもない!との自分の結論でした。「ゆき、お見事!」とこれが正解。

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ちなみに、当日試飲した10のカベルネ(ブレンド)の一覧と、銘柄を知らされずに目隠し試飲中で、自分が持った感想を添えます。(次号にて)

ナパ=ブドウ栽培地域とカベルネ目隠し試飲会(1)

14年9月8日 @Wine Institute, organized by San Francisco Wine School in association of Napa Valley Vintners

 

本日は、権威あるワイン・インスティテュート本部(サンフランシスコ市)を会場に、サンフランシスコ・ワインスクール学長のデイヴィッド・グランシーマスターソムリエ(David Glancy MS)が、ナパ・バレーAVAのレクチャーと目隠試飲会を開催。ナパ・ワインを販売、評論する専門家が招かれ、その一人として出席しました。

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デイヴィッドは、過去に私がCourt of Master Sommeliers のCertificationコースを受講、受験した際の講師でもあります。また資料などを提供したNapa Valley Vintners(NVV)のEducation Marketing Managerのマイケル・クーパーマン氏も同席。NVVは言うまでもなく、ナパ・バレーでワイナリーを営むブドウ農家、ワイン生産者が作る強力な団体で、世界的にも有名なナパ・バレー・オークションを毎年運営。地域の環境管理やナパ・ワインのプロモーションなども手がけるナパ・ワインのロビイストでもあります。

 

本日のテーマは、「ブドウ栽培地域の標高差が反映する、ワインの味わい」。ナパバレーには16のAVA(アメリカブドウ栽培地域=American Viticultural Area)が存在(ナパ郡としてみた場合は17)しますが、海抜ゼロメートルから標高700メートル強までと、そのブドウの栽培環境は多様。勿論、100以上存在するといわれる土壌/地質の違いや、霧や風の影響、丘の斜面角度、日当りなど、他のテロワール要因は多々有りますが、それらを踏まえたうえで、今回のテーマは標高の高低がワインにもたらす影響に絞っての試飲。

 

ナパといえば、カベルネ・ソービニョンが代表格。目隠し試飲した10種のワインは、すべてカベルネをベースにした赤ワインですが、残念なことに、ヴィンテージが3年(2010, 11, 12年)にまたがっていること。とりわけ11年はカリフォルニアワイン史上、唯一にして最悪のヴィンテージでもあり、10年も比較的涼しい年だったこともあって、同じワインであっても出来映えがかなり違うので、比較対象としては余りフェアーと言えない感があります。

 

また、10のワインは全て異なるAVAで作っており、既にテロワールの違いがワインに反映されています。ピュアーに標高差からくる味わいの違いを検証するのであれば、同じ地域(例えばHowell Mountain, Spring Mountain といった同じAVA)の、同じヴィンテージで、標高だけが違うワインを用意すべきでした。

 

とはいえ、それでもこういう機会は稀。出席者は一様に10のワインを目の前に、ブドウ品種(100%カベルネからボルドーブレンドまで様々)、ブドウ栽培地域(AVA)そして標高の違いを、自らの舌と経験、そして理論をベースに評価させられます。

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ボルドー研修旅行 (その3)

午前中に数件のマルゴー在シャトーの見学を終え、ランチはシャトー・マルゴーの畑を見ながら、パビリオン・ド・マルゴーでの優雅な昼食。カリフォルニアでは動物愛護の観点から、愚かにも 販売が「禁止」されている「禁断のフォアグラ」を思う存分、ワインとともに楽しみました。

 

さて、午後はマルゴーの北に隣接する、サン・ジュリアン(S J)を訪問。S Jは、グラン・クリュがひしめくオー・メドックの4つのアパラシオン(マルゴー、サン・ジュリアン、ポイヤック、セント・エステフ)の中でも、グランクリュ(前出の1855年ボルドー格付けによる)の占める割合が、一番高いアパラシオン。全生産量のなんと80%がグラン・クリュの作るワインでしめられています。

 

一級格付けシャトーはいないものの、「スーパー・セコンド」と言われる、一級シャトーに迫る第二級格付けシャトーの実力者が複数存在する、質の高いアパラシオン。今回は2つのスーパー・セコンドを訪問しました。

 

まずは実力者の筆頭ともいえるシャトー・デクリュー・ボーカイユ(Decru Beaucaillou, DB)というなが〜い名前のシャトー。Beauは、フランス語でハンサム/美しいという意味で、Caillouは小石。その名の通り、最高品質のカベルネソーヴィニヨンと作るといわれる、水はけの良い砂利や小石が表面を覆う地質です。ワインメーカーにとっては正に「ハンサム/美しい」石でしょう。

 

さて、じゃりじゃりと砂利道を(だじゃれ!)歩くこと、5分。庭の裏手に廻るとシャトーの美しい全容が見えて来ます。「えっ、なんで裏に正面玄関があるの?」と思いますが、それはボルドーの歴史と関係あるのです。(それは次回に)

シャトーの「正面」でブルーノとIMG_7125

ヨーロッパでも仕事をしています(4)

ロンドンでのワイン品評会の審査の仕事と、マインツでのイヴェントの取材を終え、フランス入りしています。この2ヶ月ヨーロッパで今回一番長く滞在するのがフランスですが、通しで滞在するわけではなく、出たり入ったりと目まぐるしいローテーションです。

 

まずは、パリに入り、レンタカーを借りて高速道路をとばすこと約一時間。鮮やかな黄色い菜の花が一面に咲き誇る美しい春の風景を楽しみながら、数十キロを過ぎる頃に、真っ白な石灰岩の土壌が現れます。そこがシャンパーニュの入り口。

 

キメリジアン土壌と呼ばれるこの有名なシャンパーニュの土は、古代の海底が石化したもので、よく見ると細かい貝殻も見て取れ、外から見るとまるで雪が降ったあとのよう。当然、シャンパーニュハウスの地下の土蔵は、同じ土、壁も床もチョークで出来ているので、湿気を含んでおり、質が柔らかく、爪で引っ掻くと簡単にはがれます。

 

今回の訪問の目的はふたつ。カリフォルニアで素晴らしいスパークリングワインを作るローデラー エステート(Roederer Estateルイ ローデレールの米国子会社)とドメイン カーネロス(Domain Carnero同じくテタンジェ)のトップがアレンジして下さった仏親会社の訪問と、いま注目を浴びている「テロワール シャンパーニュ」を作っている小作農家の取材です。

 

最初の訪問先は、私も大好きな「クリスタル」のローデレール社。こういう大手のネゴシアンは、シャンパーニュ地方の2大都市、ランスかエペルネのどちらかに本社を構えていますが、ローデレールもテッタンジェもランスの町中にあります。

実はこの日はバタバタとパリを出発したので、朝ご飯も昼も食べ損ねており、何と最初に口にしたのが2006年のクリスタル!これって、究極の美食朝ご飯ではないかしらん!クリスタルが朝ご飯!

ローでレール社のシャンパーニュ

ルイローデラー本社

ヨーロッパでも仕事をしています(2)

ロンドンでのワイン審査の仕事を終え(とはいえ、この品評会は9月の初旬までずっと世界各国のワインの審査を続けています)、そのまま金曜日の夜にフランクフルトまで飛び、更にライン川方向に向かい電車で30分。美しい古都マインツに来ています。今回はドイツで最高品質ワインを作っているワイン協会(VDP)の招聘で、2013年度のヴィンテージの発表会などに出席し、またジャーナリストとしてワイナリーの訪問や交換会などに出席しています。

夜中に到着したその翌日の朝9時には、ホテルまでバスのお出迎えが有り、早速世界中から集まったジャーナリストと一緒に、ラインヘッセン(ドイツ最大のワイン地域)の畑やワイナリーを視察。早速種々のワインを試飲しました。

 

ラインヘッセンの畑

 

 

いまホワイトアスパラガスの季節(しかもこの旬は短いとか)なので、ランチは早速アスパラガス三昧。グリーンのアスパラと比べ、苦みが低く、噛むと甘みが出て来る絶品で、定番はこれをゆでたものをバターソースで頂くとのこと。その際にはホクホクの新じゃがを添え、できればハムと食べると良いとのこと。

これと一緒に飲むのが、ドイツ人がカジュアルにのむシルヴァナーという白ワイン。リーズリングより辛口で、キレがよく、シンプルですが爽やかなワインです。薦められるまま皆で楽しみましたが、流石に相性もばっちり。

ドイツの春の旬、ホワイトあるパラがすドイツ人が好んで飲むお気軽ワイン、シルヴァナー

日本でカリフォルニアワインの講演会を開いて来ました

今年は一月に、東京各地でワインの講演会を開いて参りました。企業に招聘されたもので、未だに日本で苦戦を強いられているカリフォルニアワインの素晴らしさを、日本の消費者に教えて欲しいという主旨。

 こちらも久しぶりの日本なので、早めに到着し、色々な地域の酒屋、スーパー、ワイン専門店などを廻ってまずはマーケット調査。そこで感じたのは、今でも日本はちょっと歪んだくらいフランスワイン寄りだということ。とはいえ、アメリカ、オーストラリア、チリなどの新世界のワインが、以前よりかなり出回っており、 価格が国際水準により近くなっていること。また、長年のデフレ効果と不況のせいか、日本人がよく飲むワインは、千円前後が一般的とのこと。

 問題は、一般の酒屋やスーパーでアメリカワイン(ほとんどがカリフォルニアワイン)が占める割合は、1%にも満たないこと。ローカルな酒屋さんは全くアメリカワインを売っていないところも多々あり、酒と焼酎の合間に、フランス、イタリア、チリに、すこしの国産ワインという印象が強く残りました。

 アメリカワインが唯一充実している店は、麻布や六本木といった外国人地域、或は富裕層が多い住宅地の「ハイエンドスーパー」のみ。それでも全体の2割といったところでしょうか。以前のように当たり前のモンダビ、コッポラ、カレラなどの有名どころの他に、ぼちぼちと優良ワインも進出し始めてはおりますが、まだまだの感があります。

 こんな状況を予想して、講演会のため日本に送ったワインは、どれも印象的なワインばかりを選びました。手作り感があり、地元以外であまり知られてない少量生産のワインで、カリフォルニアらしい特質を感じるもの。この記事の性格上、ブランドは言えませんが、品種はフィルターをかけていないシャルドネにピノノワール、価格高騰のナパではなく、他の優良地域の有機栽培のブドウからつくったカベルネやボルドーブレンドなど。また、どっしりと重いジンファンデルの代わりに、エレガントで食事にあうジンファンデルなどなど。勿論シャンパーニュにひけをとらないアメリカのスパークリングワインも入っています。

 講演会では、スライドを使って分かり易く丁寧にそれぞれのワインの出身地や生産法などを説明し、一番おいしく飲めるワインの保存や温度も伝授。出席者(100人 )には普通のワイングラスと、大振りのブルゴーニュグラスを持ってもらい、実際にシャルドネやピノを両方のグラスから飲んでもらって、グラスの形と大きさがどれだけワインの味に影響を及ぼすかなどをデモンストレーション。これには、出席者からかなりの反響があり、講演終了後に色々な方から「明日早速グラスを買いに行きます!」というコメントを頂きました。

 IMG_5401プロのカメラマンが撮った、講座中の出席者の写真を見ると、9割が40台以上の男性でしたが、目を輝かしながら講義を聴いて下さっている様子や、しっかりとグラスに向き合い、試飲をしている感じが伝わって来て、感動しました。かなり多くの方から「今日飲んだカリフォルニアワインは全て、本当においしかったです!」「こんなおいしいワインは始めてです」というコメントを頂き、日本でのアメリカワインの潜在能力に改めて、自信を持って帰国しました。

お祝い用ご贈答ワインはこれでばっちり!

お誕生日や記念日は「泡もので乾杯!」が定番。でも値段ばかりが高くなるフランス産のシャンパンではなく、質が高く、値段がリーズナブルなカリフォルニアのスパークリング・ワイン(SP)がおすすめ!

 

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スーパーで買える格安銘柄でさえ、近年は質の向上が素晴らしく、ニューヨーク・タイムス紙を始め、数々のリビューで高い評価を受けています。中でもおすすめは、欧米の目隠し試飲で常にシャンパンと同等以上の評価を受ける以下の3銘柄。

 

まず純国産メーカーの老舗シュラムズバーグ(Schramsberg)。昔ながらの手作りシャンパン製法で作る質の高いSPは、40ドル前後でロゼは勿論、品揃えも豊富。最高級のJ Schram(110ドル)は、ホワイトハウスの晩餐会で振る舞われています。

 

次に仏シャンパン・ハウス、テッタンジェ(Taitinger )の米国子会社、ドメーン・カーネロス(Domain Carneros)。ここは観光スポットとしても大人気ですが、 地元カーネロス特産のシャルドネをベースにつくるSPはキレがあり、品よくフルーティーで、お値段も30ドル前後とお買い得。最高級品の『夢』(Le Reve)は、100ドルの高級品ですが、シャンパンと比べて全くひけをとりません。

 

最後のイチ押しは、クリスタルで有名な仏ルイ・ロデレールの米国子会社ローデラー・エステート(Roederer Estate)が誇るブリュット(Brut)。 柑橘類、ピーチ、リンゴの深い味わいが、キレのある酸味とともに口中に広がる絶品ですが、何とスーパーで20ドル以下!最高級ブランドのエルミタージュ(Hermitage)も45ドルと格安ですが、何と最近の目隠し試飲で親会社が誇るあのクリスタル(300ドル前後)を抜いて一位になったそうです。ということで、お祝い事やご贈答にはカリフォルニアSPを!

こんなワインはオリジナルなギフトに最適!

以前にブログで「パリの審判」についての記事を書きました。それでふと思ったのは、「典型的な」或は「歴史的な」カリフォルニアワインを贈答したいと思った場合に、「パリの審判ワインセット」なんていうのが有っても良いのでは?と思い至った次第。

 そもそもカリフォルニア・ワインが、ボルドーやブルゴーニュと並んで、世界最高峰と認知されたのは比較的最近の話。そのきっかけとなった1976年の『パリの審判!』(Judgment of Paris)といわれる目隠し審査で、当時無名だったカリフォルニア・ワインが、並みいる フランスのシャトーを凌駕して、赤、白ともに最優秀賞に選ばれたばかりではなく、上位を総なめしたのでした。

 世界最高峰のブルゴーニュの白ワインを排して、シャルドネ部門で優勝に輝いたのは「シャトー・モンテリーナChateau Montelena」。今も実在するカリストガの老舗ワイナリーですが、実際にこのシャルドネを作ったのは当時のワイン・メーカーだったマイク・ガーギッチ翁。そうです、あの現ガーギッチ・ヒル(Grgich Hills)のオーナーで、故ロバートモンダビ氏と並ぶナパ・ワインの父。90歳を過ぎた今でも、オーガニックのブドウ畑を歩き回り、あのシャルドネを始め、ナパ独特のフュメ・ブランクFume Blanc(ソーヴィニヨンブラン)など、クリーンで美しいワインを作っています。

 その他に入賞したシャルドネは、上位からChalone Vineyard、Spring Mountain Vineyard、Freemark Abbey Winery、 Veedercrest VineyardsにDavis Bruce Winery。ガーギッチを始め、皆リーズナブルなお値段を維持しているのは、嬉しい限りです。

 赤ワイン部門で並みいるボルドー・シャトーを押さえて優勝したのは、 スタッグズ・リープ・ワイン・セラーズStag’s Leap Wine Cellars。今でも、古き良きナパのエレガントなカベルネを作っていますが、おなじカエルの名とレベルのついたFrog’s Leapと間違えないで下さいね。

 他に入賞したワイナリーはRidge Vineyards (Monte Bello)、Heitz Wine Cellars (Martha’ Vineyard)、Clos du Val Winery、Mayacamas VineyardsにFreemark Abbey Wineryとすばらしい老舗がずらり。リッジとハイツは、モンテベロとマーサズ・ヴィンヤードという単一畑の銘柄が優良。サンタ・クルス在のリッジは日本の製薬会社が保有するワイナリーですが、古木から作るジンファンデルが有名です。 白赤と揃えて「パリの審判ワイン!」として贈るなんて、ちょっとおしゃれじゃないですか?

 

ソムリエの資質と資格

Court of MSのソムリエバッジ

前回のコラムでは、レストランでソムリエを使おうと推奨しました。とはいえ、一概にソムリエといっても、有資格者であるのか、叩き上げで自己流に勉強した人なのか、ワイン好きのコレクターが店を経営しているのかなどで、アドヴァイスが微妙に変わってくることも確か。

 

そこで今回はソムリエの資質と資格について、お話ししたいと思います。ソムリエとはワインを専門に扱う給仕であり、スピリッツのプロ(で有るべき)バーテンダーと良く似ています。 但し、有資格のソムリエと名乗るには相応の理論と試飲の勉強を重ね、資格試験に合格する必要があります。

 

アメリカでソムリエを認知、管理する最高権威は、Court of Master Sommeliersという国際機関。ロンドンに本部が有り、最大の規模を誇るアメリカのソムリエギルドを始め、世界各国の組織でソムリエの育成講座や資格試験を行っています。(日本には、英語圏の組織の為か支部はなく、日本ソムリエ協会という社団法人が、日本専門の資格試験を実施、管理しています。)

 

正式に、「ソムリエ」と名乗るには、「ソムリエ証書(レヴェル2)Certified Sommelier」という資格が望まれ、 レヴェル1(ソムリエ予備証書)の合格者が受験対象となります。この試験は理論、試飲、実技が要求されますが、受験者が特に緊張するのは、客に扮したマスターソムリエ(MS=レヴェル4の最高位)達の前で行う実技試験。古酒やシャンパーニュなどを手際よく、美しく開けようと奮闘している間にも、MS達は容赦なくワインやペアリングに関する質問を連発します。

 

「今日の魚と肉料理は、どんな調理法で、どのワインとのペアリングを勧めるか?」「自分はイタリア北部の白ワインしか飲まない。」「僕は60ドル以内のフランス産の赤ワインが良い」「私はヨーロッパ意外のワイン 」などなど。世界中の主な生産者や値段を思い起こし、料理にぴったり合う、客好みのワインを瞬間的にセールスするテストです。

 

私自身も持っているこの資格の応募者は、長い間レストランで働き、ソムリエの下で実技を積み、理論も長い間かけて勉強して来た人達でした。但し、私のように、店でワインサービスをすることのないワイン業界の人間も、ソムリエ資格をとるようになりました。

 

このソムリエ証書とソムリエバッジ(写真参照)があれば、どんなレストランでも優遇してくれると言われています。更にワインの給仕を経てレストラン企業の管理職、ワインの顧問業などを指向する人には 、「上級ソムリエ(レヴェル3)」から「マスターソムリエ」の狭き門に挑戦するチョイスもあります。

 

質の高いレストランでは、プロのソムリエ(外注も含む)がワインリストを作成し、シェフと相談しながら、食事との相乗効果を狙ったペアリングを作ります。ワインリストを見ると、プロが手がけたものか、素人が作った物かが一目瞭然となります。

 

どんなにワインに精通していても、素人の作ったワインリストは、自分の嗜好と守備範囲に偏る傾向にあり、店の食事との相性を優先せず、独りよがりのきらいが残ります。

 

ソムリエの資質は、まだ知られていない、コストパフォーマンスの高い、客の喜ぶ素敵なワインを探し出し、割当を確保する力量にかかってきます。 勿論、「店にふさわしい」ワインを一通り揃えた上での話です。

 

ソムリエを呼んで貰ったときは、まずバッジの有無を確認します。未資格者が「ソムリエ」として客に接する店は黄信号。「うちにはソムリエはおりませんが、自分が説明出来ます」というのが、正しいアプローチです。給仕に店の料理を試食させない店は、赤信号。料理もワインも味見させずに、暗記したセリフをしゃべらせる店を、あなたは信用できますか?

アメリカにグランクリュ(Grand Cru)有り!

ソノマが誇るチャルドネの古木

ヨーロピアン・ユニオンが確立される以前は、本家本元ワインの名前を勝手に拝借して、安かろうまずかろうワインを売る業者が、 世界中に蔓延していました。「シャブリ」「シャンペーン」なんて言う名前で、本場フランスの本物とは、似ても似つかないワインを安く売り、買う方も深く考えず、泡がたっているワインはシャンペーンと呼ぶのだと、思い込んでいたようです。(尤も、この手の非常識は今でも正されていないようです)

 しかしEUが一枚岩になって、この手の「濫用」を取り締まり、「本物」と「にせもの」を規制するようになりました。とはいえ、未だに「シャブリ」はアメリカ(チリや日本)でも、生産される口当たりのよい白ワインだと、大きな誤解をしている人もいるようで、ワインの常識を正す必要がありそうです。

 「シャブリ」というのは、フランス北部シャブリ地方の、限定された畑で栽培されたシャルドネ種100%の白ワインのこと。「シャンパーニュ」は、これもフランス北部の限定地域で栽培されたシャルドネ、ピノ・ノワール 、ピノ・ムニエのぶどう種をベースに、「シャンパーニュ製法」によって醸造された発泡酒のこと。双方とも、仏ワイン法によって植樹密度から収穫日、収穫法までびっしりと規定、管理されています。

 だからこそ、目隠し試飲でもそれと分かる本家本元の「典型風味」があります。例えば、シャブリであれば「 非常に高い酸味でキレがあり、 旨味成分を感じる高いミネラル分を含んだアルコール分11度から13度程度の、硬質なシャルドネ」で「長年寝かしたヴィンテージものは、レモンやライムといった柑橘類の香りより、マッシュルームや土の匂いが深くなる」といった具合に。

 こういう「常識」をベースに、例えばスーパーで売っている米国産「シャブリ」を飲んでみると、「甘い(酸味が低い)、 ミネラル分不在でアルコール分が高い(あり得ない)そして安い(例えば大瓶で5ドルとか!)」という別物であることが、分かります。

 ところが、近年ワインの世界でも「超国際化」が進み、新世界でもシャブリに近いシャルドネや、本家本元の典型に近いワインを作るまでになりました。毎週定例の目隠し試飲会でも、 「新世界」と「旧世界」のワインを取り違えるプロが続出します。それでも結論として出席者が納得するのは、「典型」を理解しているからこそ、「ああ、ソノマのシャルドネもここまで進化したか!」と「評価」できる訳です。

 もっとも、既に世界的なレベルに達している秀逸なナパのカベルネ、品の良いソノマのシャルドネ、ミネラル分の高いサンタクルーズのピノ・ノワールなど、よりどりみどりの「アメリカ産グランクリュ」を楽しめる世代は、既に本物からスタートしているのかもしれません。

実際、近年のアメリカワインの質の向上には目覚ましい物があります。上記の世界的レヴェルに達しているワインの他にも、ニューヨーク州のリースリング、ワシントン州のボルドー、ブルガンディー品種(カベルネ、ピノノワール、シャルドネなど)に加えアスザス品種(ゲバルツトラミナール、ピノグリなど)の質の向上も目覚ましく、更にオレゴン州のピノは勿論ボルドー品種、そしてカルフォルニアでは全州各地でテロワールにマッチした様々な品種を育て始めています。

カリフォルニアのブドウの木は、植樹から既に数十年経っている物が増えて、成熟期に入っており、今後の更なるワインの質の向上が見込まれ、本当に目が離せない地域です。

 と偉そうに講釈しているわたくしの場合、かれこれ数十年も前に、 ニューヨークで学生時代を送っていた当時は、スーパーマーケットにいそいそと通い、2ドルの大瓶ワインを買い込んでは、おいしく頂いていました。その名もポール・メゾン「シャブリ」!