ナチュラルワインって本当に存在するの?

そもそも誰が言い出したのか「ナチュラルワイン」という定義不能な絵に描いた餅があります。確かにブドウを放っておけば、腐って発酵し、ワインになります。これをもってワインを「自然の産物」というは、笑止千万。人工的な手当をしなければ、すぐに雑菌が入って、腐ってしまいますし、生産過程のどこかで人工的な手を加えなければ、品質の保証はありません。

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ましてワインがナチュラルなものであれば、自然に生えているブドウの木からワインをつくるはずですが、勿論そんなはずはなく、畑の中で一番質の良いブドウの木から苗をとり、人間が温室でクローンを作って畑に植え直してきました。別の方法として、畑の良い木だけを残して、質の悪い、病気勝ちな木は淘汰し、いわゆる昔の「優生保護法」的な発想でブドウをセレクトしてきたのです。ここから既に人間の介入があります。

 

こうして「量産しやすい 」「色の美しい」「香りの良い」「味が凝縮しやすい」など個々に特徴のあるクローンの数々を作り、作り手が自分のワインに適したクローンを選びます。ちなみに、ブドウの木の根っこは、別のブドウの木から作った台木を使います。何故かというと、クローンとして作られるヨーロッパ品種(ピノ、シャルドネなど)は、土中の害虫に弱く、根を食い荒らされて死に至る病気があるので、こういう害虫に強いアメリカ産のブドウの木を、根っことして使い(これが台木)、その上にクローン品種の苗を接木します。ヨーロッパを始め、世界のブドウの木の根っこは「アメリカ産」ということになります。勿論、台木と接木は一旦くっついてしまえば、完璧に一体化するので問題はありません。この場合、木やブドウの性格はクローンが支配し、根に使われるアメリカ品種はブドウに影響しません。

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この台木にも様々な種類があり、「害虫に強い」「寒さに強い」「ブドウの成熟が早熟(晩成)」「干ばつに強い」「アルカリ地質に強い」などブドウ園の地質や気候(テロワール)に沿ったものを選べます。更には、選んだ台木と接木が自分の作りたい質(少数精鋭、最高品質 或は 大量生産型)に育つように、ブドウの木の究極的な大きさや形をあらかじめ決めて、それ以外の形に育たないように、ツタが伸びないように切りとり、葉や枝もそぐわないものは切り落とし、ブドウも必要な数だけを残して、取り除きます 。まさに昔の中国の「纏足(てんそく)」を思い起こす不自然さです。数え上げればきりがない様々な手間をかけてブドウを育て、収穫に至る訳です。

 

ここまでは、ニューワールド(米豪など)は勿論、本家フランスを始め、ヨーロッパでは常識的な風景です。特にフランスでは、「ワインはブドウ畑で作る」と言い切るほど、ワインの質はブドウの質で決まると考えるため、畑でのブドウの管理は徹底しています。それに比べると、ニューワールドでは「ワインはお蔵で作る」という気構えが在り、進んだテクノロジーを背景に様々な化粧や、美容整形が施されることになります。(次号に続く)IMG_1191

カベルネ・ソービニョンとソービニョン・ブランの関係は?

「カベルネ・ソービニョン(Cabernet Sauvignon)って赤ワインだから、白ワインのソービニョン・ブラン(Sauvignon Blanc)とは関係ないよね?」と聞かれたので、「おおありなの!だって、カベルネ・ソービニョンは、カベルネ・フラン(Cabernet Franc)とソービニョン・ブランの子供だもの」と答えたのがきっかけで、夕食会はブドウ品種の親当てゲームになってしまいました。

 

ワインに使われるブドウは、フランスを中心としたヨーロッパ原産のヴィニフェラ種ですが、古代から突然変異や掛け合わせを繰り返し、現在では五千から一万種類もあるともいわれており、祖先をたどると面白いゲームになります。

 

例えばカベルネ・フラン。 有名なボルドー品種ですが、 カベルネ・ソービニョンや、メルロー(これもフランの子孫)と混ぜて作るボルドーワインはフランスの代表作 。 カベルネ・フラン100%で作るワインでは、ロワール地方のシノン(Chinon)やブルグイユ(Bourgueil)という、かなり硬派な赤ワインがあります。

 

カルメネール(Carmenere英語読みはカーメニア)というボルドー品種も、フランの子供ですが、寒いボルドーでうまく育たずに、現在ではほぼ絶滅状態。代わりといってはナンですが、その昔移民が苗を持って移住したチリで、うまく適応し、いまではチリの代表品種。ハラパニョ・ペッパーや土の香りがある、すこし癖のある赤ワインですが、チリのカベルネとブレンドした「ボルドーブレンド」は、素晴らしい出来映え。

 

と書いたところで、水を差すようですが、カベルネ・フランは実はフランス原産ではなく、なんとスペインのバスク地方の品種だったそうです。これが分かったのは、 DNA鑑定のお陰。そういえば、カリフォルニアの地場ブドウだと信じていたジンファンデルも、最近の鑑定でクロアチアが原産だったと分かったのでした。もっともその前には、イタリアのプリミティーヴォがジンファンデルの親だと信じられていたのですけれど。

 

ちなみに、ブドウの中でもっとも突然変異し易いといわれている「ピノ品種」。これもDNA鑑定の結果、ピノ・ノワール、ピノ・グリ(ピノ・グリージョ)、ピノ・ブラン、ピノ・ムニエ(シャンパンの品種)などは子孫ではなく、同じブドウがある日、突然変異をしたものだそうな。 黒ブドウのピノ・ノワールから白ブドウのピノ・グリージョができちゃった訳です。道理でピノ・グリージョは白ブドウなのに、皮の色も絞り汁も濃い訳だ、、、と納得。このピノ品種は、2千年前からあるそうで、同じく昔からある品種と自然交配してシャルドネやガメイ(ボージョレのブドウ)を始め、数多くの子孫を残しているのです。

 

先ほどの夕食会で「じゃあ、ワインのブドウはヨーロッパ産でないと駄目なの?」という良い質問あり。実はアメリカでも建国時代から、地場ブドウを使って何とか良いワインを作ろうと苦労したのですが、臭いが強かったり雑味が多かったりと結局うまく行かず。世界の他の移民の国(オーストラリア、南ア、南米)と同じく、ヨーロッパ品種を輸入(或は密輸)して、ワイン作りに成功してきました。

 

結局、アメリカ原産のコンコルドや、南アのピノタージュ(ピノ・ノワールとサンソーの交配種)、日本の甲州といった「癖のある」「凡庸な」ブドウは、世界的には名声を得ることが難しいようで、、、。

 

コルクについてのお話

ワインが瓶に詰められ、コルクで蓋をされるようになったのは、300年ほど前のお話。それまでは、樽からコップに注いで飲んだり、ヤギ皮で作った水筒に詰めて持ち歩いていたそうで、当時のワインの質(の悪さ)が伺えます。それにしても、ガラス瓶の蓋として、樫の木の皮を剥いでコルクを作った知恵は、たいしたものです。

コルク樫の樹皮は、軽くて圧縮性と弾力性に富み、断熱にすぐれ、液体に対しては不浸透性があり、腐りにくいという優れもの。まさに、長い間ワインを封印するのに、これ以上優れた、自然の産物はありません。

コルクが収穫できる樫は、スペイン、フランス、モロッコなど地中海沿岸の7カ国に群生しますが、中でもポルトガル樫は質が高く、世界の半分以上のコルクがこちらで生産されています。

栓として加工できるのは、木目がふぞろいな若木ではなく、樹齢30年を経て均整のとれた木に成長してからで、この最初の収穫から150年ほどの間、9年ごとに樹皮を採取します。木を痛めずに、剥がされた層がまた結合し、再生するようコルクを剥がして行くには熟練の技術が必要です。

こうして厚く切り取られた樹皮は、屋外に6ヶ月ほど放置し、雨、風、日光にさらして木目を詰め、高温蒸気処理を施して弾力を高めた後、栓の形に抜き取ります。このあと塩素を使った液体でコルクを消毒しますが、稀に塩素がコルク内の成分と化学反応を起こすことがあります。これが、いわゆるブッショネという現象で、コルクを抜いてワインを注いだ瞬間に、異臭を感じます。

カリフォルニアのカベルネはこk

ワイン業界を悩ませて来たブッショネですが、原因が解明されたことで、コルクの消毒手法を見直し、以前は7%といわれたブッショネを、1%以下まで減らしたという情報もあります。その間に、ブッショネリスクゼロのスクリューキャップが市場に出回り、あっという間にコルクのシェアーを奪ってきました。

とはいえ、自然コルクほどワインの熟成をうながす優れものはないのも事実。これは、コルクの構造に起因します。コルクの内部は、ガスが充満した超微小の細胞が蜂の巣状態をつくっています。この細胞に内包されているガス(空気)が、長い時間をかけて微量に瓶内にとけ込んで行き、角のたった酸味やタンニンを柔らかく変化させ、果実味に複雑なマッシュルームや蜂蜜味を加え、紫色だった赤ワインをルビーからオレンジ色にかえていく効果をもたらします。

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一般的に、ワインの酸化(すっぱくなる)は、コルクの隙間から空気が入り込むために起こると誤解されておりますが、実際はコルク樫の自然の妙なのです。コルクの弾力性と密通性はほぼ完璧なので、ひどい酸化が起こったとしたら、それはボトリングのさいの不手際のせい。逆にいうと、プラスティックなどでつくった人口コルクの方が、弾力性が乏しいため、空気の侵入が大きく、酸化が早く進みます。

ワインを瓶詰めにする際に、酸化防止と防腐剤として亜硫酸ガス(SO2)を瓶内に注入しますが、この量がワインの質とスタイルの決め手。20年後にピークを迎えるはずのワインならば、最高級の自然コルクで一番長いもの(つまり瓶内の空気比率が低い)を打って、20年間で酸化をゆっくり促す量のSO2を入れます。逆に、出荷後すぐに飲むタイプの若いワイン(まさにニュージーランドのソービニョンブランなど)であれば、ガスの量を減らしてスクリューキャップで蓋をしておけば、空気も入らず、最低限の酸化防止剤だけでワインの鮮度を保てるという訳です。

ブドウの収穫を決める要因とは?

ブドウが開花し成熟する期間は、百日が目安になります。例えば暖冬で芽が早く出た年であれば、ブドウが早く実るので収穫が前倒しになります。正に今年(14年)のカリフォルニアがその良い例で、例年より2〜3週間ほど早い収穫となりました。

ブドウ栽培者は、ワインの出来映えを決める「ブドウの成熟度」に細心の注意を払います。完熟の決め手は、糖分と酸度の完璧なバランス。言うは易しですが、毎日変遷する天気や温度を横目に、また雨や霜の発生を懸念しながら、糖度計を使っては糖分を計り、また畑のあちこちでブドウを食べてみて、表皮、実、種を齧っては甘み、酸味、苦みなどを経験則で判断して行きます。勿論、広大な畑の各所からブドウのサンプルをとっては、酸度(pH)などを実験室で分析します。

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同じ品種で同じ畑であっても、丘の上と平地、南向きと北向き、木の陰や河川のそばのブロックなど、違う環境(これを称して「ミクロ気候」といいます)で育ったブドウは、違うペースで実って行きます。とはいえ、最終的には畑のどこかを基準として、完熟と判断せざるを得ないのですが、これも悩ましいところです。

 

最終的に収穫を決定するのは、ブドウ品種と、作るワインのスタイルによって変わって来ます。一番早摘のブドウは、スパークリングワイン用のブドウで、これは糖分が低く、酸味が高い時期に収穫しますが、逆に糖分がピークを迎えるまでの完熟を待って遅めに収穫する品種(主にカベルネやシラーといったフルボディーの赤ワイン)もあります。

 

とはいえ、収穫日を想定しても、その前に大雨予報がでれば、大抵の農家は予定を繰り上げて収穫してしまいます。大量の雨はブドウを水ぶくれにし、味を薄めるだけではなく、カビの発生も懸念されます。中には、最優良のブドウだけを作ろうという気概(或は経済力)のある農家は、雨の後に数週間好天機が続くと見込んで(願って)大きなリスクをとって、ブドウの完熟を待ちます。

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こうして栽培家は毎年、この時期になると、畑を歩き回り、時には徹夜をしながら、完熟に向かうブドウのモニターに励んでいます。

カリフォルニアは収穫の真っ最中!

現時点(14年10月8日)でカリフォルニアのブドウ収穫の真っ最中。既に収穫がとうに終わっている地域(暖かい南加州や、早摘みのスパークリングワイン用ブドウ栽培地域)、現在収穫中の(ソノマコーストなど冷厳な)地域、そしてこれから収穫に入る(遅咲きで完熟を要するカベルネなどの黒ブドウ品種、或は収穫を延ばすことでブドウの糖分をあげる必要のあるデザートワイン用)地域に分かれますが、これらの収穫時期が異なるブドウを生育する農家や、ワインメーカーにとって、一年でもっとも忙しい時期。

今年の収穫は、史上もっとも早く始まったと言われていますが、その理由は(1)暖冬で、ブドウの開花が早かったこと、(2)史上最悪といわれる水不足で、ブドウの実が小粒であったこと。この二つが相まって、ブドウが通常より早く実りきったというわけです。

 

ブドウを刈り取る 労働者は、世界のどの地域でも、よそからやって来る季節労働者が大半ですが、カリフォルニアもその例外ではありません。熟練した農業従事者が多いお隣のメキシコから家族ぐるみで毎年やってきて、カリフォルニア全土のブドウ地域を廻る「レギュラー」も多いのですが、近年ではこういう人達がこちらで専従のクルーになって、各農家やワインメーカーと契約を結び定住することも。

ソノマコーストで収穫まじか

とはいえ、よほどの旧家や大手のメーカーで、フルタイムのクルーを確保している一部はともかく、一般の農家は同業者とこういうクルーをシェアーしているので、思った日に収穫要員が確保できないこともしばしば。ましてや今年のように、いちどきにブドウの収穫が重なってしまった場合は、カリフォルニア各地に散らばる畑の収穫を手配するのは大変なチャレンジとなります。

ある地域では順番に熟成するはずのメルロー、シャルドネ、シラー、ピノがいっぺんに収穫期を迎え、人手だけではなくお蔵の機材が廻らずあたふたしたとか。例えば、樽にはまだ前年のワインが入っていたり(この場合、直ぐに瓶詰めをする必要有り)、ブドウを潰して収納するタンクが足りなかったりと、てんてこ舞いをしているようです。

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ちなみに「通常年」(というのは飽くまで教科書上のこと。農業は毎年違う天候の影響を受けるため、毎年イレギュラーです)の「典型的な」収穫時期は、一番早摘みのスパークリングワイン用ブドウが8月の上旬から中旬(勿論地域の温度差によりますが)、次にソービニョンブランクを始めとする白ブドウで大抵9月いっぱい、その後黒ブドウですが、品種により早め(9月)なものとかなり遅め(11月)という差があります。

ドイツワインは、甘ったるいチープワインという非常識

ソムリエや評論家の間で、ドイツを代表する秀逸なリースリングは、ホワイトブルガンデー(モンラッシェ、ムルソーなどブルゴーニュで作られるシャルドネ)と並んで「世界最高の白ワイン」と評価されています。この二つのワインに共通するのは、複雑な香りと味わい、長い余韻、そして数十年というボトルエージングを経て、更に秀麗なワインに変容する希有な資質です。

 

ドイツは世界最北端のワイン生産国で、その寒冷な気候ゆえ、寒さに強い白ブドウが生産の主流です。白ブドウの王、リースリングの畑は、大きな川沿い(ライン、モーゼルなど)の両側にそそりたつ、粘板岩土壌(スレート=チョークに類似)の丘陸地帯に集中しています。通常ではブドウが完熟しない気候でありながら、素晴らしい白ブドウが育つには、独特の条件が存在します。

急なドイツのブドウ畑の斜面

まず、急斜面に群生するブドウの木が、川面から反射される直射日光と、空からの太陽光の恩恵を同時に受けること。急斜面は一種のソーラーシステムだと考えて下さい。また、白いスレートは、太陽の光を吸収するので、寒い夜にブドウの木を暖める効果があり、北国の白夜(遅くまで太陽が沈まない)と相まって、ゆっくりとブドウを成熟させます。更に水はけのよい痩せたスレート土壌では、ブドウの木が土中深くに根を張って、ミネラルや必要最低限の水を吸い上げるので、ミネラル分の高い養分が凝縮した美しいブドウが育ちます。

 

足場の悪い急斜面の、靴が滑り易いスレートの畑では、トラクターは使えず、ブドウ農家は命綱を腰に巻いて、すべて丁寧な手作業で行いますが、それでも毎年転落事故が起きます。また、ブドウの完熟度(糖分の比率)が高いほど、高級なワインが作れるので、秋から冬にかけて必ず訪れる霜、雨、雪の予報を横目に、収穫を先延ばしにして待つという大きなリスクを伴います。

 

こうしてできたブドウは、デリケートな酸味と甘味が同時に存在する希有なワインとなります。とはいえ、ドイツワインがボルドーやブルゴーニュの特級ワインを凌駕する最高値をつけていたのは、はるか昔の話。今では最上質のリースリングでさえ、2桁で買えるという「安値」がついています。つまりは「大変なバーゲンワイン」というわけです。

リースリング畑の土壌

ここまで評価と値段が下がってしまった最大の理由は、安易な生産者の選択でしょうか。高級でデリケートなリースリングの栽培は余りにも難しく、また難解なドイツのワインラベルは海外市場では、通(つう)以外にはなかなか受け入れられません。

 

そこで、南ドイツの温かい平地に群生する白ブドウに甘味を加えた安物を大量生産。分かり易いラベルを貼って、世界に輸出しました。70年代から大ヒットしたブルーナン(Blue Num=修道女のラベルで有名)などはその良い例で、口当たりの良い素人受けする甘口ワインは、まだワイン音痴だった当時のアメリカで大ヒット。修道女のラベルも分かり易く、以来ドイツワイン=甘ったるい安物ワインというイメージが定着してしまいました。

 

こういった非常識ワインは飛ばして、次回は是非「VDP」という優良生産者協会(鷲)のマークがついた20ドル程度のリースリングをお試し下さい。アルコール度数が9%と低く、寿司や和食との相性も抜群です。

 

(下はVDPの鷹マークがついた優良なメーカーのリースリング)

 

VDPマークのついた優良なリースリング

キャンティ・クラシコとスーパー・タスカンのお話

今日フィレンツェの空港でふとみかけた、キャンティのフィアスコ・ボトル。丸みを帯びた瓶の下半分を藁で覆った、昔なつかしい名物ボトルですが、最近は消費者の目が肥えたのか、流石にあまり見かけなくなりました。

 

この種の「キャンティ・ワイン」は質が低く、ワイン通なら決して買わない代物。買うなら必ずキャンティ「クラシコ」とレベルに表示された優良なワインを選ぶべし。しかもクラシコの値段は20ドルくらいと、普通のキャンティとあまり変わりません。

 

この二つのワインの関係は、以前論評した「出来損ないワインのボージョレ・ヌーヴォー」と、「優良なヴォージョレ・ヴィラージュや、クリュ・ボージョレ」に似ています。

 

山岳地帯を平地で囲み込んだ広大な「キャンティ」は、酸味もタンニンも荒削りなサンジョベーゼ品種を大量生産する地域。そこで白ブドウなどを混ぜてフルーツ味を加え、安易な早飲みワインに仕立てたのが、フィアスコ・ボトルでおなじみのキャンティ。

 

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これに比べ、はるか昔から地味の良さで知られる「クラシコ」は、陽当たりが良く、昼夜の温度差が激しい丘の斜面に良質な畑が並ぶ小さな地域。ここで育つ優良なサンジョベーゼは、赤い果実(サワーチェリー)と爽やかな酸味が特徴の、イタリア料理(トマトソース)に抜群に合う名物ワインに仕上がります。

 

とはいえ、「白ブドウをブレンドする」というガイドラインは、クラシコにも適応されており、これを外すと政府認定の格付け(クラシコ)を得ることが出来なかった訳です。

 

ところが、フィレンツェを中心に広がるトスカーナ地方は、昔から裕福な貴族や有力な名家が代々ワイン作りをしてきた土地柄。「政府の認可などいらぬ」とばかり、経済力をバックに白ブドウを排除し、ボルドー仕込みの手法で、前代未聞のサンジョベーゼ100%ワインを作り、更にはイタリアで初めてカベルネ・ソーヴィニョンやメルローをブレンドした画期的なワインを世に送り出しました。

 

こういうワインは政府の規定枠に存在しないため、格付けが得られず、最下位の「テーブルワイン」扱いでしたが、舌の肥えた国内外のワイン通が絶賛。イタリアワインとしての最高値を記録、更新し続けました。いまでは「スーパー・タスカン(トスカニー)」と呼ばれ、「トスカニー地方を超えた」スーパー・ワインとして知られています。

 

奇しくも、フィレンツェ最後の夜は、スーパー・タスカンの先駆者、ピエロ・アンティノリ氏を囲んでの晩餐会となりました。同氏の眼光鋭い面影を思い出しながら、旅客が持ち歩くフィアスコ・ボトルを眺め、一瞬感慨に耽りました。

ボルドー番外編「左岸の基礎知識」その2

Chateau Latourのグランクリュ、セコンド及サードラベル ボルドーのシャトーは通常「グラン・ヴァン」といわれるシャトーに対して格付けされた正式ワインの他に、セカンドラベル(第二)や、サード(第三)、フォース(第四)などと値段と質が少しずつ下がって行くワインを製造するのが当たり前になっています。

 

一番有名なところで、ムートン・ロットシルド(ロスチャイルド)が大量生産しているムートン・カデ(Cadet)という「大衆ワイン」があります。が、これはセカンドやサードレベルというよりは、ムートンの名前を背景に、シャトー内の畑ではなく、別の安いブドウ地域で大量に生産したブドウを、瓶詰めした物ですから、別物だと思って下さい。

 

グラン・クリュがセカンド・ラベルなどを作る場合の理由はふたつ。気候が悪いヴィンテージ(年)で、グラン・ヴァン(例えばChateau Latour, Chateau Margauなど)の品質に届かないが、辛うじてセカンド・ラベルの品質は保てると判断した場合。または、自社畑のテロワールの中で、最高のブドウが育つロットをグラン・ヴァンに宛て、それ以外をセカンドに廻したり、或はブドウの樹齢によって、例えばまだ凝縮した実が出来ない若木からとれたブドウをセカンドに使ったりします。 (上記は、Chateau Latourのグランクリュ、セコンド及サードラベル)

 

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また、セコンド・ラベルの質には届かないけれども、自社より格下のシャトーのワインよりは、優良と判断したワインには、自社のサード、或はフォース・ラベルをつけてパッケージします。しかしながら、悪天候の年のブドウで、とてもシャトーの名前で売りたくない、、、、と判断した場合は、格付けの低い(或は無い)生産者(シャトー)にブドウを売ってしまい自社の生産を見合わせたり、ジェネリックなボルドーレベル(一番下のアパラシオンで、単に「ボルドー」と呼ばれるワイン)に格下げして市場に出すこともあります。

 

シャトー トロロン モンド(グランヴァン)とモンド(セカンド ラベル)

 

ボルドー番外編「左岸の基礎知識」

(ボルドー研修旅行その4で触れたオーメドックに関する基礎知識をおさらいする番外編を設けました。)

 

ここで一度、ボルドー左岸の基本知識をおさらいしましょう。水はけのよいグランクリュ保有畑

 

まず、ボルドーというワイン地域は、歴史的にイギリス、続いてオランダという中世から海を制して来た貿易大国が振興し、育て上げた地域。それは、太平洋に流れ込む広大なジロンド河と、その支流のギャロンヌ、ドルドーニュなど、ボルドーの奥地と大西洋を結ぶ、戦力的水路の存在にあります。

 

これらの水路を自在に船で行き来し、フランスの物資を大英帝国やオランダが、自国や植民地に輸出したことが、ボルドーワインの名声を高めました。今では常識となっている左岸(オー・メドック)のテロワール(世界一のカベルネを育てると言われて来た)は、オランダ人の技術のたまもの。当時は湿地帯でブドウなど育たなかったオー・メドックを、オランダ人が開墾し、水はけをよくしたために、現在の「砂利質」の土壌が存在する訳です。

 

そして大抵の読者が混乱を起こすに違いない、ボルドーの格付けについても一言。簡単に言うと、広大なボルドー地域の格付けの概念は、全仏に存在するものと同じ。即ち、その土地特有のテロワール(土壌、気候、風土など)を囲い込んだ地域=「アパラシオン(仏ではAOC 、EUではAOPと略される)」を認め、その質についてレーティングするというもの。例えば、ボルドーAOC、オーメドックAOCなどがそれに該当します。

 

ところが面倒なことに、ボルドーの場合、そのアパラシオンを踏まえた上で『生産者』に対して格付けが行われたのですね。(ちなみに、ボルドーでは生産者は、構えの大きい小さいに関係なく、自らを「シャトー」を名乗ります。稀にブルゴーニュのように「ドメーヌ」と自称する謙虚な生産者も存在しますが)

 

しかも、です。ボルドーは地域によって、生産者に対する格付けの手法が全く違うのです。今回は、ジロンヌ川の下流(つまり大西洋に近い地域)の左岸(=オー・メドックを含むメドック地域)の格付けについてのみ、お話しします。(そうです、右岸やそれ以外の地域はまた別の複雑な格付けメトリックスがあるのです)

 

先の記事で言及した通り、オーメドックのシャトーは1855年に格付けされたまま、現在に至っています(唯一の例外は、ムートンロットシルドの一級シャトーへの格上げ)。では何故、1855年なのでしょうか? 実はその年、パリで万博が開催されることになり、急遽ナポレオン3世の指揮下、優良なメドックのワインを外賓にアピールすることになりました。そこで、どのシャトーのワインが適切かリストアップすることになったのが、この格付けの始まり。

 

それを手がけたのは当時ボルドーで活躍していたネゴシアン(ワインを流通する中枢業者)達。彼らは、当時のシャトーの質、評判とトラックレコードなどを吟味する立場にあったため、「格付けを申し込んだ」シャトーに対して最高一級から5級まで振り当てたのでした。

 

ここまでお読みの賢明な読者の方なら、この格付け法がいかに問題を抱えているか、お分かりだろうと思います。が、このトピックは後日ゆっくりと。

アメリカ・ワインのラベルの読み方


カレラ ライアンPNワインのラベル(エチケット)の表示は、生産国のワイン法に基づいて規定されています。複雑なワイン法に縛られたヨーロッパのラベルは難解で、プロでもない限り、一見してブドウ品種や生産地域、ワインの特質などを割り出すのは難しいかも知れません。

 

その点、後発組の新世界のワイン作りは規定がゆるく、その分ラベルも分かり易く出来ています。

 

 

例えば、写真にある有名なアメリカワインのラベルを解読しましょう。

 

 

Calera                         このように、通常一番大きい字で書いてあるのが生産者名(ワイナリー)。この場合は「カレラ」となります

 

 

 

2010                           生産年度が表示されている場合、年度のブドウを100%使用

 

 

 

Thirty-Fifth Anniversary Vintage    35周年記念ヴィンテージ

 

このように、ワイナリーが特別な名前を付け足すことがあります。自分の子供の名前をワインに冠したり、またリザーブ(Reserve)やスペシャルセレクション(Special Selection)などの名前をつけることも。後者(reserve, Special Selection, Special Reserveなど)には法的規制がなく(ヨーロッパも同じく)生産者が自由に付け足せます。とはいえ、良心的なメーカーは、より良質なブドウを使ったり、樽で寝かせる期間を長くしたりと、通常のワインより上質なワインを作るので、お値段が上乗せされます。

 

 

 

Ryan Vineyard           ライアン畑(このようにわざわざ「単一畑の名前」が表記されている場合、95%以上のブドウがその畑で収穫されたものでなければなりません)

 

Pinot Noir       ピノノワール=ブドウ品種表示。但し「100%ピノノワール」と表記していない場合、表記されたブドウ品種が85%以上入っていれば良いのです。大抵は風味や色味を加える為に、多品種のブドウを混ぜ合わせますが、生産者によっては100%同じブドウ品種を使用する場合もあるようです。

 

Mt. Harlan      マウントハーレンというのは米国法で認定されたアメリカブドウ栽培地域(American Viticultural Area 略してAVA)のひとつ。一般常識としてこのAVA(例えばナパ、ソノマ、ラザフォード、モントレーなど)は知っておいた方が得。AVAが表記されている場合、使用されたブドウの75%以上がその地域で収穫されていなければなりません。

 

 

すらっとワインのラベルが読めるようになるには、ある程度の学習は必要ですが、上記のパーセント(%)ルールと、出身地(AVA)そして優良ワイナリーを覚えるだけで、理解力がぐっと広がります。

 

 

また、ワインのアルコール度の表示は表のラベルの下、或は横向きの小文字で書かれていることが多いのですが、裏ラベルに掲載されていることもあります。

 

 

裏ラベルの情報開示は生産者によって様々ですが、大切な情報は「輸入元」がどこかということ。せっかく丁寧に作られたワインも、親元を離れた瞬間から、質の維持との戦いになります。

 

 

信用できる輸出、輸入元ならば、冷蔵庫のついたコンテナで運送し、涼しい倉庫で管理して、出荷までワインの劣化を防ぐことに腐心します。

 

 

 

ということで、ワインのラベルは表のみならず、横、そして裏面もしっかりとチェックして下さい。