Master of Wineマスター・オブ・ワインとマスター・ソムリエの違いとは?

ロンドンを本部とするマスター・オブ・ワイン(MW)協会は、ワイン業界の最高峰に君臨し、世界各地に散らばるMWを統括する本部。現在世界で300人という希少価値のMWは、一流のワイン・メーカーやジャーナリスト、ジャンシス ロビンソン氏のように過大な影響力を持つワイン評論家など、業界の色々なジャンルで活躍しています。

 

MWの試験に応募するには、まずワイン教育の最高学府Wine & Spirits Education Trust (WSET)という ロンドンを本拠として、世界中でプログラムを展開する教育機関の学位(4つのレヴェルの最高位)を取得する必要があります。学位は、世界のワイン事情(経済、ワイン法、葡萄育成から醸造など)、スピリッツ(ウィスキー、ウオッカなど)、デザート・ワイン、スパークリング・ワイン、ワイン・ビジネスと醸造学の6科目を数年かけて学び、それぞれの科目の筆記試験(理論)と目隠し試飲テストに合格しなければなりません。リサーチペーパーも提出するため、アカデミックな オリエンテーションが要求されます。更に、MW試験の応募資格には、ワイン業界で活躍する経歴も要求されます。

 

通常10年から数十年かけてこれらをクリアーした人材が、MW 試験の為のプログラムに応募し、毎年一握りの候補者が選ばれます。そこからが厳しい道で、最初の2年間 に世界各地で行われるMWのレクチャーに出席し、いくつもの理論と試飲の試験をクリアーする必要があります。大抵は4年以上たって時間切れとなり、諦めるというケースが多いようです。無事一連の試験に合格すれば、1万語に及ぶいわゆる「博士論文」に取り組みます。論文が受け入れられ、かつワイン業界での業績が認められた一握りの人が、MWと認定されるのです。

 

このようにワインの学者であるMWは、レストランでのワイン・サービスを主とするソムリエの最高峰マスター・ソムリエ(MS)と一線を画します。理論と試飲重視のMWと比べ、MS試験ではワイン・サービス(給仕)という実技が大きなウェイトを占めますし、試飲のアプローチも異なります。

 

MSの場合、レストランで売れるワインが試飲対象であり、マイナーなワインは除かれ、また客にアピールするためのワインの説明は、ポジティブで芸術的でさえあります。比べてMW は、どんなワインでも「質の評価」の対象になります。その為、芸術性を排したロジカルな言葉の羅列が最終的に、ワインの質を規定しなければなりません。色がブリリアントで透明に近い白ワインであれば、 必要以上にワインを濾過し、見かけを化粧した「大手の商業ワイン」なのか、北限で作ったため、元々淡い色のワインの透明感が、更に増したのかなどを鑑みながら、最後にワインを結論づけます。

 

意外なことに、MWとMSの2つの受験グループと毎週試飲会を開いていて、気がつくことは、まず天才はいないということ。みなワインが大好きで、強い意思を持って 練習と鍛錬を重ね、嗅覚と味覚を磨いているんですね。つまりは、誰でも本気になれば、 ワインのプロになる素養があると思う今日この頃です。

閑静なロンドン在のマスター・オブ ・ワイン本部

ソムリエを活用しましょう

サンフランシスコのセゾンのオーナーはソムリエ

ワインのプロ、特にソムリエの仕事は、お客様に予算内で一番美味しいワインをお勧めすること。しかもオーダーされたお食事との相性も良く、お客様の好みに沿ったワインでなければなりません。

 

どんなにおいしいワインでも、酸味が高い白ワインが苦手という人に、ソービニョン・ブランはお勧めしませんし、寿司を注文された方が、「自分はボルドーの赤しか飲まない」とおっしゃるのであれば、その方は食べ物とワインのペアリングを楽しみに来られた訳ではなく、ご自分の好きなワインと好きな食事を同時に楽しまれたいのだと解釈します。そして決してそのワインとその食事は合いませんとは、口が裂けても言いません。

 

とはいえ、お客様の中には「いつも同じワインばかりを飲んでいるので、違うワインを教えて欲しい」という方(女性客に多いですね)もいらっしゃり、ソムリエの腕の見せ所となります。

 

閑話休題。実は私もタクシーの中や、人との立ち話で、ワインの仕事をしていると話すと、必ず聞かれることあります。それは、「どのワインが一番おいしい?」”What’s the best wine?“という難しい質問。

 

数分で、ベストなアドヴァイスをする為には、まず相手に「いつもどんなコーヒーを飲んでいるの?」と質問します。『濃いめのブラック』であれば、タニンに強い人、『薄いコーヒーにミルクとお砂糖をたっぷり』であれば渋みが苦手な人。また、スパイシーな食べ物に強いか?相当の甘党か、レモンなどをたっぷりと食べ物に振りかけるのか、などなど嗜好分析をします。

 

更に普段どんなワインを飲んでいるのかを聞き、その答え方でその人のワインに対する期待度や経験を計ります。最後に予算を聞いて、アドヴァイス 。

 

昨夜乗ったタクシーの運ちゃんは、「スパイシーな食べ物が大好きで、中華もよく食べる。コーヒーはミルク入りを朝一杯。ジュースが好きで、パイナップルやグアヴァなんかをよく飲む」「赤ワインしか飲まないので、白も飲んでみたい。予算は20ドルまで。」とのこと。

 

彼には、「騙されたと思ってまずフランスのアルザス地方(Alsace)のピノ・グリPinot Grisという15ドルくらいのワインを探して(K&Lなら売っている)。それを、中華やスパイシーな食事を一緒に飲んでみて。すっごく相性がいいから。それが気に入ったら、次はもっとエキゾチックで20ドルはするゲヴァーツトレミナールGewurztraminer(と紙に書いて上げた)を試してみて。多分病みつきになるから!)とアドヴァイス。

 

アルザスのピノ・グリやゲヴァーツトレミナールは、エキゾチックな南国フルーツの香りと味わい、そして酸味と残糖が微妙にバランスの採れたフルボヂィーの白ワイン。大昔にヨーロッパの高級中華料理店で気まぐれに頼んで、その余りの相性の良さにすっかり病みつきになったものでした。

 

 

ソムリエもこんな要領でお客様の嗜好を聞き出し、 料理に合わせて行きます。白身魚の塩焼きにレモンを絞る 代わりに、酸味の高い白ワインを。 ホワイトソースの魚料理には、ヴァニラやバター香りのある、腰がしっかりとした樽醸造のシャルドネをお勧めし、ホワイトソースのバターやクリームとの相性を合わせながらも、白ワインの酸味でクリームソースのしつこさを緩和します。

 

ソムリエがいる店で食事をする際には、気後れせずに、是非彼らの意見を求めて下さい 。 その際に予算はしっかりと伝えること。ワインペアリングとメニューにある場合は、割安で食事に合うワインが用意されています。

 

ワインの資格 ーーー 業界の頂点とは?

ワインの資格  ———業界の頂点とは?

日本でワインのプロは?と言った場合、まずソムリエを思い浮かべます。実際、<神の雫>などが流行るように、日本においてはワインの権威 イコール ソムリエという構図が、確立されているように思われます。

ソムリエは資格を持たずに、経験だけで<自称>することも出来ますが、
近年はプロとしての資格が認識され始め、日本でも検定試験仕様の資格試験が確立されています。ただ、日本の検定試験はフランス偏重という批判があるようですね。これは、世界的にみてフランスワインの比重が軽くなってきている近年の傾向を鑑みると、日本独特のワインカルチャーが影響しているのでしょうか。

ソムリエとしての世界的な最高資格はマスターソムリエ (欧米の業界では、略してMSと呼びます)というタイトルですが、この資格を世界的な規模で審査し、コントロールするのはCourt of Master Sommeliers (マスターソムリエ役員会議)というロンドンにある本部です。

日本にも業界のパイオニア的存在の田崎マスターソムリエを始め、既に数人のMSが大活躍されていますが、こちらは日本のソムリエ協会が認定している名誉資格といわれております。このように、国のレヴェルで行うその国独特の資格と、国際的に認知された検定試験がありますが、後者の場合は英語或は仏語での理論と試飲を受験するので、外国人としてチャレンジする場合には、相当な語学力を要求されます。

ちなみにCourt of  Master Sommeliers認定のMS有資格者は世界で186人。このうち北米(殆どがアメリカ人)が118名と圧倒的で、その中でもカリフォルニアで活躍するMSの数が目立ちます。カリフォルニアが世界のワインプロの集合地帯といわれる所以でしょうか。

ソムリエはサービス業に従事するワインのアドヴァイザーとして、レストランの中で顧客にアドヴァイスをし、ワインをサーブする専門家と位置づけられています。従って、高級なレストランでは、シェフとソムリエがパートナーとなり、メニューに合わせたワインのマリアージュを担当したり、最近ではシェフ自らがソムリエの資格を取ったりする傾向があります。

いずれにせよ、ソムリエをサービスとセールスの専門家と位置づけた場合、実際に一般消費者やワインの製造者に対してワインの格付けや、批評を行うのは、ワインコンサルタント、そして評論家やワインジャーナリストといわれる人たちです。

その中でも、最も権威のあるワインの専門家は?というと、これは間違いなくMaster of Wine(MW)でしょう。例えば、世界的なワインの評論家であるロバート パーカー氏も、このマスターワインの一人です。

この<神>の資格を有する人は、現時点では世界で300人程度です。また、この資格はワインサービスの技や、ワインと食事のマリアージュを中心とするマスターソムリエの世界とは異なり、ブドウ及びワイン作りの専門的な理論から始まり、世界中のテロワール、各国ワイン業界の政治経済、歴史は勿論、ワインに関するありとあらゆる全ての知識と見識を求められます。勿論、試飲は評価と評論を下す上で重要な分野で、その基準は「このワインは売れるか?」という商売の視野ではなく、飽くまで質と価値を見極めるための、厳しい物です。

このMWをコントロールする本部であるInstitute of Masters of Wine (MW機構)もロンドンに本部があり、世界の主立った地域に拠点があります。

MWといいMSといい、また後ほど説明するWSETといい、ワイン業界の中心権威は、全てロンドンに集中しているのには、理由があります。それはボルドーを始め、いわゆるワイントレード(ワイン取引)を何世紀もコントロールしてきたのは、イギリス人だったからです。フランスやイタリア、そしてスペインは昔からワインの中心的な製造地域ですが、輸出入などの売買に関しては、アングロサクソンにコントロールされてきました。

さて、究極のワインの学者ともいうべきマスターワインになるには、どんな資格が必要なのでしょうか? まず第一に、ワインの知識をアカデミックに身につけることが要求され、それにはWine and Sprits Education Trust (ワイン酒造教育機関、通称WSET)というこれもロンドンに本校を置く組織の、卒業証書を得る必要があります。

この学校は欧米を中心に、世界各地に分校があり、基礎コースというレヴェル1から始まり、中級コースレヴェル2、上級コースレヴェル3と上がっていき、全てのレヴェルの試験に合格して、やっとマスターレヴェル4に到達する訳ですが、このマスターレヴェルのDiploma (卒業証書)を得る為にかかる時間は、フルタイム最短で2年間かかるといわれています。が、実際に2年で取得する人は少ないようです。聴取したところによると、4〜5年でとれれば、順調とのことです。

というのも、マスターレヴェルの試験は、世界で製造される全てのワインのみならず、スピリッツ(ウィスキー、ジンなど)やリキュールに関する厳しい理論と試飲テストがそれぞれ6回づつあり、加えてワインビジネスに関するリサーチをし、論文として提出する必要があります。但し、このWSETの卒業証書を得る代わりに、世界の名だたる大学(例えば高名なカリフォルニア大学デイビス校や、ボルドー大学など)で、ワイン学(特にワイン作りに関連する)の学位を取得するという手もあります。

上記のアカデミックな資格に加え、 酒造業界で10年近い実務経験も必要とされます。この全てを満たした人だけが、やっとMW機構に対しての<応募資格>を持つとされます。これだけで、想像を絶する厳しさですね。そして応募資格を得て、応募をしても、MWの2年半のトレーニングプログラムに参加できるのは、毎年ほんの一握りの最優秀な候補者だけですし、大多数の候補者は、プログラム中に行われるとても厳しい試験で振り落とされ、MWの資格に行き着くのは希有だといわれています。

尤も、直接MW機構を訪ね、聴取したところに依ると、多少の近道というか、ケースバイケースの考慮はなされるということです。例えば、酒造業界に勤務をしていなくても、近年ではジャーナリストやワインライターといった職種も選定の対象となりましたし、10年勤務ではなく、それなりのユニークな功績などがあれば、絶対的な期間ではないとのこと。これはつまりMWの人材をもっと幅広く求め、業界のオンブズマンを輩出したいという意思ではないかと、推察しています。

かくいう私も、折角ワインのプロを目指すのなら、最高峰を!とばかりに、まずCourt of MS認定のソムリエの資格を取得した後、フランス各地のワインスクールに留学し、フランス人のソムリエ達と共に理論を学び、試飲を重ね 実際にシャトーを訪問して、現地のワイン作りを学びました。その後には、WSETのロンドン本校で上級資格も取り、現在北カリフォルニア校サンフランシスコでマスターレヴェルで切磋琢磨中です。

世界中に散らばるWSETの中でも、サンフランシスコ校はその「地の利」を最大限に生かした素晴らしい環境にあります。それは、すぐ北にナパ、ソノマというアメリカ最高のワイン地域が控えているだけではなく、東に行けばローダイを始めとする広大なブドウ生産地域, 南に下ればサンタクルーズ、モンテレー、パソロブレス、サンタバーバラと限りなくワイン地域が広がっています。また、講師の質が素晴らしく、ワイン研究では世界をリードするカリフォルニア大学デイヴィス校出身の地場のワインメーカー、マスターワインやマスターソムリエといった業界のトップが直接教鞭をとり、しかも講義の後は早速近場のワイナリーやブドウ畑を訪ね、学んだ知識を実際の目で確かめることが出来ます。車で一時間も行けば、これらの地域に着くので、私も毎週各地のワイナリーに通っては試飲をし、ブドウ畑を歩き、テロワールを学び、そこで働く人たちと話し合うことが出来ます。

同級生はワインの中心であるサンフランシスコに、世界中から集まってくるプロが多く、大手販売会社の管理職、名門ワイナリーのワインメーカー、そしてワインライターなど様々。このプログラムの面白さは、欧米ならではというか 私のような<若くしてリタイア組>が多く、元弁護士や金融マン、IT業界からの転職組がとても目立ちます。どうせ生きるなら自分の本当の夢を追求するさ!とばかりに、皆厳しい試験勉強と仕事を両立させ、生き生きとしていますよ。こういうネットワークはワインの仕事をしていく上でも、人生の宝として、財産になることでしょう。

私の夢はきちんとした知識と見識を身につけたワインのプロとして、あらゆる人にワインの楽しさ、奥の深さを伝えながら、ワインを触媒として人々の人生に触れていくこと。ですからこのサイトでは、私の知っている限りの知識と技を、皆さんにお伝えしようと思います。本音を言うと、もっと日本の若い人や、転職組の方々も、この資格を目指して、切磋琢磨して欲しいと思います。そして日本に何人ものMWが生まれ、世界観を身につけたワインの教育者や、業界のしがらみに左右されずに、バランスと見識を持って、ワインを格付けできる人材が多々輩出されんことを、切に願っています。