斎藤ゆき ワインセミナーのお知らせ

7月から8月にかけて、東京で種々のセミナーを行います。

7月29日と8月11日のセミナーは、ワイン業界で活躍するプロ、及び WSETの受講者やソムリエ資格を有する(或いは)勉強中のセミプロを対象に、2部に分けて講義を行います。(詳細は添付のフライヤーご参照)。この講座の申し込みと詳細は、松木リエ (メルアド:riematsuki@me.com)宛てに。 また、別途F Cellarsが開催するカリフォルニアワインの夕べも、7月26日(水)に予定。こちらは一般向けのワインテイスティングを含むレクチャーで、追ってF Cellarsよりご案内いたします。

斉藤ゆき講座フライヤー copy

本日の成果はイタリアワイン!

Domaine Drouhinドローインの仏米のワインは大人気!

今週も毎日色々な試飲会をはしごしています。昨日はカリフォルニアのカベルネ専門の試飲会、本日は米国大手の販売流通会社Wine Warehouse が主催した同業者向けの試飲会に行って来ました。

 

質の良い品数が多い業者なので、最初からターゲットを絞り、本日はとりあえず国産のワインをパスして、フランス、イタリア、スペイン、チリ、アルゼンチン、ニュージーランドとオーストラリアに絞り(込んだつもり)、葡萄の品種も事前に決めて試飲、そしてまた試飲。

 

本日の成果はいくつかありましたが、一番のお目当ては北イタリアのピエモンテで作るネッビオロ品種のワイン。通常であればバロロ、バルバレスコという一番の有名どころを試飲するのですが、今日のお目当ては、同じ州内のガティナラ(Gattinara)という 地域で作るネッビオロワイン。値段が上昇してしまったバロロ、バルバレスコに比べ、その何分の一というお得さで、質も同等と聞き、早速試飲。トラッチャ デル ピアンタヴィニャ (Torraccia  Del Piantavigna)というワイナリーのガティナラは絶品でした。また、バロロの名匠レナト ラッティ作のネビオロベースのワイン、ネッビオロ オチェッティ(ランゲ)も素晴らしい出来映え。

 

これからは、高いお金を払ってバロロやバルバレスコを収集するより、これほどの質なら ガッテナラやランゲを買お〜っと。

 

その他に興味を持ったワインは、ブルゴーニュの老舗ネゴシアンのジョゼフ ドローイン(Joseph Drouhin)がオレゴン州で作っているピノ ノワール。同じウィリアメット ヴァレーで出来る秀逸なワインと少しニュアンスが違い、よりフランス的な印象を持ちました。勿論、本家本元ブルゴーニュのドローインワイン(シャブリ、ジブレ シャンベルタン、プリニィー モンラッシェなどなど!)もしっかり味わいましたけれど。

 

ニュージーランドの名声高きピノノワールといえば、セントラル オタゴと言われますが、ソービニョンブランの名勝地、マールボローでトーフ(TOHU)というワイナリーが作ったピノノワールも、なかなかのもの。今後ワッチする必要がありそう。(しかも来週はニュージーランドのピノノワール専門の試飲会があります!)

 

昨年ロンドンの国際ワイン品評会で、オーストラリアワインの担当審査員をして以来、質の高いオーストラリアワインが気になっていますが、本日は冷厳なイーデン ヴァレーEden Valley(シラーズで有名なバロッサ ヴァレーBarossa Valley側)のリースリングに再会。アローマを嗅いでいると、ドイツワインのなかでもとりわけミネラル香が高いモーゼルリースリングを彷彿させます。味わいはモーゼルよりも辛口ですが。

 

明日はポルトガル、イタリアの2国がスポンサーする試飲会に続いて、夜は毎週の定例試飲会。そろそろ店じまいとしましょう。

 

ソノマ・ヴァレー特別イヴェントがチョー面白かった!

 

私の好きなソノマコーストAVAからの出店者

このところ業界の試飲会が連日続いて、内蔵系がちょっと疲れ気味。

 

とはいえ、本日は絶対に外せないイヴェント有り。ソノマヴァレーから100近くのワイナリーが勢揃いするだけではなく、マスターソムリエ(MS)とマスターオブワイン(MW)が揃ってソノマ各地のテロワールをレクチャーしてくれ、更には目隠し試飲をしながら、出席者がそのワインの出身地を当てる!という楽しくも有意義な催し。

 

まず会場に入り、100近く有るワイナリーのブースから、事前に目星をつけておいた先のワインを片っ端から試飲。会場には知り合いも多く、時間の制限があるので、挨拶は後回しにして、試飲ノートに没頭。

 試飲の途中で上記のレクチャーの時間になり、後ろ髪を惹かれながらも特別室へ。とても倍率の高い入場権を確保していたので、遅れる訳には行きません。ふと見ると試飲仲間のソムリエとばったり。「ちょうど良い!彼女と目隠し試飲の競争が出来る」とばかりに同席。

 

 彼女が目指すMSと私が目指すMWが壇上でユーモアを交えながらも、かなり専門的な内容をスライドを使いながらソノマヴァレーの地形、地質、そして場所によって変化する気候などをプレゼン。それを受けて、出席者には10種類の目隠しワインが用意され、さていよいよブラインド試飲開始。

 

 最初の2つ(ペアー)は香りを嗅いで、すぐに「シャルドネ!」と確定。さてソノマのどこのAVAかを探すべく、匂いと味わいに集中。う〜む。一番はカーネロに近いけれども、2番のワインは別もの。ロシアンヴァレー?何?「ペアーはいずれも同じ地域でつくったもの」ですって?ありえな〜い!(答えはカーネロでした)

 

 次のペアはソービニョンブラン。但し、これも全く別物。最初のワインは、腋臭に近いファンキーな香りで、えっ?フランスと思いきや、味わいは典型的なカリフォルニア。対して2番目はハラパニョーペッパー(メキシコ唐辛子)の匂いがぶんぶん。しかも青臭さと南国フルーツが同居なんて、まるでニュージーランドとサンセール(ロワール)の中間の味。ありえな〜い!

 

 これはちょっと引っかけ問題で誰も当てられず。答えはカベルネなどの赤ワインが主流のドライクリークで作ったものでした。MWとこのワインを作ったワインメーカーが、壇上でワインの説明をしながら「笑うかもしれませんが、これは自分に取ってはハラパニョーペッパーです」と聞いて、大当たり〜。ピンポーン!ピンポーン!

 

 次の4本はピノノワールってすぐに分かる。最初の2本は高い酸味、ミネラル、そしてエレガントさから察して、ソノマコースト。その内の一本はフラワーズヴィンヤーズだそうと想像がつく(ピンポーン!)。しかしながら、NY時代からひいきにしてきたフラワーズヴィンヤーズに加え、もう一本(Keller Estate)のピノの更に芳醇なこと!プレゼンを終えて、着席したワインメーカーに近寄り、さっと名刺交換をして、訪問のアポを、早々に取り付けてしまいました。(金融時代に鍛えた「早業」が功を奏します)

 

 次の2本のピノはずっとフルーティーで、まろやか。前のペアよりも、暖かい地域で作ったワインです。しかもかなりスパイシーなので、土壌は火山灰だろうと推察。多分ロシアンリヴァーあたり。(これもピンポーン!)

 

 さて最後の2本は時間切れでした。答えはロックパイルというAVAのジンファンデル(ジン)。これも同じ出身地とは思えない全く別のスタイルのワイン。ひとつは少し青臭さが残るドライなスタイルのジンで、後者は残糖とフルーツがどっしりとした典型的なジン。

 出席者はいずれも、同じ地域でつくる同じぶどう種のワインが、作り手によってこんなにも別物になる!ということに、少なからずショックを受けました。でもとても楽しい、有意義なイヴェントでした〜。

ソノマヴァレーのワイナリーが勢揃い

 

 

 

サンフランシスコでは、ワイン業界試飲会が花盛り!

 


サンフランシスコにいると、世界中のワイナリーが毎年頻繁に試飲会を開いてくれるばかりではなく、地元カリフォルニアのワイナリーも、毎週どこかで業界向けの試飲会やセミナーを提供してくれます。

ここがニューヨークとの違いで、ワインカントリーのお膝元の特典といえるでしょう。

 

地元とはいえ、日本よりも広いカリフォルニアのこと。こちらから訪問しようとすると、一番近いナパ、ソノマでも片道最低一時間、場所に依っては2時間近くかかり、更に南のモントレー(2時間から2時間半)、パソロブレス(3〜4時間)、サンタバーバラに至っては優に5時間以上かかります。当然一日何件かを訪問するので、泊まり込みということも、多々あります。

 

 その点、各地域のワイナリー協会が開催してくれる試飲会は、数十件のワイナリーが揃って参加するので、出席者としては大変効率が良く、またオーナーやワインメーカーが直々にワインをついでくれるので、アポなしで色々な質問が出来ます。(ラッキー!!)

 

 ただ問題はその頻度。例えばこんな週があります。

 

 

 

月曜日            ソムリエ協会主催チリワインのレクチャーと試飲会

 

火曜日            朝の10時半からポルトガルワイン協会試飲会(ポルトガルの主だったワイナリーが一堂に会する大規模な物)、午後ナパのハウエルマウンテンAVA試飲会

 

水曜日            朝10時半からスペイン、リオハワイン試飲会(同じくリオハからまとめてワイナリーが来米して行うもの)、午後モントレーAVA試飲会、夜某地元ワイナリー主催ワインとデナーのペアリング

 

木曜日            朝10時半よりピノノワール専門試飲会、午後よりボルドーシャトー2010年ヴィンテージ発表会(ボルドーの主立ったグランクリュのオーナーが直々新しいヴィンテージを注いでくれるありがたい会、自分でわざわざボルドーまで通う身としては、ただでこんな思いができるのがチョーありがたい!)

 

金曜日            朝10時半よりイタリアキャンティ協会主催試飲会及びレクチャー、同日同じ時間に別の会場でシャトーヌフ試飲会及びフードペアリング、午後ニュージーランド試飲会、夜シャンパーニュ試飲会、などなど。

 

 

 

最初の頃は、律儀に全て出席していましたが、時間と体がもたず、いまでは一日2つに押さえています。なにしろ一つの試飲会で費やす時間は2時間から4時間半。その間、立ちっぱなしでメモ用紙とカメラ(iPhone)そしてワイングラスを持ち替えつつ、50〜80種類程のワインを試飲(勿論飲まずに吐き出します)しながら、メモをとったり、商談をしたり。結構体力が居る仕事ですが、2つ以上出席するとリサーチや書き物をする時間がなくなってしまいます。

 

 夜開催される食事とのペアリングイヴェントで、すわれる設定になっている場合だけ、ワインをごっくんします。そして帰宅後は、その日のイヴェントでの収穫をまとめ、記録したり記事として書き上げたり。

 

 鉄の胃腸と肝臓を親に感謝しながら、さて今週はいくつの試飲会に出た物やら。

 

 

マウント ヴィーダー (Mount Veeder) AVAの試飲会に行って来ました

ナパヴァレーには、5つのマウンテンAVA (*1)がありますが、このマウントヴィーダー (MV) のワインは、フレッシュな酸味があり、アルコール分も比較的低めで、 エレガントさが魅力 。 他のマウンテンAVA(高いタニンと凝縮したフルーツに代表される男性的なカベルネなど)のスタイルとは、一線を画します。

 理由は、テロワール。ナパヴァレーは、南のサンパブロ湾 から這い上がってくる冷たい空気の影響で、南端の地域(ロス カーネロスAVA)が一番涼しく、北上するほどに気温が上がりますが、MVはそのカーネロスの、すぐ北に隣接する 、ナパでは二番目に涼しい地域。標高730メートル程の山で、 傾斜もきつく(30度に到る場所も)木が生い茂って陰を作っていることも有り、例えば(3月にご紹介した)ラザフォードなどの谷床AVAと比べて、平均気温は5度から10度程低いといわれています。

 また火山性土壌が主流を占めるナパの中で 、この地域は古代の海底にあった土壌といわれ、また表土が浅く養分が低いため、 葡萄の木が土中に深く根を張ることから、ミネラル分を含んだ硬質な葡萄が育ちます。

 カベルネやシャルドネだけではなく、大変質の高いシラーや、ナパでは珍しいピノノワールを作っているワイナリーもありますが、 全体の生産量が少ないことと(山全体の15%、千エーカー程度が葡萄畑)、小規模なブティックワイナリーが手作業でワインを作っている為、ワイナリーでの直売や地元での販売で完売してしまうため、飲む機会が少ないワインでは有ります。

 今回の試飲会では全38件のワイナリーのうち、28件が参加。それぞれのワイナリーのスタイルと、テロワール(土壌など)の違いをじっくりと自分の舌で確認することが出来ました。

 中には、MVの特色(テロワール)を無視して、ナパのいわゆる主流(つまりRutherford/Oakvill やSpring Mountain/Howell Mountain)のまねごとをしていると思われるワイナリーも数件ありましたが、まったく魅力がありません。

 今回試飲した中でも、感心したのはスカイ ヴィンヤーズ(Sky Vineyards)のシラー、ジンファンデルにロゼ、またランピリデ ヴィンヤーズ(Lampyridae Vinyards)のシラー、そしてフォンテネラ ファミリー ヴィンヤーズ(Fontanella Family Vineyards)のシャルドとカベルネなどの3件。

 そして3件とも最も標高の高い地域にあるお隣りさんどうし。正にテロワールを分け合っているようです。こうなるとどうしても訪問して、畑を確認しなければなりません。ということで、早速訪問の打診をし、快諾してもらいました。いずれ訪問記という形でご紹介出来ることでしょう。

*1:

AVA=アメリカ葡萄栽培地区 = については、3月13日付け記事『ナパヴァレーの老舗、谷床AVA』及び2月18日付け「『スプリングマウンテン』をご参照下さい

サンタクルーズ・マウンテンズ栽培のピノ・ノワール

サンタクルーズ・マウンテンズという美しい大自然に恵まれたワイン地域をご存知ですか? サンフランから車で南へ1時間強、シリコンバレー南西に広がる広大な山岳地帯です。

 葡萄地域は、 秀麗なピノ・ノワールやシャルドネを栽培する太平洋岸の涼しい山脈地帯と、 カベルネ・ソービニョンに適した内陸部の2地域に大別されますが、今回はこの山脈地帯に焦点をあてたイヴェントです。

 この大イヴェントは、3月22日〜24日の3日間に渡り開かれましたが、第一日目のワインメーカー達による講義、質疑応答から始まり、ワイナリー別の晩餐ペアリング会、そして最終日のピノ・ノワール集中試飲会と続きます。

 今回のテーマは「テロワールとミネラリティー」。山岳地帯の6つの区域の地質や気候といったテロワールと、各地のワインの味わいの違いを、レクチャーと試飲で探ろうというもの。

 パネリストはそうそうたるメンバーで、近年大変な評判を得ているアーノ・ロバーツ・ワイナリーのダンカン・マイヤーズ氏、カレラ・ワイン・カンパニーのジョッシ・ジェンセン氏(同氏は当日急病のため、ワインメーカーが代打)などが、自分の畑で作るワインとテクニカル・シートを片手に、議題を語ります。司会は私の先生でもあったマスター・ソムリエのデイビッド・グランシー氏という豪華版。

 こういう会が開かれるのは、近代と科学の力で、お蔵でのワイン作りに専念して来たカリフォルニアのワインメーカー達が、近年は丁寧な葡萄栽培に腐心し、自社畑のテロワールを自分のワインに反映、表現することに熱心な証拠でしょう。

 実際、五社のピノを並べて試飲をしていると、各社の畑管理とワイン作りの違いが分かります。中でも、カレラの2009マウント・ハーレン・セレック・ヴィンヤードのピノは、そのはかなげなエレガントさと、奥深くから湧き出てくるようなミネラル分と赤いベリーのダンスが長く尾を引く絶品でした。

 以下、当日ペネルが試飲したワインの一覧です。どれも、甲乙付けがたいサンタクルーズ・マウンテンズ独特のエレガントさです。

 

Calera Wine Company

2009 Mt. Harlan Selleck Vineyard Pinot Noir (上記のワイン)

2009 Mt. Harlan Ryan Vineyard Pinot Noir  (ライアンヴィンヤードは上記に比べると、クランベリー基調のスパイシーなワイン)

2010 Mt. Harlan Chardonnay (白ワインの方が、よりミネラル分の味わいが分かり易いということで、ピノと同時に試飲)

 

Arnot-Roberts Winery

2012 Legan Vineyards Barrel Sample (まだ瓶詰め前の樽サンプルでありながら、ストロベリー基調のブライトな赤いフルーツのバランスが美しく、数年後が楽しみなワインです)

 

Big Basin Winery

2010 Woodruff Family Vineyard Pinot Noir

他のメーカーに比べ、ヴァニラの仄かな香りがあり、酸味の高い印象。

 

Thomas Fogarty Winery and Vineyards

サンタクルーズ マウンテンの頂上からシリコンバレー方向を見る

2010 Windy Hill Vineyard, Estate Pinot Noir SCM  (サンタクルーズ・マウンテンズ老舗のピノ。旨味とミネラル分が基調)

 

Windy Oaks Estate Vinyards and Winery

2010 Henry’s Block  (サワーチェリー基調でフレッシュな酸味が食欲をそそる秀逸なピノ)

ボルドーシャトー 過去30年のワインを試飲する会(後編)

シャトー  コス デストウネル(Chateau Cos d’Estournel) のワインに、余り馴染みの無い方のために、ざっとおさらいしましょう。このシャトーがあるサン テステフ (St-Estephe)という村は、ボルドーを代表する第一級シャトー、第二級シャトーが林立するポイヤックのすぐ北境にあり、シャトー  コスのまどなりは、ラフィットといえば、どれだけ素晴らしい地味、テロワールに恵まれているか、ご想像がつくと思います。

とはいえ、重厚で肉厚のカベルネ主体のポイヤックの赤ワインに比べ、コスはメルローのブレンド比率が高く(ヴィンテージに依りますが、40%前後)、それ故オーメドックのワインとしては、柔らかさとまろやかさを感じさせます。

さて、今回試飲したのは、1981, 1982, 1983, 1985, 1986, 1988, 1989, 1990, 1995, 1996, 2002, 2003, 2004, 2005, 2008という27年に渡る、15種類のヴィンテージ。

これを、出席者各自がブラインドで採点し、発表します。オーナーのプラット氏が持参して下さったこれらのワインは、通の方ならお気づきでしょうが、悪いヴィンテージが含まれていません。素晴らしい心配りです!

ちなみに、良く読者の方から「有名シャトーのワインは古ければ古いほど、美味しいのでしょうね!」と聞かれますが、そんなことは有りません。まず、長期熟成に適したヴィンテージ、及び飛び抜けた作り手という大前提がありますし、古酒独特の味わいがお好みでない方もいらっしゃいますから。

今回の試飲で 、私が最高得点を上げたのは、なんと一番最近のヴィンテージ、2008年のものであったこと、そして古酒の中で一番優良と感じたワインは1982年 でしたが、それ以外の80年物のヴィンテージには、あまり感動せず、高得点は1989年以降90年代に集中していたことでした。

82年のヴィンテージは、30年経った今でも、まだ果実の味わいが残り、十分な酸味もあることから、 まだ数年は向上する余地があるかもしれないとは思いましたが、今が飲み頃かな?とも感じました。

その他の80年代の出品されたワインは、フルーツやタニンが抜け落ちていて「既に老けてしまっている」という感想を持ちました。しかしながら89年以降のものは、しっかりとしたタニンとボヂィー、そして果実が生き生きとしていて、まだまだ良い年の取り方をするであろうと、期待できました。

採点を終え、出席者の前で、ブラッツ氏に向けて感想を述べた後、「何故、2008年のヴィンテージはこんなにも、過去のワインと味わいが違うのでしょう?まるで、違う作り手に依るワインの様です」と、質問をしたところ、同氏曰く。「実は、その年はメルローの収穫が思わしくなく、当シャトーとしては例外的に、カベルネ主体のワインとなったのです」との説明でした。

さて、最近この素敵なイヴェントのお礼状を、フランスに帰国されたブラッツ氏に送り、秋には又、フランスの収穫風景を取材に行きますと付け加えたところ、是非シャトーに足をお運び下さいという優しいお返事を頂きました。実現した際には、また続編をお届けできることでしょう。

ボルドーシャトー 過去30年のワインを試飲する会 前編

前回はブルゴーニュの老舗、ロマネコンティ社主催の夕食会に出席したお話を中継(?)しましたが、今回はボルドーはメドックのスーパーセカンドと言われるシャトー コス デストウネルのVertical Tasting バーティカル テイスティング(直訳すると『縦の試飲』、つまり同じ生産者の代々のワインを年代順に追って試飲するというとても贅沢で希有な試飲会です)に出席して来ました。

フランスワインのファンであれば、この難しい名前のシャトー(略してこの記事の中では、勝手に『コス』と呼びましょう)はご存知のはず。コスの意味は、フランスの古語で「砂の丘」のこと。文字通り、この一風変わったオリエンタル宮殿風のシャトーは、サンエステフ村に入ってすぐに、小高い丘に建っています。しかもお隣はあのシャトー ラフィット。

ここで、「ちょっと待って!ついて行けないっ!」っていう声が聞こえて来そう。なので、ボルドーのシャトーのおさらいをしましょう。ボルドーには、5大シャトーといわれる超高級シャトーがあります。マルゴー、ラフィット・ロートシルト、ムートン・ロートシルト、ラトゥール(以上はコスと同じくメドック地方在)に、少し南に有るオーブリヨン。これらのシャトーに共通するのは、グランクリュー『第一級』という格付け。ちなみにメドックのシャトーの最高位の格付けは、グランクリュー第一級からグランクリュー第五級とされています。が、ここで知っておいて頂きたいのは、そもそもこの格付けがされたのは、大昔の1855年であること。また、当時の格付けの手法は、決して科学的でも緻密であったとも言いがたく、しかも現在に居たるまで、その制度については、全く見直しがなされていないということ。

当然のことながら、一級でも質が落ちる時期がありますし、ましてやワインの製造技術が発達した現代では、二級以下のシャトーの質がぐんぐんとあがり、5大シャトーに比肩する実力を持つシャトーも出て来ています。が、格付けはそのままなんですね。

とはいえ、金儲け主体のワインの投資家ならともかく、本当のワインラバーであれば、格付けに拘らず、本当の質を追求するはず。そして、そのひとつの結果として、所謂「スーパーセカンド」といわれる「第一級シャトーと同じレヴェルの第二級シャトー」がもてはやされております。勿論、3級以下でも、そういうシャトーは有る訳で、だからワインは面白いし、逆に自分の価値判断力を持たないと、格付けに振り回されて、大変な出費をする羽目になる訳ですが…..

話が長くなりましたが、このコスはそんなスーパーセカンドなのです。

今回の試飲会は、オールドマネー(旧家)とニューマネー(ハイテク)が存在する、ここサンフランシスコのワインクラブが主催したもので、わざわざフランスからシャトー コスのオーナー、ムッシュ ジャン ギヨーム プラッツ氏を招聘しての開催。出されたワインは、1981年から最新ヴィンテージの間の15種類を、出席者が評価、投票するというものでした。

ちなみに、右上の写真はわたくしのテーブルのセットアップですが、これだけのワインの数は、見るからに壮観でしょう?そして下の写真がプラッツ氏を中央に、右がこのワインクラブの主催者の一人、ウオーターマン女史です。次回は、試飲したワインについての、ご報告をします。