ワインリストが読めな〜い!

なんてこと、良く有りません?実際、玄人というか、ワインの素養が有る人を前提に作ったリストは、取っ付きについものです。4月10日付けの「『ホワイト・ブルガンデイ』って何?」という記事で触れたように、フランスのブルガンデイ (仏語でブルゴーニュ)のホワイトワイン、イコール100%シャルドネ!と分かる人は、少ないはずです。

 ということで、今回は難解なワインリストの解明シリーズ第一弾。まずはアメリカ最高級レストランの典型ともいえるフレンチ・ランドリー(FL)のワインリストを例にとって解説しましょう。 リストはグラスワイン、ハーフボトル 、そして国別のフルボトルの白、赤と続きます。今回は一番注文する機会が多いと思われるグラスワインのリストを見てみましょう。

 例えば、白ワインの項目に「リオハの白(Rioja, Blanco)」とあります。これはスペイン北東部の山岳地帯で作る地場ブドウ(マカベオ、マルベジアなど)のブレンドです。製造が「2003年度のロペス・デ・ヘレデア(Lopez de Heredia)」とあるので、通は「ロペスにしては『若い』ワインだ」との感想を持ちます。何故ならこの生産者はリオハの伝統的白ワイン — 何十年も寝かせる超辛口ワイン — を今でも作る唯一ワイナリーとして有名なのです。

 このワインの小売価格は米国内で一本25ドル前後ですが、FLではグラスで20ドル。恐らく仕入れ値が20ドルなのでしょう。というのは、グラス一杯のワインの値段は、通常仕入れ値一本分が常識なのですね。

 

他に「リースリング、カビネット、ラインガウ」という秀逸なワインが14ドル。ラインガウ(Rheingau)はドイツが誇る世界最高品質の白ワイン、リースリングの優良生産地。パワフルで酸味と残糖のバランスが素晴らしいワインですが、「カビネット(Kabinett)」 というのは、ドイツのワイン法で最高と認定されたワインに与えられる6種類の甘味規定にひとつ。一番「デリケート」にあたる分類です。プロの間で最高の白ワインというと「ドイツのリースリング!」と言われますが、民間に今ひとつ人気がでないのは、この難解なドイツのワインラベルにあること間違い無し!

 赤ワインの記述で比較的易しいのは、「モルゴンのボージョレ」。名の通りモルゴン(フランスのボージョレ代表産地Morgon)で作るガメイ品種100%のフルーティーなワイン 。ただし、毎年11月に出荷されるボージョレ・ヌーボーとは別物ですよ。(12年5月11号でカバー)

 国産の赤に「アラウホ、メリタージュ、ナパ」という一杯45ドルのワインがあります。これは「ナパを代表するカルトワインのAraujo」が、「カベルネ、メルローなどボルドー品種をブレンドして作ったフルボデイのワイン(Meritage協会認定ワイン)」です。

 でも私なら、こんなリストは止めて、ワインを知らない人にも理解出来る別リストを作るけどな。例えば、「リオハの白」は「シャブリ(ホワイト ・ブルガンデイの一番辛口)」と一緒に、「キレの良い超辛口ワイン」としてまずひとくくり。そして横にブドウ品種も載せますね。

 「リースリング、カビネット、ラインガウ」は「ロワールの白ワイン」と一緒に、「日本食に合うスーパーワイン(日本料理屋)」と見出しをつけるか、「ペアリングに最適なデリケート・ワイン」にくくって、小見出しで「最高品質、低価格のコスパワイン」とでもしますかね。

 それならナパのカルトワインは「カクテル・ワイン、最高価格」で、ボージョレは「成長不良のヌーボーより、ちゃんと成人式を迎えたワイン」とでもしましょうかね〜。

 コルクでなければ、ワインにあらず!?

近年、ヨーロッパ圏外の「新世界」で作るワインの質が急上昇し、フランスが製造法を逆輸入するという現象が起きています。

 

中でも、彗星のごとく市場に現れ、ロワール産の秀逸なサンセール(Sancerre) と並ぶ上質なソーヴィニョン ・ブランを作ったニュージーランド、長期熟成が前提のフランス・ローヌ地方のシラーに対し、格安で、しかもすぐに飲めるおいしいシラーズを世界中に輸出するオーストラリア。

 

この2国に共通するのは、ワインの最新技術を駆使して 、良質でリーズナブルなワインを生産していること。その証拠に、ワインの栓にスクリュー・キャップを使っています。

 

「スクリュー・キャップ(SC)を使ったワインは安物」という イメージがあるようですが、それこそプロから見れば「非常識」というもの。SCとコルクの功罪を比べれば、勝敗は明らか。

 

まず、育つまで150年かかるといわれるポルトガルやスペインのコルクの木を伐採して作るコルク栓は、すでに供給が追つかず、現在ではひとつ1ドルといわれる高級品。当然、ワイン代金に上乗せされます。

 

これに比べて、ビールやコーラを大量生産してきた新世界では、SCの設備投資も整っており、原材料も大量生産も低いコストで行えます。

 

コルクの最大の問題は、何といってもブショネ(仏語のコルク= Bouchonからの派生語。英語ではCorked、専門用語で  TCA)と呼ばれる「汚染」リスクがあること。困ったことに、瓶を開けてみないと分からないこの異臭は、ワインの3〜7%を犯し、生産者、購入者を悩ませます。このリスクを完璧に排したのがSCです!

 

コークスクリューにも様々な種類がありますが、腐ったコルクや、きついコルクを抜く途中で折れてしまい、イラついた経験は誰にでもあるもの。飲み残しのワインにコルクをはめるのにも、またひと苦労します。

 

この点、 道具無しで簡単に開けられ、残ったワインもキャップをきっちりしめ直せば、密封状態で保存ができるSCは優れもの。将来的にSCが広がっていくのは明らかでしょう。

 

現在コルクに固執するのは、長期熟成(10年〜数十年)を前提にして作る最高級ワインです。タニンや酸味の高い「渋い」 ワインは、コルクを通して瓶に入ってくる超微量な空気によって、何年、何十年とかけてまろやかに成熟していきますが、こういうワインは、全世界のワインの生産量のうちほんの数%に過ぎません。

 

ちなみに、実用化されて歴史の浅いSC栓が、ワインの長期熟成にどのような影響を及ぼすのを研究する為に、フランスを代表するシャトー・マルゴーが、7種類のSC栓を使い、実験を始めたというのは、心強い限りです。

 

早飲み用ワインが圧倒的多数をしめる昨今、「コルクでなければ、ワインにあらず」は過去の認識。1〜3年の賞味期限のワインであれば、「ワインの栓はスクリュー・キャップ」が正解です。そして、(レアものの長期熟成用以外の)「ワインは、持っていればいるほど、おいしくなる」というのは、非常識だとガッテンしていただけましたでしょうか?

「ホワイト・ブルガンディ」って何?

おいしいもの好きの友人から、「今夜ミッシェラン三ツ星のあのレストランでデート!最高に美味しいワイン教えて〜」という電話あり。「シーフード専門店だし、ホワイト・ブルガンディがお薦め。世界最高の白だからさ」というと、「あっ、そうか。了解。」とのこと。(まだ、説明終わってないけど…..)

 そして翌日。友人曰く。「ワインリストを いくら探してもホワイト・ブルガンディなんて、なかったよ。ソムリエに聞いたら、頁を指して『ほら、こんなに有りますよ! 』ってスマイルされちゃったけど。」

ちなみに、ホワイト・ブルガンディとは仏ブルゴーニュ(英語でブルガンディ)で作るシャルドネ100%ワインのこと。最北端で作られるミネラル分の高いシャブリ、黄金の丘(Cote d’Or)という超ど級地域で作る世界最高峰のグランクリュ、プレミアクリュの数々(モンラッシェMontrache、ムルソーMeursaultなどなど)これより南の地域は、お値段が割安になるシャロネーズChalonaiseに最南端マコネMaconais地域(中でもプイイー・フィッセPouilly Fuiseが有名) など、味わいもお値段も変わるシャルドネのオンパレード。

 ワインリストでは確かに「ホワイト・ブルガンディ」という項目はありません。リストは普通地域別になっているので、友人はまず「ブルゴーニュBourgogne」という項目を探すべきだったのですね。

 結局彼女はソムリエに「適当に『ホワイト・ブルガンディ』をグラスで」といって逃げたそうです。「みんな、めっちゃ美味しかった!」と満足げ。あらあら、一杯15ドルから50ドル以上はするグラスワインを、デートの相手に押し付けたの〜?

 

ナパヴァレーの老舗『谷床AVA』!

カベルネソービニョンの名勝地ナパヴァレーには、超優良な葡萄栽培地域(正式名はAmerican Viticultural Area略して AVAといいます) が盛り沢山。なかでも、昔から有名なのがヨントヴィル (Yountville) 、オークヴィル(Oakville), ラザフォード(Rutherford)、そしてセントヘレナ(Saint Helena)などに代表されるナパの主要幹線、ハイウェイ29号線の両脇に並ぶ谷床(Valley Floor) AVA。

 ロバートモンダヴィ、オーパスワンなど老舗のワイナリーが両脇にずら〜っと並ぶ風景は、なかなかの壮観。しかも、サンフランシスコから車をとばして、ほぼ一時間の距離。

 「優良な葡萄は丘の中腹で育つ」というワインの常識がありますが、面白い事にパイオニアが開拓したワイン畑は全て平地に広がります。この「谷床AVA」は、東西両側を小高い山に囲まれ、太平洋やサンフランシスコ湾から這い出して来る冷たい朝晩の空気のお陰で、朝晩の気温差が高く、 ゆっくりと葡萄が成熟する環境に恵まれています。

 平地にゆったりとした畑を作ったのは、ヨーロッパと違って、近代後発組のアメリカのワイン産業が、農作業にトラクターなどの機械をつかうことが当たり前だったこともあるのでしょう。

 始めてナパを訪れる人は、誰でもまずこの『谷床 AVA』の老舗を廻ることから始めます。かくいうわたくしも、長年住んでいたニューヨークからわざわざこの地域を毎年訪問し、試飲を楽しんでいましたが、古き良き80年代や90年代と違い、すでに世界のトップに上昇してしまったナパのワイナリーは、今は皆有料なのですね〜。

 昔はアポなど必要なく、ぶらっと立ち寄ると、そこのオーナーがワインをついでくれて、熱いワイン談義なんかを交わしたものでした。それでもこの10年位のナパヴァレーの発展は目覚ましいものがあります。

 皆さんも、是非一度、足をお運び下さい。次回からは色々なワイン地域(AVA)もご紹介していきますね〜。

 

(上記の写真はオーパスワンの貯蔵庫。全てフランスの新樽です。)

アメリカワインのラベルはどうやって読むの?

 

色々な国のワインを試飲し、審査をする仕事に携わっていて感じるのは、ワインのレベルに反映されるお国柄。一番難解なのはドイツで、余りに多い情報量と、複雑怪奇なコード(略語)や色での分別など、相当勉強したプロでもない限り、まず理解不能でしょう。フランスは、それよりましですが、「シャブリ」という表示の前後を読んで、「あっ、これはグランクリュ畑の硬質なシャルドネだ!」とピンポンする人は、フランス通です。

 

その点、新世界のワインは出足が遅かったということもあり、複雑怪奇なワイン法が存在しないせいか、或はアングルサクソン特有のビジネスセンスが発揮されているのか、かなり分かり易い表記です。

 

まず、生産者名と生産年度、葡萄の種類やアルコール度数などが、一目で分かります。すこし勉強が必要なのは、ワインの生産地域。ナパヴァレーや、カーネロスなどが、それに該当しますが、正式名は「アメリカ葡萄栽培地域 = American Viticultural Area、略して  AVA」といい、ナパで16、ソノマで16AVAが存在しますが、まだ葡萄栽培は拡大すると見込まれていること、また広大なAVAは将来的にもう少し細分化されると望まれるところもあり、今後も増えて行くこと請け合いです(実際既に何件か新しいAVAの申請が記録されています)。

 

ワインのレベルに「メルロー」とだけ表示があった場合は要注意。わざわざ100%と謳っていない場合は、通常カリフォルニアのワインであれば75%、ワシントン州なら85%、オレゴン州なら95%以上がその品種であるべきとの規定があります。逆に言えば、カリフォルニアの「メルローワイン」と書いてあった場合は、最高25%まで異品種を混ぜてもよいことになります。勿論、これはほぼ世界共通で国に依っては85%、或は75%という場合も有ります。

 

また「ナパヴァレー」という表記は、葡萄の85%以上がそのAVA(この場合はナパヴァレー)で採れたという意味です。またナパヴァレーなどのAVA記載の他に「トカロン ヴィンヤード」などと、畑の名前がついている場合、葡萄の95%以上がその畑で栽培される必要があります。要はシングルヴィンヤードワイン(単一畑で採れた葡萄で作ったワイン)という限定ワインであれば、通常はほぼ100%そこの畑の葡萄を使ったワインですが、こういう規制が必要となります。

 

大切なのは、自分の好きなワインのAVAだけはしっかり覚えておく事。そして、一歩踏み込んでどこのAVAの、どんな葡萄品種が優良なのかを知っておくと、良い買物が出来ますよ。

 

 

 

 

えっ、これが同じワイン?

同じ親から生まれた兄弟でも、個性に差がある様に、同じクローンで同じ畑、同じ作り手の樽、同じ年に、同じワインメーカーに作られたワインでも、それぞれの瓶の中にあるワインは二つとして同じ物(味わい)はありません。

 同じ畑でもブドウの木の位置が1m違えば、当たる日差しも違って来るので、収穫時の熟成が違います。樽に入れて寝かしている間にも、樽の位置が倉の奥と入り口付近では、また積み上げた樽が、一番下か一番上かでは、空気の流れ、湿度などで、熟成の進行が異なります。従ってワインメーカーは、単一ブドウ種(例えばピノノワール)のワインでも、違う畑、違う樽の物をブレンドし、瓶に詰めます。それでも、当然全く同じ味の瓶という物は、存在しません。

 出荷した後にも、ワインの質を変える環境が待っています。例えば、すぐ隣街で売るワインと、5千キロ離れた外国に 輸出したものは、当然新鮮さが違いますし、ワインショップの保存方法(日が燦々と射している棚に、縦において売る店は当然パス)も、購入者の扱い も、ワインの風味に多大な影響を及ぼします。

 こうして私たちの口に入るワインは、生まれ、育った環境と、社会に出て一人前になるまでの歴史を体現し、味わう私たちの味覚を刺激し、認識にチャレンジします。

 言い換えれば、人間(ワイン)を見る目が有る人には、「このワインはこういう物に有らず。」という認識のもと、有るべき姿のオリジナルを探すか、何がそのワインを亜流に換えてしまったのか(その年の気候、ワインメーカーの交代など)を分析し、決して「このワイン(瓶=外見、ではなく ワイン=内面)は駄目!」という判断は下さないものです。

 

目隠し試飲会にて

よく耳にするのは、「あれっ、このワイン、この前飲んだ時には美味しいと思わなかったのに、全然違う〜」という声。ワインも人と同じく、見識とセコンドチャンスが必要なのですね。

パリの審判(Judgement of Paris)

ワインが、また一部の「ワイン通」 に牛耳られていたのは、欧米ではせいぜい90年代頃まででしょうか? それまでワインと言えばフランス!しかもボルドーとブルゴーニュばかりが偏重されており、まるで現在のアジアのどこかの国のようでした。

 

これに風穴を開けたのが、76年の『パリの審判!』(Judgement of Paris))でした。当時無名だったカリフォルニア(ナパ)のワインが、並みいる フランスの最高シャトーを凌駕して、赤、白ともに最優秀賞に選ばれたばかりではなく、上位を総なめしたのでした。

 

この「事件」はその後、色々な批判(フランス国内)と波紋(全世界)を広げますが、歴史として振り返ってみれば、3つの大きな流れを生み出したと言えるでしょう。

 

まず、ナパワインが世界のワイン地図 に於いて、その後の継続的な品質向上により、フランスワインと並ぶ世界最高峰の地位を確保した事。これは、カリフォルニアワインの市場価格と、フランスのグランクリューの値段と比較しても明らかです。

 

そして、第二の功罪は、ワインの新興国に与えた影響。カリフォルニアの成功に触発され、オーストラリアを始めとする各国が、従来のフランスだけではなく、新しい世界で開発されたテクノロジーやノウハウを吸収。自国のワインの質を大幅に向上しました。結果、今日では『新世界』のワインは、旧世界(ヨーロッパ)と質、量ともに肩を並べています。

 

最後に本家のフランスで起こった喜ぶべき現象。それまでフランスでは、「テロワール」「伝統」を錦の御旗に、何世紀と踏襲して来たワイン作りの手法を頑固に守って来ていました。が、それは同時に 人間の進歩とともに分かって来た「常識」を見直さず、結果様々な問題を抱えていたのでした。

 

フランスのワインメーカーの中には、新世界の革命に謙虚に学び、新しいテクノロジーを取り入れて、質を向上したシャトーも多く、更に何かと不自由で制約の多いフランスでのワイン作りを見限り、 アメリカ、オーストラリアなどの新世界で、自分の作りたいワインを追求するワインメーカーやシャトーが増えています。

 

現在では、世界各地で素晴らしいワインが作られています。しかも、各国のワインメーカーが新しい国でワイン作りをするということが、当たり前になっている現在、ニュージーランドやオレゴンのピノ ノワールが、 ブルゴーニュのグランクリュと間違えられたりと、プロでさえ見分けがつかない優良ワインが、格安で手に入る嬉しい状況になりました。

 

もうワイン通に頼らずとも、消費者の皆さんが、色々な国の ワインを気軽に試され、自分の好みを知った上で、ワインの価値(値段と味)を追求出来る、素晴らしい時代になっています。

 

 

11月になると、ヌーボーがやって来る!

今年もじきに、11月。一年が経つのは早いもの。尤も私のカレンダーはワインを軸に廻っています。ので、今月のトピックスは「ボージョレ ヌーヴォー」。

 

そう、毎年11月の第三木曜日にフランスから世界中に出荷されるワインの出来損ない、じゃなかった、あのフルーティーでアルコール度の低い飲み物です。

 

まずは、クイズから。あれは何のブドウを使っているかご存知ですか?

 

ヌーヴォーに使うブドウは、ガメイ(gamay) というブルゴーニュの南、ボージョレ地区で大量に生産されている品種です。基本的には軽口で、赤いベリー(ラズエリー、ストロベリー)の風味のワインが出来ますが、ヌーヴォーというジュースの様なワインだけではなく、本格的なボージョレ ヴィラージュというワインも醸造されています。(こちらは後ほどご紹介します)

 

では、ヌーヴォーは何故、『旬もの、新もの』のとして扱われているのでしょうか?

 

ヌーヴォー (新酒) が「旬もの」という特別なポジションを獲得した背景には、大変スマートなマーケッティングがあるのですね。

 

それは地元で大量生産されるガメイ品種を、超高速でワインに仕立て、すぐに売りさばいて現金に換える、という夢のようなシナリオを描いたプロジューサーがいたのですね。

 

そもそもワインという商品は、換金率が悪いのです。1年の長きに渡って天候と戦いながら、やっとこさ収穫出来たブドウをワインに仕立てても、 何ヶ月も何年もお蔵で寝かさなければならない。生産と収納には大変な元手がかかっているにも拘らず、ワインが売れるまでは、 現金収入が入ってこないという訳なのですね。

 

そこで、手間暇をかけずに、しかも大衆受けするワインを作り、しかも期間限定で売り出し、旬を狙うという、大変賢いスキームが生まれた訳です。

 

では、ヌーヴォーと通常のワインは、どう違うのでしょうか?

 

通常、ワインを作るにはブドウの房や葉を除去した後、 圧搾して果汁を絞り、そこに酵母菌をいれて発酵させます。しかもその後は何カ月も、何年もお倉で寝かして、成長を待ちます。正にじっと我慢の子です。その間は、作り手には一銭の収入も入ってきません。

 

ところが、ヌーヴォーの場合、ブドウは房のまま丸ごと大きなタンクにいれ、そこに二酸化炭素ガスをシュバーっと注入して、蓋をするだけ。そうすると、閉じ込められたガスの作用で、ブドウが皮ごとバンバンと爆発し、果汁が流れ出して、そのままタンク内で醗酵していき、ほんの数週間で若いワインが出来上がります。

 

こうして収穫からわずか2ヶ月後の11月の第3木曜日には、世界に向けて、一斉に出荷されます。正にキャッシュマシーンです。でも、速効で出来たワインですから、飲み頃にも旬があります。 

つまり、ボージョレ ヌーヴォーは、酵母菌に依る発酵も、樽醸造も経ず、短期間で仕上げた生酒。ですから、飲み頃はクリスマスまでだと思って下さい。

 知り合いに、<赤ワインは何でも長く持っていればおいしくなるっ!>とばかりに何年も保有していたツワモノがいましたが、ご愁傷様です。出来ればお正月まで持ち越すことは、しないで下さいね。尤も、きちんと保存しておせち料理と合わせて飲むという方もいらっしゃるかもしれませんね。

また、

フランスはボージョレ地区にて

ヌーヴォーは軽く冷やして飲むと、おいしく頂けます。ロゼやフルーティーな白ワインの感覚で楽しんで下さい。

 

ちなみに、こちら米国では、ヌーヴォーの入荷がちょうど感謝祭(11月第三木曜日)からクリスマスにかけての最大のホリデイ シーズンと重なる事もあって、七面鳥の晩餐とヌーヴォーのマリアージュは定番というご家庭も多いようです。

ワインの保存の仕方(その1)

ワインによっては保存が難しい物があります

 

一度開けてしまったワインは、モノによってはすぐに味が変わってします超デリケートなもの、保存がよければそこそこ持つもの、そして数週間以上味が変わらずに保存出来る物があります。

 

まずは、一番問題のある「足が出易いワイン」からお話ししましょう。

 

基本的にはとてもデリケートでフレッシュなワイン、例えば樽で寝かさせず全く空気を通さない密封性の高いステンレス スティールやコンクリート製の樽で育った白ワインや、ブドウ自体が大変デリケートな上、新樽などで育てられていない赤ワイン(ブルゴーニュのピノ ノワール)などが該当します。

 

それは樽で寝かされたワインは、樽の木目から超微量ではありますが、外気(酸素)がすこしずつ中に入り込んで、良い感じにワインを酸化させていくので、ボトルの蓋を開けても酷いショックは受けないものです。

 

それに引き換え、全く外気に触れずに育った「超おぼこ娘」は、ワインの栓を抜いた瞬間にどっと入り込む外気という闖入物(例えば世知辛い世間や、危険な男性に触れた事の無い箱入り娘を想像してみて下さい)にとても弱いのです。

 

特に白ワインの中でも、酸味の低いブドウ(ヴィオニエなど)は、酸味のとても高いソービニョン ブランクやリースリング(は、甘味も酸味も同じく高い珍しいぶどう種です)などに比べ、抜栓後はすぐに味が変わり始めるので、要注意です。

 

最近では、レベルに『このワインはステンレス スティールを使っています』などと明記されていることが多く、レベルの裏を読み事をお勧めします。

 

この新しいシリーズでは、どんなワインが保存に適しているのか、いないのか、そして一度開栓したワインをどのように保存したら持ちが良いのかなどを、説明して行きたいと思っています。おつきあい下さい。

 

ワインを買う時に、どこを見る?

スーパーや小売店でワインを買う時に、ちょっと気をつけたいポイントを覚えておくと便利です。

まずは、その店の回転率。基本的には大手のスーパーやデパートの場合、同じボトルが何ヶ月も棚にさらされているということは、少ないと思いますが、小さな店でもこの点に気をつけて、良心的な店を探して下さい。

そして陳列の仕方。お日様が燦々とあたる場所に、ワインの陳列棚があるなんて言うのは、勿論論外ですし、店内の暖かい場所にワインのセクションが有るなんていうのも、失格です。ワインは光と熱にとても弱いものですから。

一番望ましいのは勿論、クーラーの効いた店で、ワインのボトルが寝た状態で陳列されていること。ボトルが全て立っている店は要注意。尤も、 とても回転が速い店や、早飲み用のワインを売る店は、概してボトルを立てて陳列する傾向が有るようです。

逆に冷蔵庫の中から取り出して買ったワインでも、油断は禁物。店の奥の温度の高い倉庫から取り出して来て、売る直前になって冷蔵庫にぶっこむケースもありますから。

では、ワインがスポイルされているか、どうやって見分けましょう?まずは、コルク(或はスクリューキャップ)の状態を見る事。明らかに中のワインがこぼれ出て、コルクを汚しているボトルは論外として(中のワインは、既にお酢になっていると思って下さい)、コルクがボトルと平行な状態で収まっているか、親指で触って確認して下さい。

もしコルクが少し浮いていたら、運搬中に(例えば冷蔵庫が付いていない船便や遠距離トラックなどで)高温にさらされて来たと疑ってみる事。こういうボトルはパスして下さい。

逆にコルクが少し落ちている場合、つまり瓶の口より少し低くなっている場合があるかもしれません。これは運搬する時にほぼ冷凍された状態だったと疑えます。いまでは、こういう方法で輸送するかは定かでは有りませんが、以前は南半球から北半球への長い船便での輸送に使ったとされていました。

当時のワインの専門家に依ると、冷凍されたワインは 沸騰したワインと違って、味と質に大きな変化は無いとされていました。が、これも パスした方が良さそうです。

もう一つ、良く誤解されているのは、ワインの濁り度、そして一見ガラスの破片の様にみえる「クリスタル」状のものが瓶の底に沈んでいる場合。これについては、過日記事にして説明しましたが(『濁ったワインは優良なワイン?!』にて)酷い濁りは別として、余りにきらきらと人工的に光ったきれいなワインより、ほんの少しの濁りが有るワインは良心的なメーカーが作ったワインですが、この場合はお値段が張るので区別がつきます。

また、ワインクリスタルも上記と同じく、質の良いワインの証拠。こういったワイン メーカーは、瓶詰めの直前に人工的なお化粧(例えばワインの煮沸、超低温加工やフィルターリングなど)を施す事をせずに、自然な状態で出荷するので、プロの間ではボトルの底に沈んだクリスタルは良心的なワインの印として、喜ばれます。

 ただ、飲む際に邪魔になるというのであれば、茶こしなどを通してデキャンタすれば良いと思います。