イタリアの躍進は続くか?

世界の主要ワイン市場を見ていると、 イタリアワインの躍進が目につく。女性層を中心に欧米で大ブームになったモスカト(マスカット)と、シャンペン人気にあやかって市場シェアーを大きく伸ばした プロセッコ。ともにフルーティーで酸味も抑えめ。アルコール度数も価格設定も低めで、一般消費者受けする商品だ。『プロセッコの 値段はシャンペンの3分の1ほど。高嶺の花のシャンペンと違い、気軽に日常的にスーパーで買える。モスカトは華やかな香りに加え、グレープジュースにアルコールを加えたような軽い甘みが魅力で、お酒に強くない若者やダイエット嗜好の女性も気軽に手が出るというのが、ヒットの一つの要因であろう。』)

 

ピノグリージョやキャンティでおなじみのイタリアワインは世界中に流通しているが、 今後のイタリアワインの伸び率は、世界最大のワイン消費国 アメリカと、ワイン貿易をリードするイギリスの2国が 、握っていると思われる。米国は最大のイタリアワイン輸入国で、16年度に$1.8 billion相当を輸入。英国は二位だが、16年度は米国を抜いて最大のプロセッコ輸入国になった。最も輸入事情は為替レートに左右される。今の強い米ドルなら、輸入品(イタリアワイン)に対する購買力があるが、ブレクシットの影響で割安になった英ポンドでは EUからの買いものがままならない。そんな裏事情もあり、今までシャンペンの最大輸入国だった英国が、割安のプロセッコに注力したのだろう。

 

この2国の消費者動向と仕掛け人(ワイントレード)を分析していくと、次のヒット商品が見えてくるのではないか。両国に共通するのは、ミレニアル世代(1980〜2000年生まれ)の台頭と、ワインの供給ルートの二極化だ。 倹約志向のあるミレニアル世代はクラフトビール、カクテル好みで、ワインの消費はイマイチ。彼らを取り込むことが、ワイン業界の課題だ。ミレニアルは ちょっと変わった、クラフト的な、「面白い」銘柄に興味を示す傾向があるという。うってつけにイタリアには、何百という地場ぶどうがあり、仕掛け人は、こちらに注目しているようだ。米国ではソムリエを中心に「シチリアワイン」や、「チロルの白ワイン」をプロモートし、玄人受けしているが、英国でも小回りのきく中小の輸入業者が、割安で面白い地場ぶどう品種ワインを紹介し始めているという。

 

ちなみに、米英では供給ルートの M&Aが続き、現在の構図は「超大手酒販企業数社」と「その他大勢」の二極化だ。大手はスーパーやレストランチェーンなどを取り込み、当たり前の有名ブランドや大量生産ワインを流通しているが、中小業者の持ち味はフォットワークの軽さと、自社が特化した分野の海外ワイン生産者との太いパイプだ。ポートフォリオは小さいながらも、大手は振り向かない面白い少数生産ワインなどを発掘するのが得意だ。しかもこういうワインは概して仕入れ値が安いので、ある程度の利幅が確保できる。イタリアは、小さな輸入業者にとっても、大手にとっても、宝の山になり得る。

 

その他の注目筋では、ヒット商品のモスカトとスパークリングワインを掛け合わせたスパークリング モスカト(これはイタリアでは『アスティ』と呼ばれる歴史ある飲み物)、ロゼブームに便乗して有名地場ぶどう(サンジョベーゼ=キャンティやブルネロワインのぶどう、ネビオロ=バロロ)で作るロゼがある。またすぐに飲めるワインとしてプロモートしやすいのは、大量生産のブレンドワイン、バルポリチェラ(ボージョレと類似)や赤ワインの発泡酒、ランブルスコだろう。これを冷やして飲むというのが、一昔前のアメリカで流行ったが、このカムバックはあるかもしれない。いずれにせよ、懐が深いイタリアワインに対するワイントレードの今後の動きに注目したい。

アメリカにて、日本ワインを思う

以前レポートした通り、日本にはワイン法が存在しない。日本酒という古来の文化があっても、ワインという新しい飲み物は、まだ日本文化に根を下ろしているとは言い難い。日本でワインを醸造する場合、ワインメーキングは日本酒の酒造法に基づいて管理される。その結果、欧米で当たり前の材料やテクノロジーも、酒の現場で使われていなければ、適用できない。

さらに問題なのが、「日本ワイン」の法的規定の欠如だ。市場に出回っている8割以上の「日本製」ワインは、大手酒造会社(サントリーやキリンなど)が、チリやオーストラリアなどから格安で輸入した濃縮ブドウジュースをワインに加工して、千円以内で売っているものがほとんど。

「これではいけない」と気がついたのか、或いは、オリンピック景気に備えた外国人目当ての商戦なのか、政府がやっと重い腰を上げた。日本ワイン を、「国産ぶどうのみを原料とし、日本国内で製造された果実酒」と定義し、2018年10月30日から法的に適用する。やっと日本も、ワインという 西洋で確立された歴史的飲み物を、我が国の一部として認知したということなのだろうか。

 

とはいえ、現場でぶどう栽培やワイン造りに関わっている方々の苦労は、続いている。まず、ワイン用ぶどうの栽培者が育っていない。 皮が薄く、タネなしで、実が大きいアメリカ出身の生食用ぶどうなどでは、決して良いワインは作れない。それは、植民地時代から、ヨーロッパの移民が、アメリカの地場ぶどうでワインを作ろうとしては、諦めてきた歴史が証明している。しかし日本ではこの生食用のぶどうに高値がついてきた。農家としては、得体の知れない「ワイン用のヨーロッパぶどう」など、 作りたくないというのが本音だ。結果、売れ残った生食用ぶどうを潰して、とりあえず「飲める」ワインを作ってきた悪しき伝統が続いている。

 

今回の取材で出会ったのは、本格的にワイングレープの栽培に取り組む人たちだ。それはフランスやアメリカでワイン造りを学んだ帰国組や、代々のぶどう農家の後継者がワイン造りに目覚めてしまったケース。大企業も広大な自社畑を使って、いろいろなトライアルを行なっている。とはいえ、老齢化が進むぶどう農家は離農を考え始め、逆に簡単にワイン造りをしたいと夢見る若者が、ワインメーカーを目指し始める。こうして、ぶどう不足はますます深刻になる。そして、優良なぶどうからでしか、美しいワインは作れないという当たり前の事実。

 

前号では、日本のナチュラルワイン人気を特集したが、今の日本は「日本ワインブーム」だ。3千5百円も出せば、海外の高品質のワインを購入できるとわかっていても、応援する心情で、日本のワイン(甲州・マスカットベーリーAや、生食用アメリカぶどう=デラウェア、コンコルドで作るワインなど)を買っ

てあげる。実際、膨大なインタビューを通して確信したことは、誰も日本のワインがとても美味しいとは思っていない事実だ。でも「あんなに頑張っているから、応援したい」という。

 

今では筆者も、日本人が日本のワインを応援したいという心情は理解

できる。なぜなら、ワイン造りに全く向かない高温多湿、大雨の風土にもかかわらず、本当に熱心にぶどうやワイン作りを研究し、励む姿を見てきたからだ。とはいえ、ビジネスの視点で見た場合、日本だけで通じる「甘え」が、生産者にも消費者にもある。要は「身内びいき」ということで、国内だけで通じても、海外の厳しい「自由競争」市場では、生き抜いていけないということ。今の日本ワインの質と値段で

は、まだまだ海外では通用しない。そういうアドヴァイスを会う人ごとに

してきた。と同時に、日本ワインの質をうんと上げて、来日する外国人に胸を張って振る舞える酒に成長させて欲しい。そして、その中の一部でも、海外進出に値しうるブランドができたら、、、、と願ってやまない。

 

どうしてコルギンやピーターマイケルのアルコール度数は特に高いのか?

ワインのアルコールってどのくらい高い?と聞かれて、答えられる人は少ないかもしれない。スタイルによるが、5度程度から16度くらいまで様々だ。かつて20世紀に作られたワインなら、涼しいヨーロッパで12-12.5%程度、暖かいカリフォルニアでも13-13.5%と、今に比べてかなり低かった。ところが 今世紀に入ってからというもの、世界的にアルコール度数が上昇し続け 、今では新世界(加州、豪州など)のカベルネやシラーズなら14.5-15.5%なんて当たり前、あのボルドーワインでさえ14-14.5%という時代になった。理屈はこうだ。

 

果実酒(ワイン)のアルコール度数は、材料(ブドウ)の糖分の高低と比例する。要は甘い(糖分の高い)ブドウならアルコール発酵が活発で、高いアルコールを醸造できるわけだ。寒い地域の未成熟のブドウを使えば、その逆になる。だから、フランスやドイツのような寒い国では、ブドウに砂糖を加えて、アルコール発酵を促してきた。 ところがここ数十年、地球温暖化に加速がかかり、ヨーロッパの気温が上昇し続けた結果、ブドウが完熟するようになり、 まるで新世界のようなフルーティーなワインが蔓延するようになった。当然、アルコール度も上昇している。

 

もう一つ の理由に、ブドウ栽培技術の飛躍的な発展がある。 ブドウの樹や土中の、水分や栄養素をモニターし、タイミングを合わせてビタミン入りの灌漑用水を撒いたり、光合成が十分行き届く植樹管理を行うことで、まんべんのないブドウの完熟を確保できるようになった。更に拍車をかけたのが 「ビッグワイン」の流行だ。90年代からアメリカで始まった「どっしりとフルーティーで、アルコールが高い」ビッグワインは、影響力の強い評論家の押しもあり、世界中で流行してしまった。その結果、 十分甘いブドウができる温暖な地域でも、更に糖分を凝縮しようと収穫を遅らせた。こうしてできたブドウは、水分が飛んでレーズン状態になっており、もったりと味が濃く、そのまま醸造すると15.5-16.5%の高アルコールワインになってしまう。

 

さて困った。どこの国税庁でも、アルコール度数と税率の比例メトリックスは一緒で、米国の場合、アルコール度が14%を超えると、生産者に課される税金はワイン一本につきプラス50セント加算される。1万本しか作らない少数生産者でも、ましてや大企業ならその痛手は十分理解できる。そこでワイナリーでは、アルコール度数を飛ばす様々な装置や手段の登場となった。しかも糖分が高いブドウは、当然酸が落ちすぎているので、今度は酸を追加する羽目になる。醸造の理論を知らない素人が、「砂糖を足すフランス、酸を足すアメリカ」などと揶揄するが、砂糖を足すのはアルコール度数の調整のため、酸を足すのは黴菌管理で、甘くするためでも、酸っぱくするためでもない。(最も、味を変えるために加糖、加酸をする醸造家も多々存在するが、これは別の機会に。)

 

こういう「人工的な」醸造エンジニアリングに対する批判は、年々上がっている。本家本元と言われるカリフォルニアやオーストラリアでは、この反動もあって、近年はかつてのヨーロッパのような「エレガントでフレッシュ」、アルコール度が低いワインが台頭してきている。作り手はかつてヨーロッパで醸造を学んだベテランや若手が中心だ。プロの間での評判は高く、かくいう筆者もこういう作り手のワインを好む。とはいえ、どっしり系のいわゆるカルトワイン(ナパの最高級カベルネを少数生産する最高級ワイン)でも、美しいワインはある。(が、値段が高すぎる)。ワインのラベルにはアルコール%の表示が義務付けられているが上記のような理由もあり、あまり信用していない。信用できるのは自分の味覚だ。

 

話の最後に、最近訪れたナパ最高級の(品質と値段)ワイナリーでのお話。3件とも世界的に有名なワイナリーだが、ラベルを見ると15.5%-16%というアルコール度数。思わずニヤッとすると、案内役が「うちは正直にアルコール度を書いているんですよ」とのこと。その心は?「一本450ドルのワインなら、50セントのペナルティーを払うなんて、なんともない!」

 

 

寿司にあうワインをおしえて〜

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と、こんな質問をよく受けます。一言で言って、寿司に合う万能ワインはあまりありません。高級寿司屋で用意されている定番のシャブリを始め、シャルドネ類は大抵アウト。牡蠣といえばシャブリ!というのが、フランスの常識ですが、シャブリは酸味が高すぎるので、そのほかのネタとバッティングしてしまいます。樽で醸造したブルゴーニュやナパのシャルドネは、脂身の多い魚に合うかもしれませんが、白身や魚介よりも重たいワインなので、これも万能のペアリングとは言い難いのです。同じ理屈で、赤ワインはまず合いません。寿司屋のソムリエがなんといってもです。寿司にピノ・ノワールが合う!なんてこともありません。あの酸味とタンニンにあう寿司ネタなんて、限られていますからね。カベルネに至っては論外です。

では何が寿司に合うかといえば、シャンパーニュ。但し、超辛口(ブリュット・ナチュールやドサージュ・ゼロと呼ばれる)はシャブリと同じ理由でアウト。残糖が多少高めのブリュット(Brut)がオススメ。シャンパーニュはひどく酸味が高いので、瓶詰め前に古酒と砂糖を足して、甘味を加えることで酸味とのバランスを取っているのです。この意味では同じ考え方で作るドイツのリースリング(特にカビネットというカテゴリー)も寿司と相性がよい稀なワイン。シャンパーニュの素晴らしいところは、その種類の豊富さ。もし最高に贅沢なペアリングをするなら、超辛口をアペリティフとして飲み初めて、白身や貝に移った時にはブリュット、赤身の魚身や炙りものが出る頃にはロゼにすすむというコースがお勧めです。デザートにはデミ・セックという甘口シャンパーニュがよいでしょう。IMG_1806

リースリングも高い酸味に対して、甘味にかなり幅があるので、同じ流れで最初はトロッケン(辛口trocken)をアぺとして飲み初め、次にほのかな甘味とフレッシュな酸味の調和が絶妙なカビネット(kabinett)に移ります。魚の重さ(マグロ、トロ、大トロなど)に合わせて糖分が高いシュペートレーゼ(Spatlese)やアウシュレーゼ(Auslese) に進むという手もあります。甘味のあるワインは苦手という人にお勧めなのは、ヴィオニエ。このワインの特徴はフローラルな香りと、柑橘系よりも白桃や梨といったフルーツが主で、低い酸味が特徴。もったり系の白ワインなので、日本酒のような質感があるのです。カリフォルニアのヴィオニエでもよいのですが、本家本元の北ローヌのコンドリュー(ヴィオニエ100%)を試されてはいかがでしょう。私は、その中でも非常なレアものといわれるシャトーグリエ(Chateau Grillet)をコレクトしており、つい先日も高級寿司屋のオープニングに2005年ものを持参し、同席した友人(高級日本食レストランの経営者)が、その余りの相性にひどく感激していました。img_6029

寿司には日本酒が合うことは確かで、「日本酒のような」ワイン、つまり酸味が低く、余りフルーティではない、といわれる甲州ワインもお寿司、特に白身と貝類の邪魔をしません。もう一つ意外に万能なのが、ロゼワイン。こちらは、世界各地の色々なぶどう品種から様々なスタイルを醸造しているので守備範囲が広いのです。一番のお勧めはプロヴァンスのロゼ。美しいサーモンピンクの辛口で、キレがありお値段も割安($10ー20)です。少し高めですが、タヴェル(Tavel)のロゼは赤ワインに近い色が、ボディーがあり、赤身の魚にも合いそう。その他にも、スペインのガルナッチャ(グレナッシュ)品種で作る辛口のロザータ(ロゼ)や、甘味と酸味に違いを出しているカリフォルニアのロゼも面白いペアリングができそうです。

といったところで、ふと思いました。ペアリングというのは、飲み物と食べ物を一緒に食べた時に、どちらも更に美味しくなるという「相乗効果」を目指すもの。もしそれを期待しないのであれば、カベルネであろうと、ビールであろうと、自分が好きな飲み物を飲んで、好きなものを食べればよいのですよ。合う、合わないということ以前に、好きなものを飲み食いするのが一番の幸せという人だって、いるはずですからね〜。

ボージョレはボージョレでも、、、

ボージョレの畑

 

今年もやってきた!ボージョレヌーボーの解禁日。何を解禁するのやら、、とワイン通が毎年苦笑いする季節である。英語では(というか日本では)リリースと謳っているようだが、いずれも「法律で禁じられていたものを解き放つ」という意味合いがある。「何と大げさな!」と顔をしかめる有識者や常識人はさておいて、「ヌーボーって、そんなにすごいの?」と勘違いをしかねない一般消費者のために、今年もまたボージョレヌーボー(BN)について紙面を割こうと思う。

ボージョレといえば、ガメイ(Gamay) とブドウ品種を知っている人はワイン通。生産地はブルゴーニュの南はずれ、ローヌ地方に接する広大な地域である。世界のブルゴーニュ専門家たちは、「ボージョレはブルゴーニュではない」と言い切るが、その根拠は、 温暖な 気候、花崗岩土壌、異品種(95%ガメイ)という北と全く異なるテロワールだ。実際ボージョレ地方は小高い丘が多い美しい土地だが、それも南北を半分に分けた北の優良地域だ(写真はすべて北のヴィラージュ地域)。そちらの土壌は水はけの良い花崗岩が主で、ヌーボーとは無縁の、「本来の」ボージョレワイン(ヴィラージュ、クリュ)の土地柄。ヌーボーを大量生産するのは、 南半分の広大な地域である。土壌は、水はけの悪い粘土質、土地は平坦、しかも更に暖かい地域と聞けば、有識者でなくてもブドウの質が知れる。こちらのガメイは早く育ってしまい、質もイマイチ。収穫が早いと、翌年の出荷まで、換金(ワインを売って得るお金)できない。しかも北の「ヴィラージ」アパラシオンと違い、単なるボージョレワインだ。末端価格もたかが知れている。

ボージョレ地区で栽培されるガメイの畑

フランスはボージョレ地区にて

ということで、生産者たちが時の政府に泣きつき、収穫した直後 に「新酒(ヌーボー)」として醸造し、すぐにワインを売っても良いというお墨付をもらった。要は、収穫してからすぐに、現金を確保する手段を得たというわけだ。だからワイン造りもいたって簡単。採ったブドウを丸ごと大きなタンクに入れるだけ。 カルボニック手法と言われる醸造法で、 4日ほどでアルコール度の低い飲料ができ上がる。後に色々な事情で、11月第3木曜日に一斉出荷することになり、この規制が『解禁』という概念を生んだのであろう。よく考えたら、この言葉は、待ちわびる消費者に対するリリースと言うより、生産者が現金を回収できる「お預けからの解放」だといううがった意見もある。

ボージョレの各村にはこういった看板が立っています

ヌーボーを世界的なブランドに押し上げたのは、勿論、ワインの質ではなく、その賢いマーケッティング戦略だ。最初は新しいモノ好きなパリジャン(ヌ)をターゲットに、パリのビストロに一斉大量出荷をして、「ヌーボー到着!」と騒ぎ立てた。80年代からは輸出市場にターゲットを絞り、大手のジョルジェ・デュブッフが先頭に立って、各国の大手酒造メーカーや流通網とパートナーを組み、大々的なヌーボー興行を打ち始める。中には解禁日に芸能人を動員して、大パーティーを組むという酔狂な国まで現れる始末だ。米国、日本、ドイツが3大市場と言われたが、ワインの消費が定着していく過程で消費者の目も肥えてきたのか、今では日本だけがヌーボーの大贔屓筋と言われている。しかも日本では数ユーロのヌーボーが3千円以上するという法外さだ。比して米国では5〜8ドルというところだ。が、ボージョレと入れて検索するとヌーボーではなく、きちんとヴィラージュのページが出てくるあたりが、現在の米国ワイン市場の成熟度を示している。

ボージョレの名村フラーリーにて

実際、ボージョレヴィラージュという北に位置する10の村で作るワインは、ヌーボーとは全く別もので、風味が深く、美しい果実味と穏やかな味わいの名酒だ。欧米のソムリエは、食事とペアリングしやすいボージョレを高く評価する。ヌーボー名声?の割を食って、ボージョレの名前を冠したヴィラージュワインは、未だに$20-25という割安で、プロのおすすめワインでもある。ところで、ヌーボーは超早飲み用に作られたシンデレラワインなので、クリスマス前までには飲みきること。さもないと、かぼちゃに化けてしまうかも、、、。

(そして来年は、こんな記事を書く必要がない市場になっていますよ〜に!)

ワインを買うのに、誰の意見を信用したら良いですか?

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日本に出張した時のお話。 売れ筋やら品揃えの市場調査のために、広尾で目に付いたワインショップにぶらっと立ち寄った。あまり質が良いとは言えないカリフォルニアやヨーロッパのワインが雑然と並び、値段と質が見合わない。それでも場所柄繁盛しているらしく、可愛らしいお嬢さんが二人、店員さん(どうやらオーナーらしい)に「ワインのことはわからないので、これから行くパーティーに持って行く良いワインを教えてくれますか?」と聞いている。予算は3千円ほどらしい。興味を持って聞き耳を立てた。そして次の瞬間、信じられないアドヴァイスを耳にする。既に2月に入っているというのに、売れ残ったボージョレヌーボーを「とても美味しいワインですよ。きっと気に入っていただけると思います。」と三千五百円で売ったのだ。旬が過ぎて鮮度の落ちたワインを、客の予算をオーバーして売りつけただけではなく、その値段でもっとまともなワインを置いてあるのに関わらず、在庫整理のためとしか思えない商品を、押し付けている。こんな店は信用してはいけない。お嬢さんたちが「良いものを選んでくれて、ありがとうございます」と店主に言い残して店を出たのを見て、グッと怒りを飲み込んだ。

サンフランシスコのセゾンのオーナーはソムリエ

超早飲み用にちゃっちゃっと作った格安ワインのヌーボーは、 11月下旬のリリースから数週間以内に飲みきるのが常識だ。 アメリカでも「感謝祭直前にヌーボー解禁!」という商戦が当たり、ひところ流行ったものだが、それでもクリスマスまでには飲みきらないと、という感覚があった。鮮度だけが取り柄のワインだから、年を越すと味が落ちる。ほんの数ユーロで買える新酒が日本で十倍することも釈然としない。あれだけ質と味にこだわる日本人が、なぜヌーボーをもて囃すのか不審だと言われて、 商魂逞しい仏生産者と邦販売者が結託して、日本人の「旬を愛でるカルチャー」を手玉に取っているのと説明すると、結構納得してもらえる。実際、ヌーボーが何かを分かっていながら楽しむのなら、風情がある。要は「理解する」ということなのだ。

 

これはサンフランシスコでのお話。評判の良いソムリエがいるという新しいレストランに行った。面が割れていないのが好都合だ。 折角だから予算と好みを説明して、彼に選んでもらった。そして何故この人が優秀なのか納得した。予算より安いもので質の良いものを選んできたのだ。試しに(性格悪いです)「これよりちょっと高いワインでもっと良いものある?」と聞くと、即座に2つのワインを出してきた(要は、プロのソムリエらしく、事前に準備してあったのだ)。一つは予算ぴったり、もう一つはちょっとだけ高いけれども、かなり良い生産者のもの。この人のアドヴァイスなら安心できると、その夜は結構な散財をしても良い気持ちで帰宅したものだ。とはいえ、こちらがワインに詳しいから、判断できることだろう。

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では、一般の消費者は、誰を信用すれば良いのだろう?友人にパーカー(米ワイン評論家)のスコアーだけを見て、ワインを買い漁る人がいる。かと思うと、ワイナリーに行って、ワインメーカーの話を聞き、すっかりファンになってそこのワインクラブのワインをずらっと集める人もいる。自分が飲んでみて、好きになり、買ってみるというのは悪くない。ただ、スコアーやリップサービスを信じて、ワインを判断するのは危険だ。例えば、ワインメーカーがよく言う「ぶどうを丁寧に育てて、手作業で栽培しているから、テロワールを体現している」とか「毎年ベストなワインを作ることだけを考えて、切磋琢磨している」セリフ。聞くたびに、そんなのプロなら当たり前だろ〜が!と毒づきたくなる。ワインのラベルやカタログに書いてあるきれいごとも、無視した方が良い。 値段でさえ、ワインの質と比例しないことを知って欲しい。毎日食卓にワインがあった家庭に育った人はともかく、普通はみんな手探りしながら自分の好きなワインを見つけていくものだ。一緒に成長していく友人(恋人?)みたいなものだと思えば良い。そしてアドヴァイスを求める相手の、押し出しや肩書きに惑わされず、しっかりと相手の人となりを見て欲しい。

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畑も蔵も保有せず。ヴァーチャル・ワイナリーの活躍。

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ハイテクの現代。オフィスを持たず自由な時間に好きな喫茶店にブラット入り、コンピューターとスマートフォンを使って、仕事をしている人をよく見かける。私の住むサンフランシスコ・ベイエリアはまさにITの中心地。打ち合わせや顧客とのミーティングもスタバでという土地柄だ。当然、市内にはヴァーチャル・ビジネスが溢れている。ヴァーチャル・ワイナリー(VW)もその一つだ。IMG_2871

 

VWとは、ぶどう畑も、醸造所も持たず、農家やスポットマーケットでぶどうを調達して、他人の蔵でワインを作るというビジネス・モデルだ。業態も様々だが、自分のワインを作りたいが、数千万から数億円という設立資金ができないため、VWを選ぶというケースが主流だ。彼らの大半は若く才能に溢れた醸造者か、自分のワインブランドを作るのが夢だというワイン狂だ。ここで区別しておきたいのは、単にお金を出してカタログでワインを選び、プロにワインを作ってもらう「自分のワインを作りませんか?」的な趣味ワインとは違う。彼らは真剣にワインビジネスに取り組み、それで生活をたてたいと願うワインのプロだ。

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VWのメリットは、大きい。第一に年に一度しか使わない醸造設備や、頻繁なメンテ、アップグレードに資金を貼り付ける代わりに、ワインの売り上げを、そのまま翌年のぶどう資金に充てる。ワインは、 インターネットで直売するのが大半だ。流通業者を通せば手間賃を抜かれ、手元に残るキャッシュが減る。第二のメリットはその機動力であろうか。例えば、ワインの増産や、違う品種のぶどうでワインを作ろうという時、購入するぶどうのオーダーを変え、クラッシュ・パッド(共同で使う醸造所)で使う頻度などを調整すれば良い。この点、 通常のワイナリーであれば、まず新たな設備投資をしてキャパを増やす必要がある。自社ぶどう園を経営していれば、新品種への植え替えをしてからワインを作るまでに軽く5年はかかる。その間に消費者の嗜好は、違うスタイルのワインに行ってしまうことがままある。

デメリットはメリットの裏返し。ぶどうの買い付けが確保できなければ、質量ともに影響を受ける。VWのブランドが軌道に乗り、さあ増産!という時に、ぶどう農家が農園を人出に渡してしまい、急遽別のルートを探さねばならなかった という話を聞いたことがある。自社農園を持たない通常のワイナリーも事情は同じだが、店構えのない(ワイナリーの施設を持たない)WVの場合は、個人の信頼関係だけが頼りだ。更に、他人の施設を借りてワインを作っているので、施設を使うプライオリティーはそこのオーナーが最優先。2013年は、白黒ぶどうが同時に熟成してしまった稀な年。通常なら、順番に入ってくるはずが、一斉にぶどうが送られてくるので、どこのワイナリーもパニクった。なにしろ設備もスペースも足りない。こういう時、仮住まいのワインメーカーは後回しにされる。新鮮なぶどうが外に置かれたまま順番待ちというのは、切ない。


img_2552それでもVWのサクセスストーリーは、後を絶たない。中でもこのモデルを世界的規模で展開し、注目を集めているのがイギリス発のネイキッド・ワイン(Naked Wine)だ。 クラウドファンディングがベースで、$40を出資するとエンジェルと呼ばれるメンバー(顧客)になる。 本国で25万人、米国で10万人のエンジェルを有し、オーストラリアでも躍進中。集めた資金は、世界各地に散らばる無名のワインメーカーに出資し、チャンスを与える。こうして作ったワインを、エンジェルに買って評価してもらい、そのフィードバックを更にワインメーキングに活かすという一石二鳥モデルだ。一切店は持たず、全ての取引をインターネットで行うところも、無駄がない。

一見現代的なVWだが、実は最近の現象ではない。古くから活躍するブルゴーニュのネゴシアンは、現地でぶどうを調達し、自社ブランドを作ってトレードしてきた。一斉を風靡したボルドーのガラジスタ(自宅のガレージでワインを作る)も、このモデルの先駆けだ。彼らに共通するのは、古くからのしがらみの外で、自分の納得のいくワインを作ってみたいという情熱だ。この伝統は,今も脈々と継承されている。

ドイツではロボットが畑作業をし、アメリカではトランプ大統領がワイン業界を破綻に追い込む?!

image現在、ドイツに来ている。目的の一つは、醸造学、葡萄栽培分野で世界をリードするガイゼンハイム大学と、VDP(独を代表する優良ワイン生産者協会)共催のゼミナールに出席するためだ。ゼミのテーマは「葡萄農園におけるロボット活用」。imageワイン生産国はどこでも、農作業に従事する肉体労働者の確保に必死だ。ヨーロッパもアメリカと同じく、外国から来る季節労働者に頼って来たが、彼らの出身国である旧東ヨーロッパの経済発展にあいまって出稼ぎが減少し、ワイン生産者にプレッシャーを与えている。image

加えて、ドイツを代表するモーゼル、ラインガウなどの最優良葡萄地域は、45度という厳しい急斜面にびっしりと狭い間隔で葡萄の木を植えており、おまけに表土はツルツルと滑りやすい瓦礫状だ。当然、トラクターの乗り入れは不可能で、熟練作業員が命綱をつけて昇り降りをしながら農作業するが、毎年転落事故や死者を出すと言われる危険な地域である(写真参照)。imageそこで進められてきた研究が「畑作業用ロボット」というわけだ。急斜面でも滑らずに這い上がり、表土や葡萄の根を傷つけない工夫を施した特殊なタイヤを開発。遠隔地操作で畑の状態(水分の過不足や、害虫被害など)をモニターしたり、葡萄の成熟度を測ってデータをコンピュータに送信し、更には人間に代わって薬をまいたり、収穫をする。まだ、研究開発の段階だが、ここに応用されるテクノロジーは既に他分野で活躍している。例えば、紛争地域で埋められた地雷を撤去するロボットや、災害地域で被害者を捜索するロボットなどがそうだ。

労働不足は世界のワイン地域でも深刻な問題で、メキシコ人労働者頼りのカリフォルニア州では、移民法絡みの懸念もあり、積極的にテクノロジーを取り入れてきた。1日がかりで畑を歩いて、開花や実の成熟度などをモニターしたり、マスクをつけて農薬を撒く効率の悪い作業は、ヘリコプターやドローンを飛ばしたり、トラクターに搭載した精密機械が代用する時代になった。とはいえ、これだけの機材を購入できるのは、まだ裕福な大規模農家や企業のワイナリーに限られている。デジタル化が進み、スマートフォン仕様のモデルの汎用化が進めば、近い将来こういう機材が気軽に使えるようになるだろう。image

今では新世界はもちろん、フランス各地でも使われている人口収穫機だが、下手な収穫者が摘むよりも葡萄に優しく、高スピードで収穫をする。手摘み以外は絶対タブーと言われるスパークリングワイン用の葡萄でも、今では傷をつけずに機械で摘めるまで精密度を上げてきた。「当シャトーでは、丁寧に大勢の人の手と目を使って、しっかりと葡萄を選別しています」などというリップサービスなど信じてはいけない。世界最高品質のワインを作り続けるボルドーの一級シャトーやナパの高級ワイナリーに行けば、誇らしげに見せてくれるのが、光センサーを搭載した超精密な選果機だ。かなり高価なものなので、滅多にお見かけしないが、きっと近い将来、小規模でコンパクトなタイプのものが開発されていくと予想される。

と書いてきて、ふと嫌なことを考えてしまった。もし、あの「トランプ」が米国の大統領に就任してしまったら、メキシコ人労働者は国外追放となり、アメリカのワイン産業は壊滅的な被害を受けることになる。早く畑の機械化を実現しないと、大変だ〜!

日本のワイン品評会を評価する

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今年も8月に開催された『 ジャパン・ワイン・チャレンジ(JWC)』に招待され、審査員を努めてきた。ワインの品評会とは、ずばり、その国(この場合は日本)でワインをより有利に売るために、その国で開催される品評会に、自分のワインをエントリーし、金銀銅などのメダルを狙うイヴェントだ。 国内のメーカーは勿論、より多くの外国からのエントリーが目白押しだ。19回目の本年は、30カ国から1,800のワインが出展された。現在アジアで最大の品評会ということだ。

 

JWCが日本でもっとも格式が高い品評会といわれるゆえんは、その審査員の質にある。世界のワイン業界の最高峰といわれるマスターオブワイン(MW:注マスターソムリエMSとは別資格)を中心に、日本の草分け的なワイン雑誌の発刊者やワインメーカー、そしてなんといってもMWの登竜門といわれるWSET (Wine & Spirits Education Trust)のデプローマ取得者という(日本では)稀な人材を柱に、国際基準に従って、同じ目線でワインを評価できるバイリンガルの人材を揃えて来た。image

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このビジネスモデルと対極にあるのは、日本女性だけを審査員に据え、3年前に設立されば某アワードだろう。出品ワイン数に対して、膨大な数の女性審査員を擁立しているが、参加者の資格はまちまちだ。海外の国際品評会経験者や国際資格は問われず、日本独自の資格(日本ソムリエ協会認定ソムリエやワインエキスパートなど)か、国内でワインを販売する女性やワイン好きな女性が主流だ。昨年、私も呼ばれて審査をして来たが、「草の根的な」ワイン活動と認識、評価している。とはいえ、ワインのプロ(特に男性)としては、ある種の批判があるようだ 。

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こういう流れを認識してか、JWCでは審査員の質を更に向上させようと、今年は審査員全員の新格付けをおこなった。品評会の常で、ワインの評価は議長を含む5人一組程度のグループで行われる。議長はMWか国際的に活躍するジャーナリストやワインメーカーなどが務めるが、この議長が、グループ内の日本人審査員を評価した。評価基準は、ずばり審査員の質、「評価軸のブレ」だ。他の審査員のスコアーと全く違った点数を何度となく出す審査員には、ちきんとした 説明を求める。当然プロであれば、ワイン理論に基づいた 自分の採点基準を、理路整然とデフェンドできるわけだ。とはいえ、経験不足から来る「舌のブレ」だけは、どうにもならない。

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こうして議長と委員会から「優良審査員」と認定された者が、最後の品評に招待される。これは、各グループが選んだメダル受賞ワインを対象に再審査し、各カテゴリーのトップ(例えば、最優秀プラチナメダル、最優秀日本白ワインなど)を決める大変厳正な審査だ。私のグループは日本人としては最高位の資格を持つ日本女性ティームで、無事最終審査に参加できた。(この辺りの資格や詳細については当方のフェースブック、 www.facebook.com/yukisaitosf 8月1日−3日にて説明 )

 

この点、某アワードではワインの理論を把握した人材が少ないため、グループ内の点数の乖離が激しく、フィーリングで好き嫌いを評価する審査員も多く、議長がとりまとめに苦労していたのを思い出す。とはいえ、素人女性が選んだワインだから、信用ならないという論理はいかがなものか?日本でワインを購入するのは、そういう女性が主流なのだから。とはいえ、一年間、大変な苦労を重ねてワインを作っている世界中の生産者を多々知っているだけに、審査員には真摯にワインに向き合える愛情と知識を求めてやまない。image

ドン・キホーテの故郷、ラマンチャを訪問する

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3月に続いて6月〜7月も、スペイン中部のワイン地域を視察してきた。3月に始めてマドリッドに腰を据えて周辺地域を廻ったところ、その人情や風情にすっかり魅了され、6月のヨーロッパ視察は、フランスやイタリアを早々に切り上げて、マドリッドにアパートを借り、本拠地とした。これは仕事だけではなく、個人的な事情がある。

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30年以上もニューヨークの大陸性気候に親しんだお陰で、 夏は暑く、冬は寒いのが好みだ。まず、ファッションが楽しい。食事の変化も楽しめる。それに引き換え、現在居を構えているサンフランシスコは、一年中同じ様な温度と天気で、特に夏は寒い! 「一番寒い冬は、サンフランシスコの夏だ」という至言があるが、7月や8月でも20度程度の寒さだ。しかも海からの冷風が通り過ぎる朝晩は、薄手のオーバーが必要になる。そこで、夏はサンフランシスコを後にして、暑い地域の視察に集中することにしている。

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首都マドリッドも相当の暑さで、日中は33度から36度くらい。ヒートアイランド現象もあってか、町中は夜の10時でも相当暑い。お陰で、大好きなタンクトップとショートパンツにビーサンを引っ掛けて、冷たいビールを楽しめる。天国だ!スペイン人に呆れられながらも、スペインで最も過酷な暑さと言われているラマンチャまで、視察に出かけた。マドリッドから 新幹線並みの超高速鉄道に乗り、南へ1時間で着く地域だ。招待してくれたワイナリーのオーナー達は、「くれぐれも朝一番の汽車に乗って来てね!畑の視察は、午前の早いうちでないと、体が持たないからね」と優しい。実際畑に着いた時点で、温度は37度。

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この地域は、スペインのど真ん中に位置し、アメリカで言うと、オマハやネブラスカのような比較的平坦な農業地帯である。ブドウは勿論、パン用の小麦やトウモロコシなど、見渡す限りの穀物畑が続く。そう、あのラマンチャの男、ドンキホーテの故郷である。最高傑作として誉れ高い本や、ロングランを続ける舞台を見られた方も多いと思う。畑の視察を終え、蔵に入った時点で、温度は40度に達していた。こういう暑い地域の特徴で、赤ワインはどっしりとアルコール度が高く、もったり系のフルボディーを予想していたら、以外にもアルコール度数が13%前後と低めの、ジューシーなワインだった。理由を聞くと、この地域の農家は昔ながらの農法で、ブドウの収穫量(一本の木に実らせるブドウの房数の割合)が高いため、糖度が低く、アルコール が薄くなる。こういうブドウは、スペインの他の地域に大量に送られ、「かさを増す為に混ぜるブレンド用」として使われること多いのだ。

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とはいえ、今回訪問したボデガ ラ テルシアは、オーガニックのロゼワインを作ったり、凝縮度の高い赤ワインを醸造する良心的なワイナリーだ。ニューヨーク市内のアスターワインにも卸している。一日の訪問と、スペイン独特の長いランチ(大抵3時くらいから始まって5時過ぎまで続く。暑いので、外で作業ができないため、この時間帯は食事に当てて、正解なのだ)を終え、さて今夜のホテルは?と、聞いてみると、『すごく特別な家を用意してあるんだ』という。なんと、ドンキホーテの作中にもでてくる、水車小屋が建ち並ぶ歴史地区(写真)で、地方独特の白と青のペンキで塗った母屋だ。折角の好意なので、一旦泊まることにしたものの、暑い、ワイファイも電話も通じない(仕事ができない)、レストランも近場にない、という三重苦に音を上げて、夜遅くタクシーを呼んで、こっそり駅の近くまで移動して、ホテルに泊まったimageimage